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語りの種 犬山の生活史 - 聴く、綴る、編む

犬山の昔を知る5人の方の聞き語りをまとめた書籍が出来上がりました。
愛知県図書館、犬山市図書館、協働プラザ等に置いて頂いておりますので、ぜひお手に取ってご覧ください。
若干部数ですが、こちらのサイトより購入いただけます。

「はじめに」より

犬山の昔について教えてください。
五感に残る記憶を教えてください。
そんな突然のお願いに、五人の方がお話を聞かせてくださいました。

芸妓さんのいる置屋が軒を連ね、三味線や唄が聴こえるまちの音。
プロペラ船が往復し、近郊からの観光客がひっきりなしにやってきた桃太郎神社。赤岩の中に綺麗な水があってキラッキラと光る小魚が泳いでいた木曽川。
尼僧さんが町を歩き、保育所に関わっていた日常の風景。
手作りの演劇やコーラスの舞台に、大勢の観客が詰めかけた戦後犬山の文化活動。

この本ではそんな語りが繰り広げられます。

「犬山の生活史」プロジェクトは、今では過ぎ去ってしまった犬山での暮らしの細部を留めおこうとする試みです。犬山の昔を知る人の知恵、記憶をつなげることは、過去を知ることにとどまらず、犬山の未来を考える上での豊かな文化資源となるはずです。

書き起こしにあたっては、一人ひとりの生の声をできるだけ伝えたく、通常の編集では省かれることの多い方言や口調、間合いなどもそのまま留め置かせていただきました。また、これらの語りはすべて回想に基づくもので、曖昧さを含みます。本書では史実の正確さよりも、揺れも含めた語りをそのまま留めることの方に重きを置きました。わかる範囲での確認、補足はしておりますが、内容はあくまでその時点の話者と、聞き手の関係性の中で生まれた語りの応酬となっています。

多方向に伸びる枝葉をあえて捨象せずに残しておくことで、大きく育っていく文化の種がある。みんなのアーカイブでは、そうした種を育てていきたいと思います。みなさんもその声にゆっくり耳を傾けてみてください。
そして、いつかまたお話を語り継いでいただければと思います。


目次

はじめに

1 芸妓置屋が軒を連ねていた頃
 山田隆さん
“その師匠なんか、洗濯は必ず水が流れるから高下駄でやってるんだよね。途中で石鹸がなくなると買いに行くんだけど、高下駄でカランカランカランって姉さん被りに襷かけて石鹸買いに行くときの浴衣なんかね、そりゃあもう全然違う”

花柳界のピークの頃
図師の由来
義太夫師匠の美声
花柳界のなかの素人の家
小学校で邦楽教育をはじめる
花柳界から赤線へ
名古屋の奥座敷
赤線の時代
川沿いに立ち並ぶ料理屋
芸妓さんを「仕上げる」
芸妓さんの兵隊稽古
化粧品の匂いとうどんの味
歴史に残らない町の記憶
楽器が文化を語る

2 桃太郎神社と栗栖の観光地化 川治桃光さん
“犬山から桃太郎まで大勢の人でね、ほんと、嘘のようでね、自転車に乗れなんだ。”

桃太郎神社(御祭神大神実命)のできるまで
桃太郎屋敷と野猿公苑
栗栖の街道と渡し舟
松茸山があった頃
桃太郎にちなんだ地名と桃太郎音頭
吉田初三郎さんと稲垣満一郎さんの想い出
栗栖小学校の頃
観光地の賑わい
プロペラ船から車時代へ
車が珍しかった頃のガソリンの匂い

3 ダムがなかった頃の木曽川 江口真一さん
“目に浮かぶのは赤岩の中にきれーいな水があって、こんな小魚が、あれは鮎だったんだろうな、キラッキラ キラッキラしてさあ”

蛍が舞う川
ダムで川がダメになる
石の絶対的な役目
鮎の遡上
川に関わる仕事に就く
木曽川の魚たち
砂利が流れる
川の道
川の商売
天然プールのあった頃
城下町の想い出、五感の記憶

4 尼僧さんがはじめた保育園 三輪宮子さん
“母はね、一緒には寝なかったんですよ、絶対。すごくプロ意識が高いというか。一緒に寝て風邪をうつすとか、熟睡できないとかがあると保育園の仕事に差支えがあるからって、絶対一緒に寝なかったの。”

尼僧さんと尼僧学林
保育園のできはじめ
熊野町に住んでいた頃
五感に残る記憶

5 犬山戦後の文化サークル活動「白い城の会」 田中一夫さん
“兵隊から帰ってくるとね、私は呉の方から帰ってきたもんで、名鉄じゃなしに高山線で乗り換えだもんで、そうすると最初に目に入ってくるのが白い城の壁が見えるわけよ。そしたらポロポロっと私自身もそこで涙ぐんだわけです。汽車の中から。そういう想い出が犬山城にある。”

白い城の会のはじまり
様々な文化活動―演劇、人形劇、コーラス
ろうそくを灯しながらの演劇活動
娯楽に飢えた時代
記憶に残る風景
木曽川の河童
予科練のこと

名もなき風景の声をとどめる   楠本亜紀

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