特許事務という仕事~国内編~

特許事務という仕事はイメージが湧かない人がほとんどだと思う。私は国内(日本のクライアントが日本で特許を取る)と外国(日本のクライアントが外国で特許を取る)の案件を担当した経験があり、もしかしたらその仕事に興味があって挑戦するか迷っている人もいるかも…と思いどんな仕事かご紹介。

特許事務所は、弁理士、特許技術者、翻訳者、事務、経理、人事…で成り立っている。小さな事務所では特許事務が総務を兼任して電話を取ったり備品を揃えたりする。一方、中規模以上になると事務は案件の管理を専門に行う。

特許事務の心構えと向いている人
►勉強は必須
►細かい作業が苦にならない
►縁の下の力持ちとしてバックヤードで活躍
►弁理士との円滑なコミュニケーション

まず国内(内々とか内国とも言う)事務から。クライアントから特許出願依頼を受けたら、どんな発明なのか弁理士が文章に起こす。専用のオンラインソフトを操作して実際にそれを特許庁へ提出するのは事務の仕事だ。ほとんどの手続きはこのオンラインソフトを使う。出願が済んだら出願番号や出願日等を管理ソフトに入力して本格的な管理が始まる。勿論、提出書類をクライアントに納品して(納品の体裁はクライアントの指定に合わせて都度対応する)、手数料を請求してという処理はあらゆる手続きにつきまとう。

出願したら3年以内に審査料を納めないと審査が始まらないので、適当なタイミングでクライアントに「手続きしますか?」と問合せる。出願人の提出物や特許庁からの通知の多くは次の手続きの期限の起算になっており、管理ソフトに正確にデータを入力するのは必須。もし間違えると期限を落として失効してしまう恐れもある。

審査請求をしてしばらく経つと、庁からダメ出しのような通知が来る(ことが多い)。例えば「既存の技術と変わりないじゃないか」のような指摘で、「反論等があれば何日以内に提出しなさい」と指定されるので、いつどの出願にその通知が来たのか記録し、クライアントに納品する。応答書面の内容は弁理士が検討するので、事務は期限まで進捗を確認し、書類が整い次第提出する。庁とのこのやりとりは何度にもわたる案件もある。

すったもんだを経て特許するという通知が来たら、指定された期間内に設定料を払う。これまたいつどの出願にその通知が来たか記録し、「払いますか?」とクライアントに問合せ、納付後は特許証という賞状のようなものが届くのを待ってそれを納品したら一件落着。

出願~権利化には数年かかる。同時に沢山の案件が動いているので、分担して各案件の期限管理を行いつつ、手続きの内容や今後の段取りについてクライアントから問合せを受ければ、技術的なこと以外は事務で回答することも多い。

制度の理解、正確なデータ入力、正しい書類の作成、権利化までの潤滑油としてピンポイントでサポートというのが国内特許事務の主な任務だと思う。外国担当はまた違った任務があるので、それはまた別の機会に!