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出向のススメ

自己紹介

ご覧頂きありがとうございます。新卒で食品会社に就職し、営業職を経験したのちにアメリカの子会社に赴任。約10年間海外駐在しています。
自分自身への備忘録も兼ねてアメリカでの体験や自身の考えをnoteに残していきたいと思います。同じ境遇やこれから海外に挑戦したいという方にとって少しでも参考になれば幸いです。

はじめに

私は2013年からアメリカの子会社に駐在(出向)していますが、海外でアメリカ人の部下を持って働くということと同じかそれ以上に、子会社に出向したことで多くの経験を得ることができたと感じています。

テレビドラマ等で左遷先によく使われることからか、一般的にはあまり「出向」については良いイメージがないように思いますが、私は出向には以下に挙げるような多くのメリットがあると考えます。

  • ビジネス全体像が見える

  • 上位職を経験できる

  • PDCAの短期化

  • 仕組み作りを経験できる

ビジネス全体像が見える

子会社に出向する場合、多くの場合は出向元より小さい企業体への出向ではないでしょうか。そうなると従業員の役割が細分化されておらず、担う役割範囲が広くなります。

私のケースでは日本勤務時代はセールスとしての経験だけでしたが、出向先では営業戦略、販売管理に加えてSCM(調達&物流)も担う三足の草鞋状態でした。
それに加えて、小さい企業体なのでマネジメントだけではなく、自分自身で実務も担いながら責務を全うするということを求められました。

出向先は販売会社で、調達→配送→販売→回収というバリューチェーンの中のかなりの部分を役割として担っておりましたので、ビジネス全体像を俯瞰できる立場にありました。

その中で国内営業時代に気になっていた仕組みやシステムの存在意義を深く理解することができました。また役割範囲が広いことで当然他部署との関わりも多くなっていきます。自部門の取り組みが他部門にどのように影響を与えるかが見えますので、特に経理・財務知識が自然と身に付きます。

このように部門間のつながりが見えてくることにより、ビジネス構造を掴むことが可能となります。そうなると事業全体のバリューチェーンの流れを意識しやすくなり、構造把握能力が向上していきます。そうなると部分最適ではなく全体最適観点からの判断が行えるようになってきます。

上位職を経験出来る

出向先では出向元での職位より1、2段階上位の職位を与えられることが多く、数年先の経験を前借りしているようなものです。
事業規模の大小と難易度には相関関係はないと感じています。むしろ事業規模が小さい方が社内外環境からの影響を受けやすく、ビジネスステージの変遷によりやるべきことも毎年変わってきますので、むしろ難易度は高いのかもしれません。

当然、実力以上の役割を担うことになり大変な苦労を伴います。しかしながら役割が人を育てるという側面は間違いなくあります。

また自分より年長者の部下を持つケースも出てきますので、どうすれば経験やスキルで自分に勝る部下をマネジメントしてアウトプットを最大化していくのか考える癖がつきます。

私も幅広い年齢層(海外駐在の場合はそこに異なる文化背景という要素も入ってきます)の部下を持つことにより、部下に育てられるという感覚を感じて来ました。

また上位職となると自身が事業運営に与える影響も当然大きくなってきます。
従業員数1000人の出向元から従業員数100人の企業に出向した場合、一人当たりの影響力は単純計算で10倍となります。そして、1、2段階上の職位を担うことで、それも掛け合わせると数十倍の影響力となり得ます。

当然今までと比較にならないくらいの重責を担うことになりますが、次の項で挙げるポイントと合わせてうまく活用できれば判断力向上に繋げていくことが可能です。

PDCA短期化

一つ目、二つ目のポイントでビジネス全体像と、それに対する影響力の大きさが見えたかと思います。

そうなってくると当然、判断にともなう結果には出向前とは比較にならないほどの因果関係が見えてきます。そしてその関連性の高さに加え企業体が小さい分、取り組んだことが業績となって出てくる期間の短縮化も期待できます。

受験勉強でいくら過去問を解いても、答え合わせをしなければいつまでたっても成績は上がって行きません。なぜならフィードバックがなければ答えが合っていたのか、間違っていたのかが分からないため、いつまでたっても同じような問いに対し同じ答えを繰り返すだけだからです。

それと同様にビジネスにおける判断もそのフィードバックがなければ判断精度は上がってきません。
そういう意味ではより小さい企業体への出向により計画(Plan)→判断(Do)→フィードバック(Check)→修正(Action)→判断(Plan)・・・というPDCAサイクルの短縮化は判断精度向上にとって最高の環境となりえます。

仕組み作りを経験できる

出向先では出向元と比較すると仕組みやシステムのようなサポートが充実していないケースがほとんどです。

しかし出向者のあなたは、ある意味仕組みやシステムに関して「あるべき姿」が見えています。
もちろん出向元の仕組みやシステム=あるべき姿と完全に合致するわけではありません。当然ビジネスステージや事業規模、業界などの違いにより調整は必要ですが、複数の視点を持っていることは仕組みやシステム構築の成否において非常に重要な要素だと感じます。

そして出向先でのあるべき姿を見定めたら、その実現のために動くのも自分自身です。出向先では大抵のケースで出向元以上に人的資源が限られており、かつ役割もあいまいです。そうなると新たな役割が発生したら既存の人的リソースでなんとかせねばなりません。
そのような状況下では「あるべき姿」が見えている出向者が主導してプロジェクトを進めていくことが成否に大きくかかわってきます。

その中で、仕組みやシステムを使いこなすことと、それらをゼロから築いていくことは本質的に全く異なるスキルセットなのだということを学習することになります。私自身はここに海外駐在や子会社への出港でパフォーマンスを発揮できる人、できない人に別れる大きなポイントがあると思っています。

稀に(というかそれなりの確率で)エース級の人材を海外駐在や出向させたのに、全く期待値に届かなかったというケースがあります。それは仕組みやシステムを使いこなすのが得意なためにパフォーマンスが高かったが、その仕組みやシステムが整っていない環境では本来の能力を発揮出来なかったということに原因があると感じています。

仕組みやシステムを使いこなせることはもちろん素晴らしい能力ですが、それらの本質的な目的を理解し、何も無い状態からそれらを構築できる能力が伴ってくると人材としての市場価値が大きく高まるのではないでしょうか。

また仕組みやシステムの構築には多大な労力が伴います。
それらを出来る、というよりやらねばというマインドこそがまさに事業家意識だと言えるかと思います。

最後に

このように出向により、構造把握能力 x マネジメント力 x 判断力 x 事業家意識を同時に効率よく鍛えることができ、経験値・スキルセット・マインドセット向上に繋げることができます。
もし勤務先に出向というオプションがあるのであれば、それらを活用してみるのも良いのではないでしょうか。

通常は異なる企業体に雇用リスク無しに移るということは困難です。
しかしメンバーシップ雇用型の日本ではうまく制度を利用すれば、ほぼノーリスクでバーチャル「転職」が可能です。

かと行っていい加減な気持ちで出向すると確実に痛い目に遭います。
出向先の従業員を下に見るようなマインドでは十分な経験もスキルの習得も叶わないでしょう。

謙虚な姿勢で上述したような経験を積むことができれば、出向元に戻った際も必ずその経験は役に立つと思います。

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