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ご存じですか、バリアフリー上映

映画館でスマートフォン?

最近、映画館で「音声ガイド付きバリアフリー上映」という文字を見かけるようになった。これは視覚障害者が携帯機器(スマートフォン・タブレット端末)とイヤホンを使って音声ガイド付きで鑑賞できるというもの。

UDcastという無償のアプリをダウンロードしておくと上映開始と同時に音声で映画が楽しめる。対応している映画も増えている。

今上映中のものを例に挙げると
・映画クレヨンしんちゃん 爆盛!カンフーボーイズ ~拉麺大乱~
・名探偵コナン ゼロの執行人
・ママレード・ボーイ
・となりの怪物くん
・心に寄り添う。
などが対応している。また今後上映予定の映画でもバリアフリー上映がきまっているものがある。

[上映予定]UD cast 対応一覧

聴覚障害者向けのバリアフリー上映もある。

こちらも同様にUDcastを使い字幕を手持ちのスマートフォンなどに表示させる。貸し出し用のスマートグラスが映画館に用意されていることもある。

どこの映画館でもバリアフリー上映が可能に! 〜聴覚障害者向け「『メガネで見る字幕ガイド』体験会」に行ってきました♪〜

こちらも対応は先に紹介した上映予定で確認できる。

いつでも楽しめることのよさ

この特別に準備された映画ではなく、対応マークがついていれば任意の場所や時間に映画を楽しめる。また音声や字幕を必要としていない同行者とも並んで一緒に映画がみられ、また空間を共有できる。

バリアフリーとあっても、利用は無料なので障害者ではなくても使うことができる。例えば、日本語がわかるけど時々聞き取れないという外国人の友人と日本の映画を見に行くとき。あるいは、ちょっとだけ耳が不自由になってきたかな?というご高齢者と同行するとき。試してみる価値がある。

UDcast対応の映画(*マスター音声に対応している場合)はテレビで放送されるときも利用できる。

なお暗い映画館でスマートフォン等をつけると光が漏れるのでは?と心配されるかも知れないが、UDcastの音声ガイドで確認したところ上映中は音のみでスマートフォン画面が光らないので問題なかった。また、上映前にこれから見る映画を選択してセットして待つだけ。映像が始まればそれにあわせて音声が流れるので、基本的に調整は不要だ。(Androidの機種によっては若干のズレが発生することも確認されている模様)

洋画の字幕では満たされない情報

もともと洋画は日本で上映するときには字幕が出ているので、こういったキャプションや音声ガイドは必要ないのでは?と思うかたもいると思う。

しかし、怖い映画で、物音がして主人公がビックリするシーンがあったとしよう。音が聞こえなければ、なぜ主人公がビックリしたかわからない。

逆にドアの音だけで誰が入ってきたのか、あなたは判るだろうか?

例えば‥「ターミネーター2」のラストシーンでシュワルツェネッガー演じるT-800が、溶鉱炉に沈んでいくシーン。あのラストを目を閉じると聞こえるのは、音楽と時々サラ・コナーと息子のジョンがすすり泣く声だけだ。T-800が親指を立てたのはわからない。(あのシーンはセリフがないのだけれど、それだけに余計に何が起きているのかはわからない)

実際に目を閉じて洋画を"観て"ほしい。

つまり通常の字幕では情報が足りず、等価な情報が得られるためには今、なにがどうなっているのかの説明が必要だ。

画面の内容を、シーンの切り替わりやしぐさなど音やセリフで判断できなかったことを描写する。視覚で情報を得られず音声だけ、あるいは、音声で情報を得られず視覚だけの場合、どのようにして内容を伝えようか。

動画にもアクセシビリティ対応が必要

スマートフォンで手軽に動画が撮れる時代。官公庁や企業でもネット動画を配信しているが、Webコンテンツとして動画もアクセシビリティ対応が必要である。ウェブアクセシビリティのJIS、「JIS X8341-3」では、「収録済みの音声コンテンツのキャプションに関する達成基準」があり、等級A(シングルA。因みにAA、AAAと三段階に分かれており一番難しいのはAAA)で動画へのキャプション(字幕)の提供をすることとなっている。

映像を見ることができなくても、音声付きの映像を再生しながら等価な情報が得られるように「音声ガイド」を提供する。また音が聞き取れなくても、発言、物音など音声を文字にして画面表示し、等価な情報が得られるように「キャプション」を提供する。もしくはWebコンテンツとして提供するなら文字にしたものをテキスト形式でウェブページに掲載すると読み取ることはできるだろう。

YouTubeでは無償で字幕作成ができ、音声認識による字幕作成や字幕ファイルのアップロードもできる。
また、特定非営利活動法人メディア・アクセス・サポートセンター(以下、MASC)が無償提供しているソフトウェアおこ助Communityを使うと動画に字幕がつけられる。もともとプロ用として有償提供されているおこ助Pro3の簡易版なので、使いやすい。映像をみながらの入力や、表示タイミングの微妙な調整など有償版で培われた技術が活かされているので、ボランティアや家庭内など個人で使ってみたい場合にお勧めだ。

なおMASCでは講習会もしており、私も参加したことがあるが入力テクニックのみならず、情報として何を文字にしたらよいのかが認識できてためになった。

キャプションは台本を作成したのち字幕編集ソフトなどで編集する。なお組織の中でキャプション作成の統一ガイドラインを作っておく。

テレビの「字幕放送」

テレビも「字幕放送」を提供している。地デジ対応していれば、字幕放送の視聴も可能だ。既に収録されたものに対しての字幕放送がメインだが、生字幕放送(リアルタイム字幕)に対応している番組もあり、聴き取ったもの全てを、すぐその場で、文字化できる「高速聴き取り入力者」のかたが入力しているとか。(フジテレビ「字幕放送」のページより)
NHKでもニュースや生放送の番組で、表示の遅れを極力抑えながら生放送の字幕を提供している。5月ではプロ野球や競馬、きょうの料理、大相撲といった番組でも字幕放送が提供される。(NHK「放送番組字幕制作」のページより)

他の作業をしながら、例えば家事などでちょっと手が離せないときにでも試してみてはいかがだろうか。

(了)

ヘッダー写真 撮影地ニュージーランド Cromwell ©moya
最後の"映画を見る子供たち"のイラスト「かわいいフリー素材 いらすとやさん

最後までご覧いただきありがとうございます! 現在放送大学でPDFのアクセシビリティを卒業研究中。noteはそのメモを兼ねてます。ヘッダー写真はnzで私が撮影しました。 【ご寄付のお願い】有料noteの売上やサポートはnzクライストチャーチ地震の復興支援に使わせて頂いております。