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メモ・吉野弘 一枚の写真
段飾りの雛人形を背に
晴れ着姿の幼い姉妹が並んで座っている
姉は姉らしく分別のある顔で
妹も妹らしくいとけない顔で
姉は姉両掌の指をぴったりつけて膝の上に
妹も姉を見習ったつもりだが
右掌の指は少し離れて膝の上
この写真のシャッターを押したのは
多分、お父さまだが
お父さまの指に指を重ねて
同時にシャッターを押したものがいる
その名は「幸福」
幸福が一枚加わった
一枚の写
メモ・ナナのリテラシー
「偉い人たちの多くは、表現にはいい表現と悪い表現があって、悪い表現をなくせばもっといいものになると考えている。違うんですよ。実に不思議なものでしてね。悪い表現をなくすと、いい表現もなくなってしまうんです」
メモ・塀の中の懲りない面々
「塀の中の懲りない面々」(安部譲二著)に忠さんという役所専門の泥棒が出てくる。
曰く『役所はお宝の扱いがまるで雑なんだ。どうせ他人の金って気なんだろうよ』
メモ・永六輔と河合寛次郎
作家の永六輔が学生時代、親交のあった陶芸家の河井寛次郎と共に、京都清水の坂を散歩していたときのこと。永青年がとある道具屋の店先に置かれた、小さな蕎麦猪口に目を留めた。
「ほう、いいねそれ」
視線の先に気付いた河井氏も褒める。名のある陶芸家に審美眼を見立てられれば、そりゃあ得意になるもの。
「いいでしょうこれ?」
「いくらだろうね?」
「僕は一万円でも買いますね」
本当は千円くらい
メモ・谷川俊太郎「ほん」
ほんはほんとうは
しろいかみのままでいたかった
もっとほんとのこというと
みどりのはのしげるきのままでいたかった
だがもうほんにされてしまったのだから
むかしのことはわすれようとおもって
ほんはじぶんをよんでみた
「ほんとうはしろいかみのままでいたかった」
とくろいかつじでか