化け物共の夢の後先 /「りゅうおうのおしごと!(3)」を読んで、叫ばずにはいられなかった話。

りゅうおうのおしごと!3巻を読みました。

あらすじとかはこちらから。amazonに飛びます。

アニメで見た方もいるかもしれませんし、そも、原作を読んだ方もいらっしゃるかもしれませんね。

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一、二巻を一月に読んでからずっと、とある案件に掛かり切りになっており、買ったまま読めない状態が続いておりました。そして今日読んだわけです。

読み終わってから、わたしは、取り憑かれたように泣き叫びました。みっともなく洟を垂らして、嗚咽を漏らすどころか溢れさせるほかありませんでした。

それは、単にこの一冊が優れていたからじゃない。いや、勿論素晴らしい一冊ではありましたが、本編では目を潤ませるだけでした。

あぁ、努力は報われずとも、好きの気持ちはすべてに通ずるのだなと。原動力として尊くあるのだなと。額面通りに受け取って、「あとがきにかえて」を読みました。

一生懸命書いた本が売れなかったら落ち込むし、役に自分より若い新人なんかが描いた本がヒットしてると嫉妬するし、その本の内容に稼働してしまったりすると「もう俺がラノベ書く意味とか別にないよね?」と死にたくなったりもするし……我ながら小さな人間だと思いますが、そう感じてしまう自分がいます。

それは、プロとしてアニメ化まで漕ぎつけた——それも、2本も——人間が言う言葉として余りにも重くて。

凡夫の自分が感じる閉塞感を、そんなトッププロだって思うのだなぁと、烏滸がましくも共感して、巻末のショートショートも読んで。裏の折り返しをふと見ると。

GA文庫 白鳥士郎の本
りゅうおうのおしごと!
らじかるエレメンツ
蒼海ガールズ!
のうりん

「こういうのが受けそうだな」と思って書いたことはあっても、「これが書きたい!」と思って書いたことはなかったような気がします。
今までは。
この作品は、「これが書きたい!」と心の底から思って書いた作品です。

「化け物め」

我ながら、毒々しい声でした。

余りにも、余りにも。

「化け物め。化け物め」

呪詛、あるいは強訴。告発。恐怖。なんとでも表題をつけられる感情で、なんとも形容しがたいものでしたけれど。やはり一番近いのは、畏怖。

だってそうでしょう。そんな、そんな感情で、「大学院の二年生から、お金を稼ぎたくて、ラノベ作家としては遅いくらい」なんてスタートで。四シリーズも刊行して、うち二シリーズはアニメ化して、何年作家やってるんだ、あんた(素無知)。

「化け物め。化け物め!化け物め!!」

大学院の二年生。今の自分と同い年(まぁ、その表現で言えばもう卒業する春なんだけど)。そんなスタートから、そんなところへ?石にかじりついてでも、なんて表現は過激にしたって、文面をそのまま受け取れば、激情とか執念は薄いように感じる。

もちろん、先生には先生の苦労苦悶苦難苦痛があったんだろうけど。情熱も感情もあったんだろうけど。才能と言われる何かが、あったんだろうけど。

あまりに怖ろしかった。叫ぶしかなかった。泣いて、叫んで、みっともなく洟を垂らして、吠えて、畏れるしかなかった。

そうして、視線を上げると、そこには沢山の漫画と小説が並んでいて。

「化け物共め!化け物共め!化け物共め!化け物共め!化け物共め!」

俺は逃げた。攻撃して、降伏した。

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いつ頃からだったか、書店というモノがとても恐ろしくなった。

この本一冊には、作家が一人いて。

作家一人には担当がひとりか、二人ついて。

担当一人には、何人もの先生と志望者がいて。

その志望者の後ろには何倍、何十倍、いや何万倍の死亡者がいるのだろう?

そういう過酷な戦争の果てのモノを、本屋というモノは、何百、何千冊並べているのだろう?

眩暈がして、今も時々、本棚に挟まれて吐き気を催すことがある。

こんな数万分の一に、さぁ、自分はなれるのだろうか?


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りゅうおうのおしごと!3巻には、三人の「無才」が登場します。

彼らがどういう末路を辿ったかは、実際に読んでいただくとして。

翻って自分だ。無才なる、高梨蒼。

果たして、自分は彼らのように「好きだから挑むのだ」と、「好きだから筆を執るのだ」と、どこまで言い続けられる?言い張っていられる?

棋士の世界も、文字書きの世界も、いや、どんな世界もきっと同じ。勝ったやつが正義。そして勝つには戦うしかない。

趣味で楽しくやるだけなら、実際問題、今の時代は苦しみは薄い。少なくとも、noteとか色々サイトもあるし、物理同人書籍作ったっていいんだし。

だけど、肥大化して歪んで、狂って夢を見た自我は、もっと高くと叫んでいる。その俺を見ている僕は、そんなものは無理だ、穏やかに趣味だけで楽しくやろうと苦笑している。わたしは、こんな泣き言を書いている暇があったら晩飯を作って明日に備えろと言っていて、俺はそんなものはいらないから徹夜してでも小説を書けと言っている。

三人寄れば文殊の知恵、どころか、全会一致で泣いている。苦痛。不安。嫉妬。自己否定。欲望。絶望。あらゆる感情のごった煮。

化け物になる覚悟はあるか?

一般的な「お仕事」をしながらだろうが、特別な教育がなかろうが、小説家として名を立てる人間は少なくない——むしろそちらが多数派なくらい——のだから、言い訳はできない。してはいけない。

化け物になる覚悟はあるか?

化け物共の刻み付けて創り上げた夢に、追いつく覚悟はあるか?

化け物共の跋扈する世界で、旗を掲げて先を歩く覚悟はあるか?

そのために、血反吐を吐く覚悟はあるか?

あるいは、そんな大きな、分不相応な夢を捨てる覚悟は?

本当にしたいことは、なんだ?

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これを書こうが書くまいが、時間は無慈悲に過ぎていって、夜は更けていく。

今の業務は、あほな新人には大きすぎるほど大きくて、ずっと胃が痛くて。逃げ出したくて。

分と器を知れば、現状に納得して、虚ろな目で生きていられるのかもしれないのに。自分は大器じゃないとわかっていて、尚もそれさえも出来てない。

「とある案件」だってまだ片付いちゃいない。

これを書いている今聞いている音楽だって、作詞家と作曲家と歌手と、そのほか色んな人とが、何千倍もの志望した死亡者の上で創り上げたものだ。

そう自覚すれば、あぁなんと恐ろしいこと。

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虚ろな目で、自分はどこへ往くのだろう。逝くのだろう。行くのだろう。

誰かに灯りと居場所と答えをねだっても、納得できるわけもないだろう。

自信というモノを得るためには成功か、挑戦が必要で、挑戦をするには、自身が必要で、それはデッドロック。どうしようもない。

どうしようもないならば、どうしたものだろう。

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上手く纏められないので、今夜はここまで。


化け物共の吐いた火が創り出した暗闇の中で
2018年3月4日
高梨蒼

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