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殺伐百合は世界観

世界が荒廃しているからこそ、百合は美しく咲くのだ。
二人の目に映る光景が灰色だからこそ、手の施しようがないからこそ、相手の姿だけは鮮やかに映えるのだ──いや、目の前の相手が一つの世界なのだ。

まどマギでもネクロニカでも今をときめくソ連百合でもそうだろう。

殺伐百合にも「世界観が殺伐としている」「二人の関係が殺伐としている」みたいに色んなバリエーションがあると思うんだけど、いずれにせよ、世界の中で相手の存在が「一番鮮烈」なところがキモなんじゃないかなぁ。
もはや憎悪すら抱きがたい「終わった」世界の中では、憎悪を抱かせてくれる存在ですらめちゃくちゃ貴重なんだよね……そうして灰色の世界の中で振り絞られ「クソ女」目がけて引き絞られた憎悪が、何かの拍子に不意に愛情へと変わっていく臨界点の尊さ的なものは、私が言うまでもなく誰か他の人が語っているに違いないのである。

まあ別に、憎悪は憎悪のままでもおいしいんですけどね。
特定の相手に激情を抱いているという事実、それ自体がすでにおいしいので……

私は長らくまどほむを愛好してきたのだが、ここ最近になって、「叛逆後さやほむとか良くない?」と思い始めている。
まどほむはともかくとして(どの時間軸でもほむらちゃんの一方通行的なところがあるし)、杏さやは途中から割と相思相愛感あるんだけどさ〜〜(叛逆の物語とかもう相思相愛じゃん、ね?)
でも、さやほむもいいんですよね……まあ、叛逆さやかちゃんは一気に強キャラ感が増してほむらちゃんに劣らないくらいかっこよくなってるから、しょうがないね!! オタクは決意ガンギマリつよつよネキ(だが心に少しの弱さがある)のクソデカ感情が大好き!!

あとネクロニカも大好き!!
未練が「友情」とか「信頼」とかでも世界観が世界観だから殺伐百合になるし(背景が不穏+ドールたちもいつ狂ってしまうか分からないから不穏、それでも二人はかけがえのない「仲間」なんだよねっ……☺️)
未練が「嫌悪」とか「対抗」とかだったら、まごうことなき殺伐百合of殺伐百合になるぞ!! いやっふうっ!!

ついでにいえば、『進撃の巨人』のガビとカヤすごい好き。ガビの正体がバレてから、ガビがブラウス一家を助けるまでの流れの芸術点が高すぎて、性癖に爆撃を喰らうなどし、見ている間変な笑いが止まらなかった。
アニとヒッチも好き。罪と人情のハーモニーっていうんですかね、はぁ……(嘆息)

少し脱線した。話を殺伐百合に戻す。

とはいえ、「殺伐百合」という言葉が明確に注目され始めたのは、ここ最近のような気もする。多分、きらら系のゆるふわ日常系百合に対するカウンター的なジャンルとして登場してきたのかな?
「あったけぇ世界の中で可愛い二人がキャッキャウフフしている」のはまあ、純粋な癒やしかもしれない。白湯系の百合ね。
が、「冷たい世界の中で傷口から熱い血を流し合い、体温を分け合う」的なハードボイルド?さも、それはそれで良いのである。

「ソ連百合」が一世を風靡したことによって、この百合に「殺伐百合」という名前がつき、概念が広まった。あるいは、私が知らなかっただけで、この名前自体はずっと昔からあったのかもしれないけれど。とにかく、殺伐百合は市民権を得た。
しかし、殺伐百合的な要素を持った作品自体はかなり前からあったのではないかと思っている。ここまでちらっと話してきたまどマギなんかは、その嚆矢なんじゃないかと思う。

まあ、たとえ「殺伐百合」という名前がなかったとしても、殺伐百合はこれまで重く冷たく香ってきたのだし、これからもそうなのだ。

だから、もっと殺伐百合をくれ。浴びるほどくれ。マジで。

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