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ミラーレス一眼用のレンズにて、望遠端の開放F値が大きくなっているのは何故か?

※2021/08/20更新:EOS 5D Mark IVの測距点図を追加しました。

撮影を趣味にしている私にとってもかなり「謎」と言えるのが、

ミラーレス一眼用レンズの望遠端の開放F値が何故大きい数値なのか?

と言う事です。

ここでは仮説を立てて検証していきたいと思います。


望遠端の開放F値が大きくなったレンズ

当方はキヤノンユーザーなので、キヤノン製のレンズで取り上げていきたいと思います。
まずはこちらから。

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EF-M15-45mm F3.5-6.3 IS STM。
35mm換算で24-70mm相当のEF-Mマウント用標準ズームレンズで、EOS M系の標準ズームレンズキットやダブルズームキットに用いられることが多いですね。
鏡枠沈胴方式の採用で収納はコンパクトになりましたが、撮影時にレバーを動かして広角端側に回さないと使えないというデメリットがあります。

一眼レフ機に慣れている方だと「このレンズ何処かがおかしいな?」と思いませんか?



このレンズ、望遠端の開放F値が「6.3」になっています。


一眼レフ用の標準ズーム(F値が変わらないレンズを除く)ですと、望遠端の開放F値は「5.6」になるはずですが、何故か「6.3」になっていますよね。

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例えば、上記のレンズはEFマウントのAPS-C一眼レフ機用レンズ「EF-S18-55mm F4-5.6 IS STM」になりますが、こちらの望遠端側の開放F値は「5.6」です。
35mm換算で29~88mm相当のレンズになりますが、上で紹介しているEF-M15-45mmは望遠端側(70mm相当)であっても「6.3」なんですよね。

何故望遠端側が「6.3」になったのでしょうか?


続いてはこちら。

画像3

RF24-105mm F4-7.1 IS STM。
EOS RPやEOS R6のキットレンズとしても使用されており、軽量かつコンパクトなRFマウント用標準ズームレンズ。
軽量なEOS RPと組み合わせれば気軽に持ち運べる機材になりますね。

さて、このレンズも何処かおかしいところがありますねー



望遠端の開放F値が「7.1」になっています。

EFマウントフルサイズ一眼レフ機用の非Lレンズに「EF24-105mm F3.5-5.6 IS STM」があります。

こちらは望遠端の開放F値が「5.6」になっていますが、RFレンズになると望遠端の開放F値が「7.1」に変わってしまいました。
個人的には「5.6」のままでも良い気がします。でも何故「7.1」になったのか?

私はこの様な仮説を立てて見ました。


【仮説1】ミラーレス機は開放F8以降でもオートフォーカスが使えてしまうから

望遠端の開放F値が大きくなった要因、1つ目は「ミラーレス機は開放F8以降でもオートフォーカスが使えてしまうから」では無いかと思います。

現行のデジタル一眼レフ機は、「光学ファインダー」「ライブビュー」の2つを利用して撮影することが可能です。
AF(オートフォーカス)はファインダーとライブビューで異なります。

デジタル一眼レフの光学ファインダーには「AF測距点」が存在しており、位相差AFによりその測距点にてピントが合う仕組みです。
例としてキヤノン「EOS 5D Mark IV」を見てみましょう。

EOS 5D Mark IVの光学ファインダー時の測距点は「61点」ですが、うち捕捉能力の高いクロス測距は「41点(水色)」となっています。
中央部の5点(紫色)に関してはF2.8のレンズで、更に捕捉能力を高くしたデュアルクロス測距が可能です。図に表すとこのようになります。
(赤色は横線検出ラインセンサー)

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なお、全ての測距点においてF8まではAFに対応しているとのことですが、レンズの組み合わせによってクロスセンサーの部分が横線検出のラインセンサーに変わることや、一部測距点が使えなくなるなどの制限があります。
なお、エクステンダー(テレコンバーター)を使用すると、使用するレンズとエクステンダーの組み合わせによってMF(マニュアルフォーカス)のみになる事もあるそうです。

ライブビューでは「デュアルピクセル CMOS AF」を用いた像面位相差AFにて、センサーサイズの縦と横で各80%程度であればどこでも測距可能となっており、ファインダー撮影より測距可能な範囲が増えます。
ライブビューではF8以降のオートフォーカスの制限が無いため、どれだけ暗くてもピントは合ってしまうようですね。


一方、ミラーレス機ではどうでしょうか。
ミラーレス機は読んで字のごとく「ミラー」がありませんので、光学ファインダーは搭載していません。その代わりにライブビューの情報をそのままファインダーに映す「EVF(電子ビューファインダー)」を用います。

ここでは「EOS R5」を例に説明します。

EOS R5はファインダー・ライブビュー共に「デュアルピクセル CMOS AF II」により像面位相差でAFの測距を行います。
測距エリアは縦・横共に映像表示範囲の最大100%ですが、レンズによって範囲が変わります。光学ファインダーのようにMFのみの撮影になる事がなく、暗いレンズでエクステンダーを取り付けてもAFが使えるという点が一眼レフ機と比べて有利ですね。


【仮説2】電子ビューファインダーにより暗い場所でも見やすくなったから

もう1つの説としては「電子ビューファインダーにより暗い場所でも見やすくなったから」ではないでしょうか。

一眼レフ機は「光学ファインダー」を用いますので、映っているものは生の情報になります。そのため、暗い場所ですと見えなくなるなどの制限が生じてしまいます。
その一方、ミラーレス機は「電子ビューファインダー」を用いますので、写っているものはセンサーから読み込んだ映像になり、暗い場所でも問題なく映す事が可能になります。

暗い場所でも撮影可能なように、デジタル一眼レフやミラーレス一眼には暗所でのAF撮影が可能かどうかの指標として「低輝度合焦限界」が用いられます。

仮説1で紹介したEOS 5D Mark IVとEOS R5それぞれのファインダー撮影における低輝度合焦限界を見てみましょう。

・EOS 5D Mark IV・・・EV-3(F2.8以上のレンズでワンショット時)
・EOS R5・・・EV-6

これを見るとEOS R5が暗い場所でもAFが利くと言う事になりますね。
如何に光学ファインダーが暗所撮影に弱いと言う事がわかりました。


最後に

今回は「ミラーレス一眼用のレンズにて、望遠端の開放F値が大きくなっているのは何故か?」と言う事で取り上げて参りました。
仮説として2つ立てましたが、恐らくこの2つの仮説によって望遠端のF値が高くなったのではないかと思われます。これが正解なのかは私としても不明ですので、あとはご自身で調べてみてください。

最後にミラーレス機用だから出来たレンズを紹介いたします。

「RF600mm F11 IS STM」「RF800mm F11 IS STM」です。
これまで開放F値が2桁になったレンズは一眼レフ機用では殆ど存在せず、AF仕様はミラーレス機用になって初めて登場しました。
(過去にFDマウントで「FD5200mm F14 Mirror」が存在した。見た目は大砲そっくりである)

このレンズ、一眼レフ機用ではありませんが仮説1の内容に当てはめると、一眼レフ機ではAFが作動しません。(MFのみ使用可能)
開放F8以降でもオートフォーカスが可能になったミラーレス機だからこそ出来たレンズと言っても良いでしょう。
更にこのレンズ、F値を任意で決める「絞り」を搭載していません。そのため、絞りを変えようと思っても数値は変わらないのでご注意ください。


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