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VNOS/ブイノスを作った話(中編)

みなさん、こんにちは。
本記事はVNOS Advent Calendar 2019の8日目の記事であり、1日目のVNOS/ブイノスを作った話(前編)の続きのお話になります。

前編は関係者とごく少数のVNOSマニアの方の需要しかないようなニッチ記事だと思っていたのですが、記事に変な熱量を込められたおかげか意外と多くの方に読んでいただけたようで大変嬉しく思います。缶ビールを4本くらい消費しながら朝まで掛かって書いた甲斐があったというものです。
今回は事務所に来て(もちろんノンアルコールで)書いているので、前回のような変な熱量が出るかどうかわかりませんが、とりあえずいってみましょう!

前回までのあらすじ

スキルや個性を核として社会や世界に繋がってゆくV(バーチャル)というインターフェイスを持った人々が、互いの力を持ち寄って色んなことをやれたらいいよねという思いで作られたのがVNOSという組織(コミュニティ)でした。

予想外の出来事やタイミングに恵まれて、幸いにも20名以上もの個性豊かなメンバーが集まることとなりました。
ただ我々が唯一持っていたのはVのままの社会参画を目指す!という合言葉ひとつでした。
顔見知りもいれば初顔合わせの方もいて、エンジニアだけでも多様なジャンルとスキルにわたっているところに、モデラーさんブロガーさんVTuberなど多様なメンバーも揃いました。
まずは単なる人の集まりからコミュニティに昇格させなければ、というのが当時の私の想いでした。

VNOSはどこにある?

VNOSのメンバーが集まりコミュニケーションをとる場所としてSlackを選びました。VTuberといえばDiscordが定番だったのですが、私自身がSlackを仕事で使って自作プログラムも含めた連携アプリケーションの豊富さや、ビジネスユースでも使えるような信頼性からSlackの方がいいなと思っただけです。
しかし、ツールはあくまでツールなのでコミュニティとして有効に機能させるには機能の良し悪しよりも、もっと重要なことがあると思っていました。

それはVNOSがあるという意識です。
本来であれば影も形もないものが存在するようになるにはどうすればいいかというと、ヒトに認識され認知されればいいのです。1人のニンゲンが強固に思い描き続けるよりも、多くの人があると思ってくれた方が冗長性と安定度は増します。しかし、そのぶんイメージが拡散したりブレたりして上手く像を結んでくれないかもしれない。

私がやりたかったのは自身が後にフルコミットする法人と表裏一体となって連携・連動するVの人によるコミュニティです。
何度か顔を合わせたメンバーにはそういう話をしていましたが、一般公募のツイートではその辺りは触れていないので、賛否もあるだろうというのはよく分かっていました。
しかし、私的にはそれこそがVNOSというコミュニティを独特の存在感を持つような場にする肝であると確信していたので(てゆーか、フルコミするんでそこがコケると私の人生もコケるので、確信というか成功させなければならない訳です)、リソースを内部での意識共有と将来の方向性の明確化に全振りすることにしました。

クローズドなコミュニティ

VNOSは設立当初から現時点までクローズドなコミュニティです。
これについては一部の方から非難をされたりもしたのですが、私自身が考え目指すものはエンジニアを中心とした技術とVの周辺スキルや個性で、小規模な案件をこなして実績を積み上げてゆくというものだったので(なぜなら後から出来る法人も限りなく個人に近い零細企業だし、私自身がIT企業の経営経験はあるけれどエンタメは未経験というところから、Vという新規の要素を付加しつつコントローラブルに、現実的にビジネスとして出来るであろうラインがそこでした)、オープンにしてV界隈全体に広げてゆくような大きな仕組みや制度を作ってゆくというのは私はやらないし、やれないという認識でした。

前編で書いたようにところてん式にV界隈の舞台にうっかり押し出されてしまったために妙な脚光を浴びてしまいましたが、私がやろうとしていたのは地に足の着いた座組で小さくてもいいから確実に実績を積んでゆくようなスタイルでした。POC(概念実証)みたいなものですよと。

話が逸れました。

そうした状況と思惑から、まずはVNOSとは何かというところを徹底的に議論してそれを内部メンバーで共有するということによって、VNOSというコミュニティの存在感がまずメンバー内で生まれ、ビジョンも共有される。
そのためにはコントローラブルな規模でのクローズドな運営をして、まずはバラバラのメンバーたちが交流し意見を交わせ未来についてアイディアを出したり試したりできるような生きた場を作ろうと考えました。

コミュニティの初動

コミュニティを作った直後に管理者がやらなければならないことは何かというと、たぶん全部が正解なんですよね。具体的に言うと。

・人を呼んでくること。
・チャンネル(部屋)やローカルルールなどを整備すること。
・入ってきた方に声を掛け、溶け込みやすい空気を作ること。
・既存の方が退屈しないように新たな話題やテーマを提供し続けること。
・DMなんかでくる細かい要望やらに対応すること。

基本的に全書き込みに対してコメントするくらいの勢いと熱量を持ってやるくらいで丁度良いのではないかと思っています。
もちろんとても大変だし、五月雨で人が入ってきたりすると何をどこまで進めたか自分でも訳が分からないような状況になります。
しかし、ここで掛けた熱量がその後のコミュニティの寿命を決めるくらい重要なことなんじゃないかと、個人的には思っています。

前の会社でSlack導入をした経験があったので、勘所はだいたい分かっていました。しかも、基本Twitterで知り合ったV界隈の方たちということでSNS慣れしているし、新しいことをやろうと集まってきているぶん好奇心も意識も高い。むしろ、本業+自分自身の活動+VNOSと貴重な可処分時間をどう割いて貰うかというのが最も気にしなければならないポイントだと思っていました。

黎明期

Vのままの社会参画というテーマが良かったのか、メンバーの相性が良かったのか、私の熱量と気配りと努力が実を結んだのか(おそらく全部だったと信じています)、私がコメントをするまでもなくメンバー間の対話が進み、「VNOSは○○だと思う」というメッセージが私以外の方からも出るようになりました。
これは実は非常に重要なことで、私自身が前回IT会社を作ったときも経営者や幹部以外の一般社員の口からナチュラルに「○○はこういう会社だから」という言葉が出てきたときにようやく(社会的な意味で)会社が生まれたと感じましたし、それまでには割と長い年月(2-3年?)が掛かりました。
しかし、VNOSでは1ヶ月も掛からずそういう状態になりました。

Q. そういう状態でやるべきことは何か?
A. アクセルをさらに踏み込む!

ということで、場が温まってきたのを感じて様々なことをやりました。
様々なテーマで議論する、内部コンペでロゴを作る、企画を出し合う、などなど。当時のツイート数が激減しているのですが、そのリソースはほぼすべてVNOSのSlackへ向けていました。
過去ツイートに当時のSlackのSSが残ってましたので、あの頃の空気感が紹介できればと。。

見えてきた大きなテーマ

そんな感じで何だかよく分からない勢いと衝動に突き動かされて、毎日修学旅行やゼミ合宿の夜のような密度で語り合ううちに、なんとなく大きなテーマが見えてきました。

・法人ブイノスはVNOSにとってどうあるべきか
・Vであることの意味・意義
・Vというスタンスの個人差
・VTuberブームが去った後どうしようか

ここまでにだいぶ文字数を費やしてしまったので、駆け足でいきましょう。

法人ブイノスはVNOSにとってどうあるべきか

法人ブイノスがどうあるべきかというのは燃えはしませんでしたがかなり喧々諤々とやりました。
元々自由を求め抑圧を嫌う個人V勢、変な制約や鎖が付くのは嫌がるのも100も承知。私だって嫌ですから。
ただ、個人の力だけでは限界があると分かったからこそVNOSに参画しようと思ったというのも同時にあり、運営母体として主従のような関係ではないこと、むしろリアルとの窓口的に利用するための組織であること、あと私自身が生活するための法人でもあるけどそっちはITで回すから変な搾取とかは一切ない、むしろ互いにいいように利用し合おうというところが長い議論や日々のコミュニケーション、リアルでの交流などを経て理解して貰えました。
下記のような当時準備していた営業資料なんかを作りながらどんどん公開していったのも良かったかもしれません。

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その甲斐あってか最近では、ブイノスをV活動名義での荷物の受け取り住所として使ったり、企業案件の中継としてブイノスを嚙ませたりと、気軽に使って貰えるようになってとても嬉しく思います。

Vであることの意味・意義/Vというスタンスの個人差

なぜVのままで働くことがいいのか、その意味や意義はどこにあるのかという明確な答えは実はまだVNOS内でも出せていません。
というのも、Vであるということの定義やスタンスが各人ごとにバラバラなのでその上に何か共通のモノを積み上げるということの無意味さがだんだん分かってきたからです。
と同時に、各人バラバラのスタンスであっても、共通の理念や目標に向かって協力してやってゆけるという感触がつかめたという大きな収穫はありました。
VNOSには様々なVの方がいて、Slackや通話やリアル、そしてVRCと様々な手段で交流していますがそこへのアプローチも各人それぞれで、リアル名義と身分をフルオープンにする方、顔は出して一緒に飲むけれどリアル情報は一切出さない方、音声のみの方、V存在としてのスタイルを崩さない方…
しかし、それらのどれにも優劣も正解もなくて、それぞれのスタイルとスキルと個性で得意なところ・出来るところで協力してゆければいいなと思っています。
そして、たしかにリアルの情報密度というのは大きいけれど、完全にVとして振る舞う方との信頼関係というのも緩やかで時間は掛かるかもしれないけれど、不可能ではないんじゃないかなという感触は得てきています。

VTuberブームが去った後どうしようか

いまこんな話をするとトレンドに乗ってしまうようで逆に嫌なのですが、1年以上前の個人Vが大手企業所属になることが成功モデルのひとつと考えられていた頃に、こうした議論を真面目にしていたコミュニティというのは実は少ないんじゃないかなと思っています。
Vによるパフォーマー・ストリーマーという、いわゆるVタレントビジネスは芸能界等と同じく人気商売故の難しさ、そしてこの停滞する日本社会の若年層の懐事情に頼るという収益構造はなかなか厳しいよねという共通認識はありました。だからこそエンジニアを中心としたスキル者を集めて、toCじゃなくてtoBの方を向いてゆきたいよねと。
あと、だいぶエンタメの比重が突出してしまったけれど、本来のV界隈の面白さってアバターを纏うことによる心身への影響、感覚の拡張といったアカデミズムやxRというテクノロジーの進化、社会やコミュニティの可能性といった様々な可能性を含んでごった煮になっていたからこそ、あれだけの人々を熱狂させたのだろうという思いは常にありました。
だから、V界隈が盛り上がりVTuber・バーチャルYouTuberという存在が切り込み隊長となって世間への認知を高めてくれるのは大いに歓迎だし、その先でこそ様々な可能性が花開くだろうとは思っていましたが、エンタメ偏重でそれしかないというのもよろしくないし、カルチャーとして根付く前にブームとして世間からオワコン認定されてしまった場合、厳しい戦いになるだろうなーという話は発足当初からしていました。
幸いなことにバーチャルに纏わる様々なことの認知は進んでいるようなので、今のところは規定路線で進んでゆこうという流れにはなっていますが。

心理的安全性の確保による副次的効果

VNOSは「Vのままの社会参画」「Vのままでお仕事」という、まだ世の中にはなかなか受け入れられないようなことを実現しようとしているため、議論やアイディアを自由に出して気軽に試したり動いたりするような場でなくては成立し得ないと思っていました。

幸いにもエンジニアの世界では多様なスキルの人材がオンラインで作業を行うことも多かったため、そのノウハウが多く蓄積されています。
こちらのGoogleの「効果的なチームとは何か」を知るのような優れた記事が幾つもあり、またVNOS内にもそうしたことに興味と知見があるメンバーが複数いたため、コミュニティ内での心理的安全性の確保ということにかなり気を配って運営されてゆきました。

心理的安全性が確保されるというのがどういう状態かという啓蒙から(私自身もVNOSを作ってから知りました)実践までをクローズドな環境で各々が意識してやっていった結果どうなるか。
めちゃくちゃ居心地がよくなるのですよね。

居心地が良くなると、色んな情報が自然と出てくるようになる。それらに対する独自の見解・意見がさらに出てくるようになる、という正のプロセスがグルグルと回ってゆくようになるんですね。

あと、VTuberとして活動している方の楽屋的な場として機能し始めるという、予期しない効果もありました。
配信ソフトや機材の設定ノウハウの共有、トラブルシューティング、新しいガジェットの情報交換、運営やサービスの評価・感想、そして何より面白いなと感じたのが、舞台(配信やTwitter)では出せないようなVとリアルの中間のような顔を出せるというところに、すごく価値と居心地の良さを感じて貰っているんじゃないかという感想です。
その辺りは、VTuberではない私の一方的な感想なので、他の方の記事でいずれ語られるのかもしれません。

たとえばこのあたりの記事とかで。。

そんな感じで、黎明期のVNOSがどんな感じで何をやっていたかというのを書いたらそれだけで終わってしまいました。
まだ、法人設立まで行ってないので、そちらは後編ということでまた来週にでも書かせていただきます。

それでは最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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