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シンプルな仕組みは世界を変える。手続屋がWebサービスを提供するに至ったワケ。

開発の経緯


行政書士事務所開業

noborderの開発構想は、2020年の終わり頃に遡ります。
当時は特定技能の案件が少しずつ増え始めた頃でした。

2017年、大学卒業後すぐに行政書士として開業したものの、ビザ申請業務を受託することができない日々が続きました。月日は無情にも流れていき、2019年4月、特定技能制度が施行されました。

行政書士にとって、法改正は新しい仕事が生まれる瞬間と言っても過言ではありません。ただでさえ20代が1%程度しかおらず、かつ廃業率も高い業界で既存のパイを取ることに苦慮していた僕はこの制度を専門にしたいと思いました。

調べていくと、特定技能制度の高い将来性をひしひしと感じるようになりました。慢性的な人手不足に苦しむ各業界団体の一助ともなり得ることと、日本人と同等の雇用条件で働くことができることが、そう感じた大きな要因です。

施行から半年ほどは制度自体が認知されていないこともあり、依頼にはさほどつながりませんでした。それ以降徐々に案件を頂くようになり、行政書士として生活していける水準まで売上を持っていける見通しが立ち始めました。

業務に慣れ、感じた違和感


書類業務にも慣れてくると、業務フローの改善を考えることは至極当然のことだろうと思います。有限の時間の中で稼働できる人間が僕1人だった当時、1分1秒でも仕事に直結することに集中したいと思っていました。

1番嫌いな作業だったのが、何度も同じ内容を別の書類に入力していく業務でした。コピペすればいいんですが、当時は書類の枚数が今よりもやや多く、入力後のチェックにも膨大な時間を使っていました。

申請業務で申請人の名前の入力漏れや、記載ミスは致命的です。在留期限がタイトな申請であればそもそも受理してもらえずオーバーステイになる危険性すら孕んでいます。

それに同一内容の複数入力は、軽微な変更であっても手間は×入力箇所+チェック時間となりそれはそれば地味な作業を毎夜続けていました。

当時のお陰でハードワークが身についたのは良い点だと言えます。ただ、案件数が増えている中でこういった業務はミスを生む温床でもあると、常に強い危機感がありました。

これをどうにか改善したい。
その方法を模索したときに思いついたのが、システム化のきっかけです。

開発着手から掴んだ内製化までの道筋

早速開発に着手しました。調べたところエンジニアを雇用するか、システム会社に外注することでシステムを作れることが分かりました。

人を雇える金銭的余裕が無かったので前者は諦め、後者で開発を進めました。お世話になっていた経営者の大先輩からご紹介いただいたシステム会社で開発を進めていただけることになり、初回打ち合わせでどんなシステムにしたいか。を考えるという宿題を与えられました。

キャンパスノートを買い、システムに求めるものを書き始めました。まとめると最低この3つは欲しいという結論に至りました。

・同一内容の複数入力の処理
・必要書類のリストアップ
・申請情報の入力フォーム

そんな時にふと「これ、システムがあれば誰でも申請書類が作れるようになるんじゃないか?」そう思うようになりました。

具体的な構想を具現化していく過程において、システム化は専門的なことが誰でもできるようになる(かもしれない)ことだと思い至ったのです。

行政書士として内製化を進める矛盾

当初は自分の業務を楽にするためのシステム開発が目的だったにもかかわらず、みんなができる仕組みを作ることができることに気づいた僕はある矛盾に気づきました。

それは専門家として書類作成をすることで、お金をいただいている現状と相反することをしようとしているのでは?ということです。

もっと簡単にいって仕舞えば、みんな出来るようになると僕の今の仕事は減っていき、売り上げが減っていくと思いました。

Exstanのビジョン×申請業務

そもそも僕が行政書士を志したきっかけは、高校時代の留学経験にあります。もう12年前になりますが、高校2年生のときに北欧・ノルウェーに留学をしました。

英語も学校と塾で習っただけ、ノルウェー語なんて空港で初めて聞いたくらいのレベルで海を渡りました。

まず苦労したのが、渡航後のビザ手続きでした。
日本人がほとんど0に近いコミュニティだったため、どこに行って、なんという手続きをしたら良いのか全く分からず、それを正しく聞くこともできず本当に苦労しました。

なんとか手続きを終えたとき、「もうこんな面倒くさいことやりたくない」と思ったと同時に、日本で同じように困っている外国人がいるだろうとも考えました。その時から将来は外国人が日本に来やすい、働きやすくなる手助けができる仕事をしようと決意しました。

そしてExstan株式会社のビジョンは「不合理な障壁なき社会の実現」です。

生まれた環境や性別、信条、文化的な差別といった合理的ではない壁をなくし、当たり前のようにやりたいことをやれる社会を創りたいという思いから生まれたビジョンです。

そして申請業務。
労務管理で象徴されるような、正しい書類を正しい形で提出することを求められる「届出」業務とは異なり、「申請」業務は、許可を取ることがゴールになります。そのためビザ業務において100%のシステム化はそもそも不可能という位置付けで開発を進めています。

何が言いたいかというと、必ず行政書士とシステムは共存環境になり得るということです。

正しい書類を用意したとしても、外国人にオーバーワークがあったり、税金の未納があったり、オーバーステイの過去がある場合には、追加の対応が必要となります。

実務上、各入管ごとに依頼される対応内容が異なることもあります。これらを考慮して何を用意すべきか、許可を得るためにどんなことができるか、などは専門家でないと正しいアドバイスをすることは難しいでしょう。

もちろん入管に問合せることもできます。
しかし都心の入管では、そもそも電話が繋がるまで2時間以上かかることもありますし、担当者によっては専門用語を用いて説明するため何を言われているか理解することも簡単ではありません。

長時間電話が繋がるまで待って、いざ話し終わった後に、疑問点がまた出てくる。という経験を僕自身もしました。

ビジョンと申請業務という性質を考慮し、全体業務の80%を誰でもできるよう仕組み化し、残りの20%のイレギュラー対応を専門家と進める。というイメージの下、noborderの本開発は進みました。

勿論これまでビザ申請の依頼を受けてきた業務報酬は、システム化することで下がります。それはもう驚くほど、僕達事務所の売上に影響を与えています。短期的に見ると、自分たちで売上を減らすというとても馬鹿なことをしているようにもみえます。

しかし、システム経由でのビザ手続きのサポート依頼が増加している事実もあります。まずは僕たちが行政サービスDX化と行政書士業務が成立するということを身をもって証明したいと思っています。

noborderリリース・今後

2021年9月13日、noborderはリリースしました。
もともと実務に携わっていた強みを存分に活かせる「特定技能」の申請書類作成、在留期限管理ができるサービスとして誕生しました。

noborderは現在(2022年4月8日時点)40社以上の企業様にお使いいただいています。既に申請完了した案件数は40案件を超え、おかげさまで導入のお問い合わせも少しずつ増えてきております。

我々が目指す内製化とは、日本人従業員と同じように外国人従業員も管理できる体制を整え、それを外国人受入企業自らで運用完了できることと定義づけています。

noborder導入により、外国人雇用に必要なさまざまな手続きが社内で完結します。管理が最大限効率化できるため、書類作成などに割かれていた時間をより重要な業務に充てたり、外国人の本質的なサポートをしたりすることができます。

本当にやるべきことは綺麗な書類を時間をかけて作ることではなく、本当に支援が必要な外国人に、十分なサポートを提供できる体制を構築することだと考えます。

彼ら、彼女らが働きやすい国として、日本を好きになってくれて、日本としてもそんな外国人を受け入れることで、労働力不足を解決する一助になる。

そんなシンプルな仕組みがシンプルに回るために,noborderはチャレンジを続けます。

今後noborderは短期的な目標として、特定技能全般の業務サポートを支援できるシステムを目指します。

まず年内に下記機能を追加予定です。
・四半期報告機能「定期届出」、「随時届出」
・特定技能「派遣」
・特定技能2号

中期的な目標として、日本の就労資格全般を支援できるシステムを目指します。

長期的な目標として、日本から海外に行く際のビザ支援ができるシステムを目指します。

僕たちはビジョンの達成を最優先課題とし、いかなる不合理な壁も作ることなく事業活動を遂行してまいります。

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