ぶっちゃけ妊活日記 vol.7 / 旦那さんの検査/18禁
*注意 / 今回は18禁的な内容なので、あしからず…そして、全ての文章が無料で読めますが、最後一部のみ有料ゾーンがあります。
さっきまでの楽しいモーニングが、急な静寂に包まれた。
2人の視線は完全にとある文字に集中している 。旦那さんは食べようとしていたプチトマトをポロっと手元から落とした。
テーブルの真ん中に用紙を置いて、各自熟読タイムに入る。
〜精液検査のご案内〜
この検査は精液中の精子の濃度、運動性、形態などを調べます。
下記の注意事項をよくお読みください。
1. 禁欲期間(2日以上7日以内)が必須です。
禁欲生活は短すぎても、長すぎても正確な検査が行えませんので、ご注意ください。検査事前に採取し、3時間以内に提出ください。
2. 直前は手を石鹸でよく洗ってください。
ゴムなどの使用はせず、直接指定の容器の中に入れてください。
容器は採精時のみ開封してください。
3. 持参時の注意
容器は完全にアルミホイルで包み、上下転倒にご注意ください。
体温と同じくらいの温度になるようにお持ちください。
ホカロンなどは温め過ぎになりますので使用しないでください。
一通り読み終わると…
わたし 「…やっぱり緊張する?」
旦那さん 「病院の個室だったら緊張すると思ったけど、自宅から持参するし、きっと大丈夫だと思う…(ゴクリ)」
大学生の頃、深夜テレビで放送されたSEX AND THE CITYを見ていた。エピソード1は1988年に制作されているが、キャリー、サマンサ、ミランダ、シャーロットの軽快な会話の中には「着床、体外受精、不妊治療、養子縁組」などのキーワードや、エピソードがたくさん出てくる。
当時は全くピンときていなかったが、突然ある場面が頭をよぎった。それはシャーロットと夫のトレイのクリニックの一場面。
小さな個室にトレイは小さなカップを片手に持って、シャツとトランクス姿で困っていると、シャーロットが心配してアダルト雑誌を持って駆けつける。
トレイは緊張して全然できないと嘆いていたが、シャーロットがどんどんその気にさせて無事に任務完了…
当時のわたしは「ワーオ!」という低レベルの感想程度でしかなかったが、今になって改めて見返すと、とても興味深い&共感しかない。しかも、このドラマは1988年〜2004年に制作されている。ということは、日本と不妊に関する感覚や認識の差が20年以上もの隔たりがあるということだ。
「オーマイガ!」
なんて言っている場合ではない。
問題は旦那さんである。
そして、問題は…どこでカップ片手に任務完了するのか?である。
通っているクリニックに男性用の個室が用意されているのかと思っていたので、まさか自宅から持参するとは思っていなかったのだ。うちの扉は引き戸だし、古い家だから、音とか全部オープン。
一体、うちのどこが個室になり得るのだろうか?
今年に入って最大の難関がやってきた。
*注意 / ここから先は真面目に2人でどうやって任務を完了するべきか、真剣に会話をしています。
わたし 「これはあれかな…シャーロット作戦かな…」
旦那さん「え?シャーロットって何?」
わたし 「こうなったら、エロ本を多摩川から探してくるしかねぇな…」
旦那さん「え、ちょっと待って。なんで多摩川なの?」
わたし 「え?河川敷に捨ててあるイメージだよ、中学の頃の男子が騒いでた記憶を頼りに川に行くの(笑)」
旦那さん「イメージが古いよ(笑) 今はネットの時代だから」
わたし 「そっか!あとは…任務はどこで…えーと、どうしよ…(ボソボソ)」
旦那さん「うーん、お風呂とかどうかな?」
わたし 「音漏れ防止にシャワーを出しっぱなしにしておくとか?」
旦那さん「あ、水がカップに入ったらマズいよね?」
わたし 「確かに…!じゃ、リビングのテレビを大音量にしておくのは?」
旦那さん「うーん、ご近所迷惑になっちゃうね(汗)」
わたし 「えーと、あれ?わたしはどこで待機しておけばいいのかな…(ボソボソ)」
旦那さん「うーん…あ!お風呂でシャワー出して入っててほしいな」
わたし 「あ、それ、いいね!じゃ、それで!」
ポチッ
わたしはお風呂の湯沸かしボタンを押してから、朝食の片付けをした。さっきの作戦がベストなのかどうかさえ、もはや考える余裕がない。後から冷静に考えれば、別にお風呂に浸からなくてもいいし、お風呂場でシャワー出して、ただ待機すればよかったと思う。
でも、今、もう一度言うが、心に余裕がないのである。
一方、旦那さんはカップを取り出して、再び用紙を注意深く眺めている。さっきまでステキな朝だったのに、妙な緊張感に包まれた。
お皿を洗い終わる頃、ようやくお湯が沸くメロディが流れた。
わたし 「じゃ、また…あとでね」
旦那さん「終わったら、呼びに行くね」
わたし 「う、うん、がんばってね!」
旦那さん「I'll be back…!」
この会話もキメ台詞もよくわからないテンションであるが、2人はとにかく真剣だった。
リビングとお風呂に繋がる廊下のドアを旦那さんがスッと静かに閉めた。
そして、わたしはいそいそとお風呂へ向かうと、最初にシャワーを全開にして流した。
とにかく、大きめのサウンドがいますぐにほしい!
ザザァーーーーー!!!!
お風呂にザブンと入ると、YoutubeでSUSHI RAMENを見始めた。賑やかな動画を見ていると、幾分か気が紛れる気がなんとなくする。
うーん、大丈夫かな…
じゅ、順調かな…
リビングにいるのかな…ど、どこで…えーと…
ところで、わたしたち夫婦はとても仲良しである。
だがしかし…そんな2人でも、ここから先は立ち入ってはいけない気がして、想像の蓋をそっと閉じた。
それから無表情でYoutubeを見てしばらくすると、コンコンとお風呂のドアがノックされた。ガチャッと旦那さんがとびきりの笑顔で現れ、片手にはアルミホイルに包まれたカップを握り締めている。
旦那さん「終わったよ!(眩しい笑顔)」
わたし 「よよよよよよよよよかったね!」
旦那さん「じゃーん!メタルスライムにしてみました!」
わたし 「え?」
旦那さんが掌に乗せると、確かにカップの天辺がとんがっている。清々しい表情をして、アルミホイルの造形物を得意げにしている様子を見ると、あぁ、やっぱり男性の心はいつだって中学生なんだな…となぜかここで悟りの境地に達した。
何はともあれ、2人はミッションインポッシブルをポッシブルしたのである。
めでたし、めでたし
↓
実際にクリニックでもらったカップと、
メタルスライムの写真は一番下に掲載。
全然生々しい写真ではないけれど、見たくない人の配慮も合わせて、
ここでは袋とじ感覚の有料に設定…あしからず。
banner illustration by サタケシュンスケさん
いよいよ本格的に不妊治療を始めることになったので、記録として不定期でエッセイ的妊活話をしたいと思います。不妊治療ってどうしてもデリケートな話になりがちだけれど、想いや出来事をシェアして、悩み考えているnoterさんと繋がるきっかけになれたらいいなと思っています。
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