左右
江ノ島の弁天橋で「それぞれどちら側にいればしっくりくるか」を試しあった僕ら。
僕は人生で一度も手を繋いだことがなかった。
僕も君も右利きで、利き手を塞がれるのがお互い嫌だったね。
左側を歩かないと危ないから、と言って強引に僕が右手を取ると、君は不服そうにしていたね。
それから数年。
「夫が左で、妻が右ね。書類にまで右側を強制されると思わなかった。」
「それを知っていたから、あのときああしたんだよ。」
君はあのときと変わらず、また不服そうにして、
名前を書き始めた。
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