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"異なる形で復活” 京急の「1701編成」

2024/08/12更新:一部写真を差し替えました。

各鉄道会社でも、「過去に使っていた番号が復活」なんてことはよくあるものである。例えば京成電鉄であれば3700形で3800番台まで番号を使ってしまったため、お次に出てくるのは3900形?と思ったら「3000形」と車両の形は変わってしまったものの以前使っていた番号が復活した。

京成3000形(3027編成)

今となっては3100形や2025年冬に導入予定の3200形などもその例と言える。

こう言った例は京成電鉄だけでなく、乗り入れ先の京浜急行電鉄(京急電鉄)も同じ理由で形を変えて復活した車両がいる。

それが「1701編成」。

今回は京急における1701編成について取り上げていく。



「1701編成」とは?

現在、京急に在籍している「1701編成」は、新1000形の1車両となっているが、かつては1500形に属する1車両であった。

編成は浦賀・三崎口方から、この様な組み合わせとなっていた。

1701 - 1702 - 1919 - 1920 - 1703 - 1704 - 1705 - 1706

登場したのは1990年のことで、製造当初からVVVFインバーターを搭載する車両となり「1700番台」を名乗った。1990年はVVVFインバーターの車両が出始めでまだ普及していなかった頃であることと、1500形の界磁チョッパ制御車がまだ製造されていた頃に導入されていたので、デビューしたての時は誘導障害(※1)を避けてなのか他社路線にも乗り入れなかった。
1700番台は1500形の中でも製造当初から排障器(スカート)が取り付けられており、当時排障器が取り付けられていなかった界磁チョッパ車との区別は容易だった。

その後、1991年の北総線Ⅱ期線(新鎌ヶ谷~京成高砂間)開業に伴い、北総・京成・都営浅草・京急の4路線は相互乗り入れを開始。ここを境に1700番台も都営線・京成線(押上線のみ)・北総線への乗り入れを開始した。


1500形1701編成の活躍

快特運用に入る1701編成(新馬場にて)

その後1701編成は快特・特急をはじめとした運用に就き、かつて1000形(初代)が担っていた運用に就くこともあった。乗り入れ先では普通がメインで京成線内になると快速などの運用に入ることもあった。京急線にて遅れが発生した場合は「代走」として京成本線に入ることも。(※2)
2008年頃に更新工事が行われ、室内は変わったが外見は行先表示機以外ほとんど変化が無かったが、排障器に若干の変化が生じた程度だった。

そんな1500形1700番台も優等運用から乗り入れ運用までこなす万能な車両に成長したが、2012年の9月24日の未明に悲劇が起こってしまった・・・。


1701編成に訪れた悲劇

2012年9月24日、京急線内で特急 三浦海岸行きとして運転されていた1500形1701編成。当時は神奈川県内で1時間の降水量が100mmを超える大雨が降っていたが、追浜出発後に悲劇が起きてしまった・・・。

京急本線の追浜~京急田浦間にて発生した土砂崩れに1701編成が乗り上げてしまい脱線。先頭車両の1701号車は泥まみれとなったのと、2号車付近も車体が歪んでしまうという惨事となった。
当時の乗客は約700人で、運転士を含む10人がけがを負い、うち5人は重傷だったものの命に別状はなかった。

この事故により1701編成は事故調査後に総合車両製作所へ回送され、損傷の激しい浦賀方4両は修理などを行わずして解体されてしまった。残った4両も組成が出来ない関係なのか2013年までに廃車解体された。損傷の少なかった品川方先頭車両の1706号車は訓練用車両として金沢検車区で残されている。

都営線乗り入れ用車両としても利用される8両編成を1本失った京急。廃車となった1701編成の穴を埋めたのは、新1000形1161編成となった。

新1000形1161編成(生麦にて)


1701編成が形を変えて復活

1500形1700番台は1701編成亡き今、1707・1713・1719・1725・1731の5本になってしまったが、1701編成廃車以降から無線装置の更新や停車駅予報装置の取り付けにより京成本線や成田スカイアクセス線への運用に就く等、今までは代走でしかあり得なかった事が1500形でも実現するようになった。

1500形(1713編成)のアクセス特急運用

そして時は流れて2023年11月、総合車両製作所から新しい8両編成の車両がお目見えした。
その車両は「1701編成」

新1000形1701編成

何と大幅にモデルチェンジし、「新1000形」の車両として登場したのだ!
新1000形は2021年3月に1890番台(1891編成・1892編成)が登場し、この車両から総合車両製作所製の車体「sustina(サスティナ)」が用いられ、1890番台以降に導入された車両からはsustina+全塗装のものに変わった。
2023年7月に6両編成の1501編成が登場したが、その年の12月に8両編成が登場。この8両編成には既に1500形でも使われている1700番台を使う事となりそのトップナンバーが1701編成となった。悲惨な事故で失ってしまった「1701編成」が令和になって復活した。
1500形の時と異なる部分としては、車両番号がハイフンで付けられている点である。

1701-1 - 1701-2 - 1701-3 - 1701-4 - 1701-5 - 1701-6 - 1701-7 - 1701-8

浦賀方から1701-1で始まり、品川方の1701-8までの8両で組成されている。

車両番号がハイフン入りのため、前面にある車両番号下3桁にもハイフンが入れられている。

車番がハイフン入りになったのは1890番台に合わせての事だろうかと思うが、1700番台の場合、もしハイフンなしであれば浦賀・三崎口方から下記の様な組成となる。

1701 - 1702 - 1703 - 1704 - 1705 - 1706 - 1707 - 1708

この組成となってしまうと、1707と1708は1500形にあるため番号が重複してしまう。更に1706は訓練車両として残されているだけありこちらも同じく重複となる。そのようなこともあってハイフン入りにしたと考えれば十分納得出来るだろう。


側面表示機(通常)
側面表示機(中国語併記)
側面表示機(次停車駅表示)

側面の表示機も京成3100形同様、大型化され英語・中国語・韓国語の3言語表記や次の駅の案内まで表示され、1500形時代から大幅に進化を遂げた。
更には列車無線装置のデジタル化に合わせてSR(空間波)アンテナのみとなるなど、このご時世に合わせた変更がなされている。

列車無線のデジタル化についてはこちらの記事を参考にしてほしい。

新しくなった1701編成は、2024年4月3日まで自社線内の運用に限定されていたが、翌4日から都営線・京成線への乗り入れが開始、GW初日の4月26日には北総線・成田スカイアクセス線の運用(※3)にも入り、2か月後の6月には京成本線運用にも入るなど自社線内運用から拡大するようになった。


まとめ

今回は「1701編成」について取り上げていったが、そもそもは1500形のVVVF車として初めて登場した車両で試験的な要素が大きかった車両でした。しかし、2012年9月24日に発生した土砂乗り上げによる脱線事故により編成毎廃車となる運命に至り、損傷の少なかった1706編成のみ辛うじて生き残ることに。
その後2023年になって新1000形の8両編成として1701の番号が復活し、新しい1701編成が登場し現在に至ります。

モデルチェンジとなってしまったものの、痛ましい事故で失った「1701編成」が復活したことは、ある意味「不死鳥」なのかも知れません。

今回はここまで。最後までお読みいただきありがとうございました。


※1:VVVFインバータ(制御装置)から発生する高調波により、踏切や無線等鉄道の保安装置に影響を及ぼす障害のこと。

※2:京急の車両が京成本線へ乗り入れるためには「停車駅予報装置」が設置されている車両が条件となっており、乗り入れ当時は600形のみが京成本線への乗り入れを許可していた。ここで発生していた代走は、三崎口(または京急久里浜)発の列車が大幅に遅れた時に発生していたことが多く、高砂検車区一時入庫の車両(停車駅予報装置未設置)と車両を交換する形で京成本線へ乗り入れていた。
その後成田スカイアクセス線開業に伴い、導入当初から停車駅予報装置が設置されている新1000形1121編成以降の乗り入れが許可されたが、現在は2100形を除く8両編成全車両に「停車駅予報装置」が取り付けられており、この現象は発生しなくなった。

※3:北総線の運用としては5月11日の休日67H運用から。

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