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ジブリ美術館で迷子になる

ジブリ美術館へ行った。

フィルム入場券はハウルが秘密の庭でソフィーの手を引くシーン。
フィルムを眺めながらホールへ続く階段を下りていると、ハウルに手招きされているかのように感じた。

あのとき乗り込んだネコバスを、いまは柵の外から眺める。
夢中で駆け上ったらせん階段を、ヒールで少し背伸びをして登る。
足のすねあたりにある小さなのぞき穴を、しゃがんでのぞき込む。
小さいものたちの世界はどれもきらきらしていた。

屋上にいる巨神兵に会いにいくと、どこかへいってしまったと思っていた空への憧れがくすぶりだした。そういえば友達の家でおまけで付いてきたプラスチックの飛行石をつけて、2段ベッドから飛び降りていたっけ。お前まだ諦めてなかったのかとすこしふふっとなった。

土星座ではその日「パン種とタマゴ姫」をやっていた。後ろで立ち見しようと思っていたのに席がたまたま空いたので、こどもたちに囲まれながら見ることになった。かなりパン種に気持ちを入れ込んでいたのに、最後マッチョになったところで笑ってしまった。

そんなことをして楽しんでいるうちに、館内を行ったり来たりしていることに気がついた。

出口が見つからない。

エレベーターで上に上がっては階段で下に下りるをくり返す。ホールの真ん中で困ったなぁと思い上を見上げると、天井に太陽と月の絵があるのをはじめて知った。なんだかものすごく遠くにあるように感じた。

こうなったら強行突破だと入口に続く階段を上がっていく。案の定止められたわけだが、お姉さんがやさしく一言。

「迷子になったんですね」

迷子だなんて何年ぶりに言われただろう。
まるで迷子を歓迎しているかのように、ステンドグラスのトトロが夕暮れ時でさらに輝きを増して眩しかった。


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