静かに死ぬことも許してくれない、この腐った世界へ。
人が死んだ。
静かに、だれの手も煩わせず。
たった1人で、その人は向こうの世界へ逝った。
だいすきなお父さんに逢うために。
淋しくて辛いと言っていた。
生きている意味がないと言っていた。
ゆっくりと、でも確実に、家族への暴言が増えていた。
認知症の周辺症状だった。
家族も疲れ切っている。
怒りたくはないのに、怒鳴り返すしかない毎日を悔いていた。
わたしはこの終結を、悪にしてはならないと思う。
生きることは、そんなに綺麗なことばかりじゃない。
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だれのための、事情聴取か。
だれのための、検視検案か。
死んだ人は、遺された人は、それで救われるのだろうか。
事件でないことを明らかにして、だれが安心できるのだろうか。
万が一事件だったとして、真実を暴いて、だれが幸せになるのだろうか。
なぜ助けられなかったのかって?
そんなの、人が必ず死ぬ生き物だから。
それだけだよ。
だったらお前が助けろよ。
死ぬ前に、助けてくれたらよかったのに。
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あちらの世界で、無事にお父さんに再会できましたか。
これまで通り、いっぱいお父さんに甘やかしてもらってね。
ひとり淋しく眠れずに明かす夜は、もう過ごさなくていいから。
安心して、おやすみなさい。
そのうち、一緒に六甲おろし歌おうね。
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Photographer : Misato Fukagawa
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