朝歌舞伎統一43
何が起きたかわからなかった
ただ転ばされ上を見上げると見たこともない男達数人が俺を見下している事は確かだった
その中でも1番年配であろうスーツを着て顔にまで墨が入っている男だ俺に言った
お前がLの彼氏って奴か
Lから全部聞いたぞ。Lを騙してお金貢がせてるそうじゃないか。Lは俺の女なんだ。人の女に手出したらダメなことくらいわかってるよな兄ちゃん?
例えホストだろうと。
その男は冷静な口調で俺に恐怖を与えた
俺は直ぐにわかった。こいつか
こいつがLの彼氏か
Lを店で働かせ薬を買わせ薬と暴力で依存させてる
彼氏なわけない
こいつこそLを利用してるだけだ
俺はホストである事に関係なくこいつをぶん殴ろうと思った
Lから話を聞いて以来こいつの事がずっと頭から離れなかった
Lに会う度にこいつの事を思い出しては想像していた
もし会ったら俺ならどうするか
戦うか
色んな事を想像していたのだ
会うとは思ってなかったけれど
会う事はないだろうと思っていたが、まさかここで本当にこんな場面になろうとは。。
しかし相手は本物
実際このシチュエーションになると人数の多さといきなりの出来事で想像していたよりも動揺し、焦りの方が強く冷静な判断ができなかった
俺はとりあえず話あいたいと言うと、隣でKが暴れた
話し合う必要なんてねぇわ!こいつらは悪党だ!
Kは冷静さを失い数人いた男達の1人に掴みかかっていた
やるならやるぞお前ら
Kの男気は素晴らしい物だがこの時ばかりはやめてくれと思った
勝てるはずがないし、喧嘩したところで何も生まれない。無意味だ。
俺はKを止めたかったがもうスイッチが入ったKは止められなかった
自分の事じゃないのにKは本気だ
俺の為に、、
俺の為にここまでしてくれているKを否定できなかった
本当は話し合って穏便に終わらせたかったのに
覚悟した
Kが一発殴った瞬間に大勢の男達は一斉に俺とKを数発づつ殴り抵抗する俺らを取り押さえ
近くに止めてあったであろう車に押し込んだ
車は猛スピードで出発した
三台くらいあったかな
俺とKは同じ車
たぶんステップワゴンかなにかに乗せられた
記憶が曖昧だが
手をプラスチックのテープみたいので巻かれた
よくやってくれるわお前は本当
ただじゃすまないよ?
まるでVシネのような展開だ
そんな冷静な事も考えながら
俺は確実に殺されるなとその時思った
人間本当に恐怖の極限を超えると意外に冷静に覚悟を決めれるものだ
ホストをしていてこんな事にになってしまって後悔が少しだけ出てきた
何より思ったのは
自分が死ぬかもしれない恐怖より
巻き込んでしまったKへの申し訳ない気持ちと
親への申し訳ない気持ちだけだった
俺は地元を離れ東京に出る時に親父にお祝いとして時計をもらった
社会人になるんだから時計くらいしなさいと
親父が使っていた時計を貰ったのだ
これはいい時計だとたまに自慢していた物だ
多分5万円くらいの時計だった
親父からしたら高価な時計
当時時計の価値なんてわからなかった俺は親父から貰えた時計が嬉しかった
東京に出てから
ホストになってからも俺は堂々とつけていた
思い入れがあったから
殴られ仲間らも時計だけはなぜかその時守らないとと必死に思った記憶がある
その時見た親父の時計の時間もはっきり覚えている
それだけだった
車の中では何を話したかあまり覚えていない
人間嫌な記憶は消し去りたくなるものだから
ただ車に乗っていたのは30分くらいだろうか
その間口の中に割り箸を2本くらい詰め込まれ両頬を十発くらい殴られたのは覚えている
2度とLと連絡を取らない
この事を絶対言わない
そしてLが使った金を返せと
この3つを約束させられた
口の中は血だらけだった
痛みよりも何故かもの凄く悲しくなった
ここでこうされてこの人達に屈した自分に悲しくなった
結局はお金か
お金の為か
お金が全ての事の原因なんだ
クソみたいな世界だな
死んでもいいやと思っていたが生かされた
彼らもこんな無名なホスト2人殺しても仕方ないと思ったのだろう
そんな無駄な事はしないか
流石だな
悲しみと少しの安堵感が回ってきた
数人いた男達の1人がメールアドレスを俺に教えてきた
ここに金が用意できたら連絡して持ってこい
ホストだからすぐ稼げるだろ
金がないなら俺らの所で働くか?
そんな事を言われ俺とKは車を下ろされた
おろされた場所は何故か渋谷駅の近くだった
朝の4時くらいだったかな
スーツのワイシャツは赤く血で染まり
顔はボコボコ
明らかに異質な2人
何故そう思ったのかわからないが
俺とKはとにかく警察に見つからないように人目に触れないように隠れるように歩いて渋谷から家に帰った
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