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【姫文余話】第32話『インク』

「きまじめ姫と文房具王子」の第32話『インク』(4巻収録)についての余談です。
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文具界では少し前からインクが空前の人気が続いてますね。
今は少し落ち着いたのかな…?わからないけどちょっと前くらいは、イベント毎に…いや、毎日どこかから新作や限定色が登場してるような気がしました!(大げさ?)
インクは自分が文具を好きになったころに流行りはじめたものだったのでいつかはテーマにして描きたいなと思っていました。

今では文具店によってもオリジナルのインクが出てたりしますが、その火付け役はナガサワ文具センターさんのオリジナルインクの“神戸インク”だと思います。今も文具店のオリジナルインクの色数で言ったらぶっちぎりの最多なんじゃないでしょうか…!国内インクの流行の走りは“色彩雫”かなって思っているのですが、“神戸インク”は、“色彩雫”よりも少し早く発売されてるらしいですねすごい!

私もいくつかナガサワさんの“神戸インク”を持ってます。
インク交換などでおすそ分けしていただいた分を除けば、

『鈴蘭グリーン』
『須磨海浜ブルー』
『渚ミュージアムグレー』
『須磨浦シーサイドブルー』
『西舞子パールブルー』
『生田川サクラ』
『茶屋町グリーン』

あれ…以外と少なかった(笑) もっとちゃんと探せばあるような…
限定色等色々欲しい色はあるんですが、本当に追いつかないです。
使いやすさから寒色系がおおいですが『渚ミュージアムグレー』が中でも使用しやすくてお気に入りです。『茶屋町グリーン』は確か茶屋町店の限定だったかしら…ナガサワさんは神戸のお店なのですが、私は京都から近い茶屋町に行くことが多いです。

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そんなこんなで色々広がりを続けてるインク界で、ひときわ自分の気持ちが惹かれた商品がありました。それがTAG STATIONERYさんの“文染”シリーズです。(写真はTAG寺町三条店さんで撮影させてもらったディスプレイです)

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京都に住んでるのでTAGさんから出るインクには、いつも惹かれてしまうのですが、『文染』は着物の染色文化が古くから残る京都だからこそ作れる、作る意味のある特別なインクだと思い感銘を受けました。

『藍』『梔子』『葉緑』『地衣』の4色が発売されてますが、『地衣』だけ何が原料なのかあまりよくわからなくて、調べたりお話を聞いて面白いと思ったのが漫画にも描こうと思ったきっかけです。
地衣類って不思議ですよね。

昔の人は地衣類から色々な色をとっていたそうです。
理科の実験で使うリトマス試験紙の色素は、リトマスゴケという地衣類から得たもので作られてたそうです。
リトマスゴケは日本にはありませんが、ウメノキゴケという比較的よく見かける地衣類でもつくれるそうで、私もウメノキゴケからリトマス試験紙を作ろうと色々薬品をそろえてるのですが、時間が作れずまだ作っていません。
作ったらまたnoteに記事にしようかなと思います。

“文染”をTAGさんと共同開発されてた草木染研究所様にも取材をさせていただきました。
草木染研究所の高橋さんは、長距離バスの休憩時間など隙あらば山に入って地衣類を見に行ってしまうほどのマニア…いえ、研究者様でして、研究室は地衣類をはじめとする色材のサンプルや薬品がずらりと並ぶすごい空間でした。ほんとにすごかったです。蜂谷が理系ならこんな感じなのかもと思ってしまいました。
高橋さんはかたつむりやトンボの研究もされていて、そっちの話もめちゃくちゃ面白かったです…

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サンプルの数々…

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左はマツゲゴケ、右がウメノキゴケ。二つはよく間違われる。

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ウメノキゴケの標本…びっしり(*_*)

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私も、実際に地衣類を見に行きました。
漫画の中では糺の森でかの子と蜂谷が地衣類を見ていますが、私は京都ではなくて、奈良に見に行きました。一年前くらいのことですね。

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何度も訪れてる奈良で、同じ道も何度も通ってるはずなのですが、気にしなければ地衣類が生えていることなんて気にしないですよね…

このウメノキゴケを見て写真に収めたあと、“ほうせき箱”というかき氷屋さんで『リトマス試験紙氷』っていうかき氷を食べました(笑)

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レモンをかけると色が変わります✨美味しかったです。

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きまじめ姫はちょこちょこスイーツが出てくるので、このほうせき箱のリトマス試験紙氷はぜひこの地衣のインクのときに出したかったのですが、2人が奈良に行くという用事を作り出せず、ストーリーに上手く入れ込むことができませんでした。

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でも、あんな植物からよく色が取れるってわかったよなあ…って見た目をしてますよね地衣類って(笑) 合成染料がない時代は、色に対する欲望も今よりも大きかったのでしょうね。
ラピスラズリや貝紫のように貴重な色にまつわる昔話などを聞いてもそのように思います。

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ちなみにこの話の前半に大槻が貝紫について少し触れてますが、このコマの星と格子の模様は『ドーマンセーマン(セーマンドーマンとも)』っていう魔除けのおまじないの記号です。海女さんが海に入るときに身に着けていたものに貝紫で印をつけていたそうです。

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ストーリーも大きく動いた回かなと思います。

色々盛り込みすぎて内容がいっぱいになったので、いつもよりページ数が多いです。いつも単行本のラストの話は2~4ページほど多いんです。
4集の最後の話がこれなのですが、なんと今回は6ページも多いです。

きまじめ姫と文房具王子32_013

このシーンの顔は、『なんだかこわい💦』と言われて2~3回描きなおしました(笑)
大事なシーンで客観的に読んでくれる担当さんの存在はありがたいです。人の表情とかは特に、ピタッと描くのは難しいです。

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マガジン【姫文余話】では、こういったかんじで「きまじめ姫と文房具王子」のこぼれ話的な話、取材や取り扱った文具についての話、制作時の話などなど、漫画の中には書きこめなかった話を綴っていこうと思っています。

時間のある時に過去の話もアップしていけたらと思うので、マガジンのフォロー等していただけたら嬉しいです。


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