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アパホテルに泊まりたい小学生が成人してアパホテルに泊まった話

小学生のころから、私はアパホテルに泊まりたいと思っていた。

記憶は定かでないが、関西地方ではこち亀が放映される日曜日の夜に流れていたと思う。

※当時関西住みだったので、場所は多分天王寺とかのCMだったと思う。

赤いノースリーブを着た謎のお姉さんがくねくね踊っている時点で小学生にとって刺激的だが、それ以上に私は「28階!」という階層の部分に惹かれていた。

「高い高~い」と幼少期に刷り込みをさせられるのだから、高いビルが好きになるのは当たり前である。CMを見るたびに、私はアパホテルに泊まりたいと思っていた。




そんな私が初めてアパホテルに泊まったのは、大学4年の冬である。

初めての宿泊場所は、東京で開かれる内定式に出席する地方出身者のために用意された、渋谷のアパホテルだった。





一人暮らしをしたことも自分の部屋もなかった私にとって大きなテレビが目の前にあるし、ベッドに横たわっていても手の届くところに何でもあるし、あの狭さが超快適であった。さいこう!!!





今まで東京に行ったことが2回ぐらいしかなかった私は、バイトで一緒だった東京にいる先輩を飲みに誘った。




先輩「どこがいいですか?ちなみにどこに泊まるんですか?」

私「渋谷です!」

先輩「池袋にいいお店があるって友達に聞いたんで、そこでいいですかね」

私「ありがとうございます!」


今考えるとちょっと違和感があるが、地方出身のため渋谷と池袋がどれぐらいあるかをあまり理解していなかった。今思えばそこから伏線が始まっていたのではないかと思う。渋谷で飲めばよかったのに。




池袋で飲んだ後、渋谷駅を降りて宿泊先のアパホテルは道玄坂を15分ぐらい歩いたところにあった。割と距離がある。

私は酔って気分が高揚していたので、途中の喫煙スペースでタバコを5本ぐらい吸った。内定式前日にもかかわらず、その時点で深夜1時である。





ようやくホテルについてエレベーターに乗った。アパホテルは部屋のカードをピッとしないと動かない。セキュリティーがしっかりしている。


エレベーターを降りて、私はどこの部屋だったかが分からなくなった。


決して酔いすぎていたわけではない、部屋番号がカードに書かれていないのである。セキュリティーがしっかりしている。





角部屋だったことは覚えていたので、出て左に進んだ。迷ったら左である。



私は扉にカードをピッとした。開かない。ドアノブに手をかけてガシャガシャっとしてみたが開かない。

さっきまでスマホの上にカードを重ねていたからだろうか、磁気が弱くなったのだと思った。





私はフロントに戻り、


「すみません、ちょっとスマホに重ねてて磁気が弱くなったので、カードを取り換えてもらえませんか?」


と受付のお兄さんに伝え、カードを取り換えてもらった。

再度エレベーターに乗り、扉にカードをピッとした。おかしい、カードを取り換えてもらったのに開かない。私は見えもしないのに、ドアの覗き窓を覗いた。








私「うーん・・・そうか、見えないか・・・。」

ちびまる子ちゃんのナレーションの人

「当たり前である。」






絶対に角部屋だったのに・・・もしかして隣の部屋か!

と思い、その隣を4部屋ぐらいスライドしてピッピッピッピとしてみた。開かない。







そこで私は思った。部屋を間違えている。









ちびまる子ちゃんのナレーションの人

「最初からそう考えるべきである。」









私はもう一度フロントに降り、

「すみません、部屋番号が分からなくなってしまったのですが、教えてもらえないでしょうか」

と伝えた。身分証明などを見せ、部屋番号を教えてもらった。エレベーターを降りて右の角部屋だった。












クラピカ「だから右だと言っただろう」

私「すみません・・・」









部屋に戻りシャワーを浴びて、明日も内定式なことだしそそくさと眠りについた。時刻は午前1時半。菅田将暉のオールナイトニッポン(オ~ルナイトニ~ッポ~ン)


内定式当日

遅刻することもなく、無事に内定式を迎えた。


同期は50人ほどおり、自己紹介をするターンがあった。

人事の人が「ストップ!」と言って会った人と3分ぐらい自己紹介をして、それを何回か回していくというものである。




私「出身はどこですか?」

同期「東京です~」

私「そうなんですね!私関西なんです~」




というやりとりを数人と交わしたのち、3人目ぐらいで会った人が関西出身だった。同期の中で関西の大学から出てきた人は私含め3人しかいなかったので、少々テンションが上がった。





私「出身はどこですか?」

同期「関西です」

私「えっ!関西出身なんですか!?私もです!ちなみに大学はどこですか?」

同期「○○大学です」

私「えっw一緒やんwキャンパスは?」

同期「わろたえっ大学一緒!?××です」

私「そっちか~~~」



大学は一緒だったが、キャンパス違いなので知人ではなかった。とはいえ近い人と出会えて少し安心した。



昼休憩になり、6人ぐらいで机をくっつけてお弁当を食べた。

ターンごとにチームが毎回分けられていたが、昼は地方出身チームで、先ほどの大学が一緒の関西人も一緒だった。





関西人の同期「アパホテルって怖ない?」







関西人の同期「昨日夜中1時半ぐらいにな、寝ようと思ったらドアノブガシャガシャガシャガシャってなったから、こんな夜中になんやねんおもて覗き窓覗いてみたら、帽子かぶってトートバッグ下げた女がウロウロしてんねん」






関西人の同期「でな、全部のドアをガシャガシャガシャガシャってして周ってんねん。エレベーターのセキュリティとかばりしっかりしてんのにそれをすり抜けて住んでる住人みたいなんがおるんかとおもてネットで検索したけど出てこんくて、明日内定式やし早よ寝よおもてちょうど布団入った瞬間またガシャガシャガシャガシャってなってん。」









関西人の同期「え、怖おもてもっかい窓覗いたら、そのタイミングでその女も覗いてきて「えっ」ってなって怖すぎて1時間半ぐらい寝られへんかってんけど、今日も泊まらなあかんからちょっと怖すぎてさっきからみんなに話してんねんけど」







私「ごめん、それ私w」






関西人の同期「は!?!?!?お前かよなんやねんwwwwwww(爆笑)」





関西人の同期「てか窓覗いても見られへんのになんで覗いたん、おかしいやろ、ほんで全部の扉ガシャガシャすんなやwww」




私「全部はやってない、ガシャガシャしたんはそこだけで、あとはピッてやっとった。」







関西人の同期「てかなんで内定式の前日の夜中1時半に外出てんねん、おかしいやろwwwガシャガシャしてきたんちょっと内定者ちゃうんかなって思ったけど、さすがに夜中1時半はおかしいやろおもて」





私「まあ今私と話さんかったら今日も怖いままやったな、よかったやん(冗談)」











これが私の初めてのアパホテル宿泊体験である。

小学生の頃の私は、初めての宿泊でこんな体験をするとは思わなかっただろう。ちなみに28階ではない。







あれから泊まる機会がなく、アパホテルには泊まっていない。

次に泊まるのはいつだろうか。

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