朝歌舞伎統一44
2人で無言で茫然としながら2時間は歩いたろうか
気づけば新宿駅まで来ていた
何故2時間もかかったのか覚えてない
逡巡していた
この夜、この数時間の間に起きた生命の危機に直面する出来事があまりにもショックだったのが
開放された安堵感からなのか
Kと2人で時間感覚も忘れ無言で歩き続けていた
お疲れ
俺はKになんて言っていいかわからなかったがその時はその一言だけ言って別れた
家に帰っても俺の心と精神は落ち着かなかった
ヤクザ集団に顔を覚えられ、お店もバレた、しまいには写メも撮られていたのを思い出した
もちろん財布の中にあった身分証も写真を撮られていた
必然的に住所と実家がバレている
Lへの心配はもちろんだが俺自身のホストとして、そして人としての生活危機を感じていた
俺はホストになってから今もそうだが本気で病んだ事はない
ただこの時だけはホスト人生っての中で1番病んだ
何もないくらい部屋で俺は2日間くらい誰とも連絡を取らずただただ呆然としていた
頭によぎるのは親の事だった
ごめんなさいと言う気持ちと何故かこの時だけは親に会いたくなった
2日後俺はお店からの鬼メールと鬼電に耐えきれず出勤した
メールには
無欠罰金ヤバイよ
の内勤からのメールと
休んで遊んでんのか?笑
の先輩からのメール数通
俺自身への心配など皆無だった
この温度差がたまらないくらい辛かった
自分の撒いた種とはいえね
Rさんなら心配してくれただろう
Rさんに話したい
相談したい
俺はまだRさんが代表になりお店を立ち上げる事を信じていたから
店に来るのを俺は信じていた
しかし、、
追い討ちをかけるように決定的な話が話された
その日の営業後のミーティングでの事だった
内勤が言った
Rは家庭の事情で完全にうちのお店を退店しました
今後ホスト関係の仕事は上がり昼職に戻るそうです
近々最後の挨拶に来ます
、、、
その瞬間俺の全てのモチベーションが消え去った
悔しくて悲しかった
残念だったな。
半分笑いながら
内勤や先輩が俺の肩をポンポンと叩きながら心ない事を言ってきた
その瞬間俺は爆発し暴れた
その場で全員殺してやろうかと思った
何人かをボコボコにし
最後はKに必死に止められたのは覚えている
そして社長に怒られたのも覚えている
何でRさんが
信じてた人に裏切られた
歌舞伎町で
ホスト界で唯一信じていた大好きなRさんに裏切られた
Rさんのお店で働こうと
ただそれだけを糧にここまで苦しくともやってきたのに
追い討ちをかけるようにその日あのヤクザからお金の催促のメールと留守電が届いた
ショックと恐怖で
俺の心は完全に全てのやる気を削がれた
最後のRさんの挨拶など見たくなった
会いたくなかった
次の日
遂に俺は
お店を辞め、歌舞伎町から消えた
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