子どもの頃にこんなことなかったっけ?
たび重なる洗濯によって薄くなった、色あせた布巾からは漂白剤のにおいがする。
窓から差し込むオレンジ色の光は、部屋の中を漂うホコリをきらきらと輝かせている。
ホコリは踊るように漂っていて、当時の私はそれがどこに行き着くのかも知らなかった。掴もうとしても、それは私の手をすり抜けていった。
母が私の髪を梳かすとき、プラスチック製の安いブラシで乱雑にするものだから、痛かったのを憶えている。
白かったそのブラシには、細い髪が無数に絡みついていた。あーあ。
夕方は今よりも暗かった。
言うまでもなく、五時のチャイムは今よりうるさかった。
和室は薄暗く涼しかった。
のぼり棒をよく握る。手はだいたいベタベタしていた。
よく飲んでいたのははちみつレモンだった。はちみつとレモン汁があればできるからね。
夏になると、よくプールの底に腹ばいになっていた。
水の中やプールサイドの明るさに対して、更衣室は薄暗くて狭く、独特のにおいがした。嫌いではない。
プールサイドのざらついた地面を恐れなしに走る。日陰で見学している子を密かに憐れんだ。
曇り空ばかりを思い出す。
そして、飛行機やヘリコプターが通りすぎていく音を聞くのだ。
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