見出し画像

赤ニットが勝負服だった頃

身体にフィットする真っ赤なニットを着て、女友達とラウンジやクラブで朝まで飲んでいた。
別に赤ニットが勝負服というわけではなかったけれど、赤ニットを着ている日は大体好みの男性と “いい勝負” ができて、楽しい夜が多かった。
だからといって毎回着ていたわけではないけれど、いつの間にか赤ニットを勝負服と認識するようになっていた。

先日、“女友達”に久しぶりに会って、当時の話になり、赤ニットがひどく懐かしくなった。

赤ニットが勝負服だった頃。
お互い結婚すると思っていた相手(正確には結婚すると思っていたのは自分ではなく相手)と別れて、「女友達最高~!!!!!」となっていた頃。
「やっぱり私には結婚なんて向いていない、1人で生きていく」となっていた頃。

“女友達”と会ったその日から、とにかく赤ニットが懐かしくて仕方なくなった。

当時着ていた赤ニットは、夫と結婚する前に捨てていた。
別に夫に申し訳ないとか、後ろめたい気持ちがあったわけではない。(いや、ちょっとあったかも)
夫の前でも着ていたし、捨てようか悩んでいたときには、夫にも「似合ってるのに」と言われた記憶がある。

確かにあの赤ニットは似合っていたし、思い出がたくさん詰まっているものでもあった。
着古したから捨てたと言えばそうだけれど、ある意味新しい人生を歩むための決別だったのかもしれない。

結婚してから、「遊びたくならないの?」と聞かれることがある。
その「遊び」が「男漁り」のことなら別にならないし、そういう意味で「遊び」と言うなら元々遊びたいと思って遊んでいない。

女友達と過ごす、刹那的な夜。
好みの男性たちとのやりとりを肴に、女友達とわいわいやるのが楽しかっただけだ。

あの頃に戻りたいわけではないけれど、また赤ニットを着てみたくなった。
新しい赤ニットを買おうと何件かお店を回り、何着か試着して結局購入したのはユ〇クロのグレーとベージュのニット。
真っ赤なニットも一応試着してみたけれど、なんか違うなって。

そうか、もうあの頃は終わったんだなって。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?