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後悔しない!新型コロナワクチン、納得接種への道 其の2【mRNAワクチンってなに?】

 紙面に掲載しきれなかった旭川市からのインタビュー全編を、個人的に公開します!

 ワクチン接種は任意ですが、皆さんの意思に任せるには、皆さんが納得をして接種を受ける・受けないの判断のための正しい情報は残念ながら少なすぎます。薬剤師の視点から新型コロナウイルスワクチンを紐解きます!


 納得接種への道 其の2は【mRNAワクチンってなに?】


ーーーワクチンについては【其の1】でよくわかりました。では今回使用されているというmRNAワクチンの「mRNA」ってなんですか?


 【其の1】でワクチンは「疫を免れるための練習台」とお話ししました。では「mRNAワクチン」のmRNAとは何でしょう。

 mRNAは「めっせんじゃーあーるえぬえー」と読みます。

 メッセンジャーは、バイク便のお兄さんのように何かを届ける人、RNAはDNAと同じように遺伝情報を示す物質です。情報といっても、デジタルなものではなく、糖にエネルギー物質などがくっついた状態の生体内の物質になります。5Gは関係ありません。磁石もくっつきません。

 mRNAが人間やウイルスの、体のタンパク質を作る、いわば「設計図」の役割を果たしています。人間の体ではDNAが基となり、タンパク質を作る工場で必要なタンパク質を作り出します。

 新型コロナウイルスは人間と異なり、DNAの代わりにRNAという物質を遺伝情報として持っています。このRNAを基に、ウイルスのタンパク質を作ります。しかし、ウイルスは自分自身では増殖していくことが出来ません。ウイルスはRNAからRNAを作り出し、感染した先の人間の体の中にあるタンパク質の工場を間借りすることで、ウイルス自身のタンパク質を人間に作らせます。

 居候が、居候のくせに人んちでめちゃくちゃやるわけです。このため、ウイルスは人間に感染することでしか増えることは出来ません。

 タンパク質の工場に提出される「設計図」としてのRNAの中には不要な情報も含まれています。設計図として必要な部分だけを寄せ集めたものがmRNAです。

 mRNAワクチンは「設計図」として必要な部分だけを人工的に作り出し、薬にしたものです。ではワクチンに使われるmRNAは、なんの「設計図」なのでしょうか。もちろんウイルス全体というわけではありません。ウイルスのほんの一部をつくるための「設計図」です。

 我々の体は、外敵それぞれに特徴的な「パーツ」を目印に免疫の仕組みを使って対抗しようとします。新型コロナウイルスでいえば、人間の細胞に感染する際に使用する「スパイクタンパク」と呼ばれる”とげとげ”パーツを目印に攻撃を開始します。

 mRNAワクチンを接種することで、人間のタンパク質工場では設計図(mRNA)を基にとげとげパーツだけを作り、作られてきたとげとげパーツに対して、練習をすることで本番に備えます。

予防接種の仕組みmRNAワクチン


ーーー実用化までが早すぎる!mRNAワクチンって本当に安全なの?

 これまでの考え方であれば、新型コロナウイルス自体を培養して弱らせたり、このとげとげパーツ自体を人工的に合成したりしてワクチンにする方法を利用することになります。

 しかしこの方法はとても時間がかかります。世界的なパンデミックが長期化すれば、皆さんの生活はもちろん、広く人類にとっても危険が大きいことは簡単に想像が出来ます。

 そこで、比較的短時間で作り出すことが出来るとげとげパーツの設計図だけを人工的に作成し、自分たちの体にとげとげパーツを作らせる「mRNAワクチン」という方法が人類史上初めて使用されました。

 人類史上初めてといいましたが、実は遺伝子を利用したワクチンの方法はこれまでも研究されてきました。2003年に発生し、新型コロナウイルスによく似た重症急性呼吸器症候群(SARS)を起こしたSARS-COV-1での基礎研究の蓄積により、今回、驚異的なスピードで開発が進みました。

 ウイルス自体の遺伝情報を解析するのは人類にとってそれほど難しくはありません。皆さんが利用している「PCR検査」も、採取した唾液や粘液に新型コロナウイルスの遺伝情報が含まれていた場合、それと同じウイルスの遺伝情報かどうかを判別しています。

 遺伝情報の解析技術の進歩によって、必要な部分の設計図を速やかに作り出すことに成功し、ワクチンとしては異例の速さで実用化に至ったというわけです。備えあれば憂いなし。「ワクチンの完成まで、時間が少なすぎて不安だ」という声が聞こえてきますが、人類の進歩の賜物がmRNAワクチンといっても過言ではありません。

ーーー「実用化までが早すぎる」という声とともに、「長期の安全性が確認されていない」という不安の声も多く聞きます。


 実用化されて1年余りで、誰一人としてそれ以上使ったことは無いので確かに長期の安全性は確認されていないのが事実です。

 しかし、科学的根拠に基づいて極めて安全であろうという予測を立てることは出来ます。科学は占いではありません。

 その根拠の一つとして、mRNAは非常に不安定な物質であるという事実が挙げられます。

 体内で必要なタンパク質が合成されたのち、速やかに分解されていきます。ファイザー社製ワクチンの保管には「-70℃の冷凍庫での保管が必要」と一時期、お茶の間を騒がせていました。

 注射器への充填後の使用期限は室温でたったの6時間です。体内でとげとげパーツをつくる役割を果たした主成分であるmRNAは速やかに体内から消えていき、長期に悪さをすることはとても考え難いです。

予防接種の仕組みmRNAワクチンリアル

 旭川市の集団接種会場では、薬剤師が温度管理をしっかりと行い、強い衝撃を加えないように調製し、接種する皆さんのもとへお届けしています。体に入るまでは丁寧に扱い、身体に入ったあとは速やかに消えていくため、長期的に体調に影響を与えるということは極めて考えにくいということになります。

ーーーまた、人間のDNAの組み換えが起こるのではないかと心配されている方もいらっしゃいます。

 基本的に

DNA→RNA、RNA→RNAを作り出すことは出来ても、

RNA→DNAが起こることはありません。

 ましてやRNAの中から必要な部分だけを切り出したmRNAからDNAやRNA本体を作り出すことも当然できません。このため、mRNAワクチンの接種によって新型コロナウイルス自体に感染するということや、ウイルスの遺伝情報が体に組み込まれる・組み換えられるということは絶対にあり得ません。

ーーーmRNAワクチンは効果があるの?

 新型コロナウイルスワクチンの発症予防に対する有効率は、極めて高いといわれています。よく比較されるインフルエンザウイルスワクチンの発症予防に対する有効率は約60%といわれていますが、新型コロナウイルスワクチンを2回接種(2週間以上経過)した方で約95%となっています。


ーーーワクチンの「発症予防に対する」有効性って効果とは違うの?

 そもそもワクチンの有効性はどのように判定するのでしょうか。
 まず、有効性には複数の考え方があります。

 一般的には発症予防に対する有効性を考えますが、その他にも感染防止に対する有効性や重症化予防に対する有効性など様々な有効性が考えられます。

 例えば、ワクチンを接種した集団A(100名)と接種していない集団B(100名)の検査陽性者を調べたところAでは5名、Bでは50名になったとします。この場合、二つの集団での発症率はそれぞれ5%と50%となり、このワクチンの接種によって発症率を50%から5%に低減できたと考えられ、このワクチンの発症予防に対する有効率は90%と表現します。

 ワクチンの主な目的は、発症予防そして重症化予防となります。感染を完全に予防できるものではありませんが、発症を抑えることが出来れば、感染機会を減らすことが出来、感染拡大を防ぐことも可能です。

 自分だけでなく、大切な家族や友人を守るためにワクチンの接種をお勧めします。

ーーー変異株への効果は?

 新型コロナウイルスは、感染を繰り返してその数を増やし、拡がっていきます。感染・増殖の途中で、コピーの仕方を間違えることがあります。間違ったコピーの結果、

  1.増殖が止まる(ウイルスが死んじゃう)
  2.感染力が無くなる
  3.感染力が増す
  4.病原性が下がる
  5.毒性が増す

などの、人間にとって良いことも悪いことも起きます。

 ウイルスは自分自身では増えられないので、感染した相手の具合を悪くさせずに、感染する力が強くなれば、より効率よく増えられるようになります。つまり、3と4の組み合わせの場合、感染拡大が起こりやすい変異株になります。

 新型コロナウイルスの変異株の中でも強い感染力を持つといわれているいわゆるデルタ株は、この3と4が組み合わさったウイルスにとって都合の良い変異型ウイルスと考えられます。

 逆に3と5の組み合わせのように感染力も高いが、病原性も高くなってしまうと、感染対象となる人間が亡くなりやすくなってしまうので、それ以上増えることは出来なくなり、ウイルスにとっては不利な変異といえます。

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ーーー変異ウイルスにワクチンは効くの?効かないなら接種しなくてもいい?

 こういった変異が起こった場合、変異したウイルスがワクチンの有効率を下げてしまうという現象が起こり得ます。先ほどの例でいくと、ウイルスが変異したことによりAでは20名、Bでは90名となった場合、発症率はそれぞれ20%、90%となり90%から20%に低減出来ているので、発症予防に対する有効率は約77%となります。

 一見、90%だった有効率が77%に下がったように見えますが、ワクチンを接種していないグループで90名発症するところ、ワクチン接種グループでは20名に抑えられています。

 デルタ株への変異でも同様のことが起こっていると考えられます。

 大切なのは、

どうせデルタに効かないなら打たない!

 ではなく

ワクチンを打っていてもすり抜けてくるような

ウイルスになってしまった!やばい!

と考え、予防接種の重要性が高まったものと認識することです。

 情報ひとつで捉え方や考え方、皆さんが大切にすることとワクチンの在り方が180度かわり、納得する答えも変化します。

 正しい情報を的確にゲットして、自分にとって後悔のない選択をしてください!


其の3】へつづく

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