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NHK朝ドラ「舞いあがれ!」で飛行機を知ろう

2022年10月から始まったNHKの朝の連続テレビ小説「舞いあがれ!」では、旅客機のパイロットをめざして航空学校で奮闘する女性を描いています。

ヒロイン岩倉舞が日夜フライト訓練で苦労しているさまが描かれていますが、航空関係の専門用語が多すぎてそもそも何をしているのかピンとこない、ということはないでしょうか。

番組のホームページに飛行機関連の解説でもあればわかりやすいのかもしれませんが、何もなさそうなので、少しでも理解の助けになるかもということで簡単な解説を作ってみました。

とはいっても、筆者も飛行機を操縦した経験はなく、少し調べて知っているというだけなので、あまり正確ではないところもあるかもしれませんが、まあこんな感じなのではないかということでご理解いただければと思います。

【2023.5.28】
いろいろと少し修正しました。

【2023.2.18】

いろいろと少し修正しました。

【2022.12.13】

ドラマの訓練機の機種がCirrus SR22ではなくSR20であることがわかりましたので、全体的に修正しました。


航空学校って?

ヒロイン舞が通っている「航空学校」のモデルは、独立行政法人 航空大学校です。

※石川県にある「日本航空大学校」とは異なります。

航空輸送の中枢を担う質の高いパイロットを計画的に養成するために、「航空機の操縦に関する学科及び技能を教授し、航空機の操縦に従事する者を養成することにより、安定的な航空輸送の確保を図ることを目的とする」ために昭和29年に設立されました。戦後すぐの時期、航空関係の施設も研究も何もかも米軍に接収されていたさなか、復興のために日本人のパイロットの育成が求められていたのでしょう。

全寮制で、学生はまず宮崎本校で5ヶ月の学科課程を受けたあと、帯広分校での6ヶ月のフライト課程に進み、自家用操縦士程度の技能を身につけて、そのあと宮崎本校でのフライト課程で事業用操縦士程度の技能、最後に仙台分校でフライト課程を履修して卒業、というのを2年間かけて行うそうです。卒業生には現役のエアラインのパイロットが多く出ているそうです。このへんのところはドラマの航空学校でもおおむねそれに沿った設定になっていますね。

訓練機

パイロット初等訓練用の飛行機として有名なのがセスナ社のCessna 172などの小型機(いわゆるセスナ機)ですが、ドラマに出てくる訓練機はセスナ機ではなくシーラス社のCirrus SR20という小型機です。航空大学校に訓練機として配備されているのはSR22ですが、ドラマではジャパン・ジェネラル・アビエーション・サービスという民間操縦士訓練学校を運営する会社が所有するSR20を使っています。


ドラマの訓練機と同型のCirrus SR20


SR20外観図
SR20内部構成図

SR20のコクピットの中身は、AFM/POH(Airplane Flight Manual/Pilot's Operating Handbook)によれば、こんな感じです。


SR20コクピット
1 パラシュートシステム起動ハンドルカバー 2 磁気コンパス 3 マルチファンクションディスプレイ(MFD) 4 外気吹出口 5 エアコン温度・換気調節つまみ 6 コントロールヨーク 7 エアコン吹出口 8 ラダーペダル 9 フラップ調節レバーとフラップ位置表示ランプ 10 アームレスト 11 オーディオ&USBジャック 12 エンジン&フューエルシステムコントロール 13 左サイドコントロール(サーキットブレーカーパネル、ELT(緊急位置送信機)リモートスイッチ、オルタネートスタティックソース) 14 アビオニクスパネル 15 パーキングブレーキ 16 フライトインストルメントパネル 17 ボルスタースイッチパネル 18 スタート/イグニッションキースイッチ 19 プライマリーフライトディスプレイ(PFD) 20 オーバーヘッドライト&スイッチ 

上図の6がいわゆる操縦桿(コントロールヨーク control yoke)と言われるものです。

操縦桿は、いわゆる操縦輪タイプ(両手で持つ形のもの)が有名ですが、SR20の操縦桿はジョイスティックのように1本の棒の形になっていて、片手で持って操作するようになっています。

操縦桿は左の座席と右の座席に1本ずつついていて、どちらか片方を動かすともう片方もそれに連動して同じ動きをするようになっています。飛行機は普通、左の座席に機長が座り、右の座席に副操縦士が座って、適宜操縦を交代できるようになっています。訓練機の場合、左の座席に訓練生が、右の座席に教官が座ります。

飛行機が飛んでいるときに操縦桿を手前に引くと、飛行機の機首 (nose) が上がり、奥に押すと機首が下がります。機首の上げ下げの動きのことをピッチ (pitch) といいます。ピッチをコントロールするために、飛行機の水平尾翼のところに小さな羽根がついていて上下に動くようになっています。これをエレベーター (elevator) といいます。操縦桿を引いたり押したりすることで、エレベーターを上下させ、飛行機の機首の上げ下げを行います。

エレベーターは水平尾翼にあります
操縦桿とエレベーターの動き
(操縦桿を引くとエレベーターが上に動いて機首が上に、操縦桿を押すとエレベーターが下に動いて機首が下に動く)

飛行機が飛んでいるときに操縦桿を左に倒すと、飛行機が左を下にして傾き、右に倒すと右を下にして傾きます。飛行機の傾きの動きのことをバンク (bank) あるいはロール (roll) といいます。ロールをコントロールするために、飛行機の主翼の後ろ、胴体から遠いところに小さな羽根がついています。これをエルロン (aileron) といいます。操縦桿を左右に動かすことで、エルロンを上下させ、飛行機を左右に傾けます。

エルロンは主翼にあります
操縦桿とエルロンの動き
(操縦桿を左に倒すと左翼側のエルロンが上に上がり右翼側のエルロンが下に下がって左旋回し、右に倒すとその逆の動きで右旋回する)

上図8のペダルをラダーペダル (rudder pedals) といいます。ラダーペダルは左右の座席にそれぞれ2つずつついていて、どちらか片方の座席のペダルを動かすともう片方の座席のペダルもそれに連動して同じ動きをするようになっています。

右側のラダーペダルを踏むと、飛行機が上下を軸に右に回転し、左側のラダーペダルを踏むと左に回転します。飛行機の回転の動きのことをヨー (yaw) といいます。ヨーをコントロールするために、飛行機の垂直尾翼のところに小さな羽根がついています。これをラダー (rudder) といいます。ラダーペダルを踏むことで、ラダーを左右に動かし、飛行機を左右に回転させます。

ラダーは垂直尾翼にあります
ラダーペダルとラダーの動き

こちらのリンクがわかりやすいです。
https://howthingsfly.si.edu/sites/default/files/2020-06/pitch-roll-yaw_0.gif

ピッチ、ロール、ヨーの三次元の動きをコントロールすることで、飛行機を操縦します。エレベーター、エルロン、ラダーのことを一般にフライトコントロール (flight control) といいます。

エレベーターでピッチを、エルロンでロールを、ラダーでヨーをコントロールし、飛行機を三次元的に制御する

飛行機はどうやって飛んでるの?

飛行機は、推力 (thrust)、抗力 (drag)、揚力 (lift)、重力 (weight) の4つの力で飛んでいます。

推力、抗力、揚力、重力の関係

推力 (thrust):飛行機を前に進める力。飛行機の前についているプロペラを回すことで生じる。
抗力 (drag):飛行機を後ろに引っ張る力。空気抵抗など。
揚力 (lift):翼の上下に当たった空気の流れに圧力差が生じることで飛行機が上に浮かび上がる力。
重力 (weight):飛行機の機体や搭乗員、燃料、搭載品などすべての重さ。飛行機を下に引っ張る力。

この4つの力がつりあっているとき、飛行機は一定の速度で飛ぶことができます。

この状態から推力を上げると、飛行機は前に向かって加速し、速度が速くなります。抗力が上がると、飛行機は減速し、速度が遅くなります。揚力を上げると、飛行機は上に上がっていき、揚力を下げると、飛行機は下に下がっていきます(重力は上げられないので)。

飛行機はなぜ浮かび上がるのか?

推力、抗力、重力はなんとなくピンとくると思いますが、揚力、つまり浮かび上がる力はなぜ発生するのでしょうか?

翼型 (airfoil) に前から空気をあてると、翼型の上に回る空気と、下に回る空気に分かれます。上に回る空気のほうが下に回る空気より速度が速くなるので、ベルヌーイの定理 (Bernoulli's Principle) により、上に回る空気のほうが下に回る空気より気圧が低くなります。そのため、気圧の低い上のほうに翼型が吸い上げられる、というしくみです。これが揚力です。

飛行機が翼を広げて前に進むと、翼に空気があたり、それが揚力を生み出して浮かび上がるという仕組みです。

翼を通る空気の速度が速いほど、揚力は増えます(速度の二乗に比例します)。

飛行機の速度、高度のコントロール

上記のコクピット図の12の「エンジン&フューエルシステムコントロール」の詳解図を示します。

エンジン&フューエルシステムコントロール
7 オルタネートエアーコントロール 8 パワーレバー 9 フリクションコントロール 10 ミクスチャーコントロール

レバーを取り除いて上から見た図が以下です。

エンジン&フューエルコントロールシステム(レバーを除いた部分)

上図の8の、パワーレバー (power lever) を奥のMAX方向に動かしてパワーを上げると、自動車でいうとアクセルを踏んだ状態となり、プロペラが速く回って推力が増します。他の力が同じ場合、飛行機は加速します。また他に何もしないと、主翼に当たる風の速度が増して揚力が増えるので、飛行機の高度が上がっていきます。

パワーレバーを手前のIDLE方向に動かしてパワーを下げると、自動車でいうとアクセルをゆるめた状態となり、プロペラの回転が遅くなって推力が減るので、他の力が同じ場合、飛行機は減速します。他に何もしないと、主翼に当たる風の速度が減って揚力が減るので、重力がまさり、飛行機の高度が下がっていきます。

操縦桿を引いてピッチを上げると、揚力が増えるので高度が上がる方向に動きますが、揚力は斜め後ろにかかることになるので、その力の後ろ向き成分が抗力の一部となり、抗力が増えるので、速度が減速します。

操縦桿を押してピッチを下げると、揚力が減るので高度が下がる方向に動きますが、抗力も減るので、速度は増加します。

ざっくりまとめると、

  • 速度を上げるには:パワーを上げる、ピッチを下げる

  • 速度を下げるには:パワーを下げる、ピッチを上げる

  • 高度を上げるには:パワーを上げる、ピッチを上げる

  • 高度を下げるには:パワーを下げる、ピッチを下げる

操作をすればいいことになります。

失速

機首を上げすぎると、飛行機は失速 (stall) します。これは、飛行機の主翼が前から受ける風と主翼とのなす角(迎え角 angle of attack)が一定以上になると主翼のまわりに空気を流しきれなくなり主翼から空気が剥がれ落ちるためです。

迎え角がいくら以上になると失速するかは、飛行機によって決まっています。それ以上の迎え角まで機首上げすると、どれだけ速度が出ていてもその飛行機は失速します。失速したら、すみやかに機首を戻すなどして対処しないと、機首が上を向いたまま墜落してしまうことになります。

飛行機の旋回

操縦桿を左に倒すと、飛行機は左を下にして傾き(バンク)ます。そうすると、揚力が真上から左上に傾くので、左側成分の力が発生し、飛行機は左に旋回していきます。操縦桿を右に倒すとその逆の動きで、飛行機は右に旋回していきます。

ただし、揚力が変わらないとき、飛行機が左右に傾くと、揚力の垂直成分の力が減少しますが、重力はずっと変わらないため、揚力の垂直成分は重力より小さくなります。そのため、飛行機は下に引っ張られ、高度が下がります。高度を変えないように旋回するには、旋回と同時にパワーを上げたり、ピッチを上げたりしなければなりません。

飛行機がバンクすると、左右の翼で揚力のかかり方が変わってきます。高いほうの主翼のほうが揚力が大きくなり、それと同時に、後ろ向きに引っ張られる抗力も大きくなるので、旋回方向と逆向きに飛行機が引っ張られて回転する(逆ヨー adverse yaw)ことになります。そのため、旋回するときは、旋回方向のラダーを踏み込んで逆ヨーを打ち消さなければなりません。

このように、旋回するときには、エルロン、エレベーター、ラダーを適切に組み合わせて使わなければなりません。これを三舵の調和 (coordinated flight) といいます。

旋回時の揚力差と逆ヨー

旋回すると、飛行機の回転方向と逆方向に遠心力 (centrifugal force) がかかり、遠心力と重力を合わせた力 (resultant load) が搭乗員の床方向にかかります。これはバンク角が少ないと微々たるものですが、バンク角が大きくなるほど増えていき、そのうち重力を超える力でシートに押し付けられることになります(重力の2倍の力がかかることを「2Gの力がかかる」と言います)。

飛行機をバンクさせると遠心力と重力との合成力 (resultant load) がシートの向きにかかります。合成力はバンク角が急になるほど大きくなります。
飛行機を60度バンクさせると2Gの力がかかります。
80度バンクさせると1G/cos80°=5.8Gもの力がかかります。

ドラマ中で、矢野学生がきつそうな顔をして急旋回させていたのは、シートに激しく押しつけられる力に耐えていたからです。

ちなみにラダーペダルを踏んだだけでは、飛行機の機首が回転するだけで横向きに力が発生しないので、旋回しません。首を横に向けたまま同じ方向を飛び続けます。

ディスプレイ

SR20のコクピットには、ディスプレイが2つ並んでいます。左側のディスプレイがプライマリーフライトディスプレイ (Primary Flight Display: PFD) で、右側のディスプレイがマルチファンクションディスプレイ (Multi Function Display: MFD) です。いまどきの飛行機のコクピットにはたいていPFDとMFDの2種類の液晶画面に情報が表示されるようになっています。

プライマリーフライトディスプレイ(PFD)とマルチファンクションディスプレイ(MFD)
1 ソフトキー 2 プライマリーフライトディスプレイ(PFD) 3 PFD側画面拡大・縮小設定つまみ 4 気圧補正ノブ 5 COMトランシーバー選局ダイヤル 6 COM周波数トランスファー(&121.5 エマージェンシー選局)キー 7 COM音量設定・切 8 ディスプレイバックアップモード選択ボタン 9 NAV&ID音量設定 10 NAV周波数トランスファー 11 NAVトランシーバー選局ダイヤル 12 マルチファンクションディスプレイ(MFD) 13 PFD側ダイレクト・トゥ・コースキー 14 PFD側フライトプランページキー 15 PFD側クリア/キャンセルキー 16 PFD側フライトマネジメントシステム 17 GMC707オートパイロットモードコントローラー 18 オーディオパネル 19 PFD側エンターキー 20 PFD側プロシージャキー 21 PFD側メニューキー

これらは画面周りのつまみやソフトキー、座席真ん中のアビオニクスパネル内にあるボタンやつまみを操作すると設定変更できます。

フライトマネジメントシステムキーボード
22 MFD側クリア/キャンセルキー 23 MFD側フライトプランページキー 24 MFD側ダイレクト・トゥ・コースキー 25 MFD側メニューキー 26 MFD側プロシージャキー 27 MFD側エンターキー 28 COM選局モード選択キー 29 FMSモード選択ボタン 30 トランスポンダーモード選択キー 31 NAV選局モード選択キー 32 NAV画面拡大・縮小設定つまみ 33 周波数トランスファーキー(121.5MHz選局)34 MFD側コース/トランスポンダー/NAV/COMコントロール 35 英数字キー 36 バックスペースキー 37 スペースキー 38 マルチファンクションノブ 39 コース選択キー(HSI) 40 IDENTキー 41 ホームキー
GMC707オートパイロットモードコントローラー
1 ヘディング(針路)設定つまみ 3 高度設定つまみ 4 ヘディング選択モード選択キー 5 ナビゲーションモード選択キー 6 アプローチモード選択キー 7 オートパイロットON/OFFキー 8 ウイングレベラーON/OFFキー 9 フライトディレクター 10 フライトレベル変更キー 11 ピッチ設定ホイール 12 VNV(Vertical Navigation Mode)選択キー 13 高度固定キー 14 昇降速度モード選択キー

PFD側には下のような映像が表示されます(ドラマと完全に同じではありませんが、だいたいこんな感じです)。

プライマリーフライトディスプレイ

上半分の画像の背景が、青と茶色で上下に分かれています。これはコクピットから見た空と地面をイメージしていて、地平線の位置と傾きで飛行機の姿勢を示しています。これを水平儀あるいは姿勢指示器 (attitude indicator) といいます。

地平線が斜めになっていれば、飛行機がバンクして(傾いて)いることを示します。バンク角は上の白い小さい三角と下の白い三角とのずれを見て知ることができます。

飛行機が左に15°バンクしている状態の姿勢指示器の見え方

地平線が中央の黄色い三角よりも上にあれば、飛行機の機首が下を向いていることを示し、黄色い三角よりも下に地平線があれば上を向いていることを示します。

飛行機の機首が上がっている状態(1°〜5°)の姿勢指示器の見え方

左座席側、PFDの下方のフライトインストルメントパネルにもPFDが壊れたとき用の予備として姿勢指示器がついています。

姿勢指示器の左に

このような縦の棒があり、そこに「120」などと数字が表示されています。これは対気速度計 (air speed indicator: ASI) で、飛行機のエアスピード (air speed) を表示します。エアスピードは対気速度ともいい、飛行機が空気を切り裂いて進む速度を空気を基準にしたもので、飛行機の速度といえば普通はエアスピードをいいます。単位はノット (knot) です。1ノットとは時速1海里をあらわします。1海里 (nautical mile: nm) とは距離の単位のことで、地球の緯度1度の長さを60等分した長さ(約1.85km)になります。航空の世界ではnmのことを「マイル」といいます。「○○マイル」といえば○○nmを表します。一般人が使うマイル(1マイル=1.609km)のことをstatute mile (sm) といいます。1nm = 1.15smです。

エアスピードは地面を基準にした対地速度(ground speed)とは異なります。たとえばエアスピード100ノットで飛んでいても、向かい風を10ノット受けていれば、その飛行機の対地速度は90ノットになります。

姿勢指示器の右にも

このように縦の棒があり、そこに「4000」と数字が表示されています。これは高度計 (altimeter) で、単位はフィート (feet) です。1フィート=約0.3メートルです。

高度計の右にあるのは昇降計あるいは垂直速度計 (vertical speed indicator: VSI) で、飛行機の上昇、降下の速さ(上昇率、降下率)を示します。単位は1000フィート/分 (feet per minute: fpm) です。上昇していると上を指し、降下していると下を指します。高度が変わらない状態の飛行を水平飛行 (level flight) といいます。

上昇率200fpmで上昇中
降下率200fpmで降下中
水平飛行中
(昇降計の数字は消える)

対気速度計、高度計、昇降計は、飛行機の主翼のところについているピトー管 (pitot tube) という小さな吸気口から取り入れた空気の気圧を測って計算しています。

また左座席側、PFDの下方のフライトインストルメントパネルにも独立して対気速度計や高度計がついています。

針路計とHSI

画面下半分のコンパスのような形をした計器の上に「270°」と数字が書かれているのは針路計 (heading indicator) といい、飛行機がいま機首を向けている方角(針路 (heading))を北から時計回りに角度で表したものです。針路270°であれば西を指します。

コンパスのような形をした計器はHSI (Horizontal Situation Indicator) といい、地上に設置してある電波灯台であるVOR (VHF Omnidirectional Range: 超短波全方向式無線標識) からの電波を受信し、そこから自機までの方位や、設定したコースからのずれ (deviation) などの情報を知ることができます。これを使うと目的地までのおおよその方角や距離を知ることができ、野外飛行 (cross-country flight) などに役立ちます。

右側のほうのディスプレイはマルチファンクションディスプレイ (Multifunction Display: MFD) です。

マルチファンクションディスプレイ(MFD)の表示例

MFDには、上図のようにムービングマップディスプレイ(カーナビのようなGPSの地図)や、左側にエンジン回転数を示すタコメーター (tachometer) やシリンダーヘッド温度計 (cylinder head thermometer: CHT) や排気ガス温度計 (exhaust gas thermometer: EGT)、エンジンオイルの油温計や油圧計、吸気圧力計など、エンジン内部の状態を示す計器(エンジンインストルメント)が表示されます。

ドラマで離陸時のプロシージャーの中で「エンジンインストルメント、チェック」と言っていますが、おそらくこの画面を見て正しく動いているか確認しているのでしょう。

滑走路

航空学校の帯広分校は、とかち帯広空港の敷地内にあります。とかち帯広空港の滑走路 (runway) はこのような配置になっています。

とかち帯広空港

滑走路の進入端(スレッショルド (threshold))のところには、このように数字が書かれています。

Runway 35

この「35」とは、磁北(※)を基準に時計回りに350度の方角、つまり北から10度だけ左を向いている滑走路であるということを示しています。東を向いていれば「9」(「09」のこともある)南を向いていれば「18」西を向いていれば「27」北を向いていれば「36」と書かれます。

※「北」といっても、地球の自転の軸(地軸)の北(真北 true north)と、磁石になっている地球のN極(磁北 magnetic north)とは少しずれていて、帯広では磁北は真北より西に9度ずれています。

反対側の進入端はこのようになっています。

Runway 17

当然ですがさきほどと180度逆の、350-180=170度の方角を向いているので、滑走路の端には「17」と書かれています。

離着陸するときに350度の向き(ランウェイ35)に飛ぶか、170度の向き(ランウェイ17)に飛ぶかは、その時の風向きなどによって管制官 (air traffic controller: ATC) から指示があります。普通は飛行機が向かい風になるように指示してくれます。

航空管制

管制塔のある空港 (towered airport) にいる飛行機や、そのような空港の近くを飛んでいる飛行機は、その空港の管制塔(タワー)にいる管制官 (air traffic controller: ATC) と交信し、その管制指示に従わなければなりません。離陸 (takeoff)、着陸 (landing)、離陸のための地上滑走や着陸後の地上滑走(タキシング taxiing)のときには、パイロットはATCにその旨のリクエスト(要求)を出して、管制官から管制承認・許可 (clearance) を得なければならず、自由気ままに動いたり飛んだりすることはできません。

帯広空港周辺の空域、周波数

帯広空港の管制塔と交信するには、機内の無線機(COM)をObihiro (RJCB) TWRと書いてあるところの周波数(118.7MHz)に合わせ、無線で

「相手側の名称、自機のコールサイン、場所、メッセージ」

を伝えます。たとえば

"Obihiro Tower, Juliett Alfa Zero One Tango Charlie, ten miles north, request landing runway one seven."

と言えば、「帯広空港管制塔へ、こちらJA01TC、10マイル北にいます。滑走路17から着陸希望」という意味になります。

コールサインは、JALやANAなどのエアラインなら航空会社名+便名(例:JAL12便ならJapan Air One Two、ANA34便ならAll Nippon Three Four)、訓練機のような飛行機であれば機体番号になります。機体番号とは飛行機を識別するための番号で、日本籍の飛行機であればJA、アメリカ籍ならNで始まる一意の文字列になります。ドラマで舞たちが乗る訓練機は「JA01TC」が機体番号です。

ATCと無線で交信するとき、「ジェー」とか「エー」とか言うと聞き間違えられやすいので、アルファベットは「A」なら「アルファ (Alfa)」、「B」は「ブラボー (Bravo)」、「C」は「チャーリー (Charlie)」のように言い換えます。これをフォネティックコード (phonetic code) といいます。「J」は「ジュリエット (Juliett)」、「T」は「タンゴ (Tango)」です。なので「JA01TC」は「ジュリエット・アルファ・ゼロ・ワン・タンゴ・チャーリー」と伝えます。

数字は1桁ずつ区切って英語でそのまま伝えます。ただし「9」は「ナイン」ではなく「ナイナー (niner)」と言います。また小数点「.」は「デシマル (decimal)」と言います(「ポイント」というATCもいるようです)。

フォネティックコードの一覧はこちらをご覧ください。ちなみにジュリエットとアルファのスペルが一般のものと少し違っています(Juliet AlphaではなくJuliett Alfaとなる)。

コールサインは2度目以降の交信では一部省略することもあります。たとえば JA01TC なら最初の交信のときは「ジュリエット・アルファ・ゼロ・ワン・タンゴ・チャーリー」とすべて伝え、2度目からは「ゼロ・ワン・タンゴ・チャーリー」のように言ったりします(※)。無線は他の飛行機も共用するので、自分が話しているときは他の人は交信することができないため、少しでも自分の占有時間を節約して他人への迷惑を最小限にするためです。

※2度目からは機体のメーカー名とコールサインの末尾3桁を伝えるようです。JA01TCの場合だと「Cirrus 1TC」と言うようです。

場所は、自機の現在地を英語で伝えます。
例:
"At fuel pump" (給油所)
”Runway 17"(滑走路17)
”On downwind"(Downwind上を飛行中(Downwindについては後述))
"○○ miles northeast"(管制塔の北東○○マイル)

メッセージは、伝えたいことを英語で簡潔に伝えます。
例:
"Request taxi for departure"(離陸滑走を希望)
"Ready for takeoff, request eastbound departure"(離陸準備完了、東向きの離陸希望)

ただし、日本国内のATCであれば、緊急時やイレギュラーな内容などは日本語で会話するのも許してくれるようです。ドラマでも「エアワーク訓練に入ります」とかいう会話は日本語でやってました。

ATC側からは、

「相手の飛行機のコールサイン、管制塔名、メッセージ」

が伝えられてきます。管制塔名は省略されることもあるそうです。

例:
"Juliett Alfa Zero One Tango Charlie, Obihiro Tower, runway one seven, via Delta"
(JA01TCへ、こちら帯広タワー、誘導路Dを通って滑走路17までタキシングせよ)
"Juliett Alfa Zero One Tango Charlie, runway one seven, cleared for takeoff"
(JA01TCへ、滑走路17の離陸許可する)
"Juliett Alfa Zero One Tango Charlie, Obihiro Tower, climb/descend and maintain three thousand"
(JA01TCへ、こちら帯広タワー、上昇/降下し高度3000フィートを維持せよ)
"Juliett Alfa Zero One Tango Charlie, turn right heading zero three zero"
(JA01TCへ、右旋回し針路30度に向けよ)
"Zero One Tango Charlie, traffic, Cessna, two o'clock, five miles, four thousand five hundred feet descending, north-bound, report in sight"
(01TCへ、セスナ機が貴機の2時方向5マイル先、高度4500フィート、北向きに降下中、視認したら報告せよ)
"Zero One Tango Charlie, contact Kushiro Tower on one one two decimal five"
(01TCへ、Kushiroタワーと交信せよ、周波数は112.5MHz)
"Zero One Tango Charlie, make circle before base"
(01TCへ、Baseの前で旋回して待機せよ(Baseについては後述))
"Juliett Alfa Zero One Tango Charlie, runway one seven, cleared to land, wind one five zero at five"
(JA01TCへ、滑走路17への着陸許可する、150度方向から5ノットの風)

離陸

まず駐機場に停まっている機体のキャビン (cabin) から、胴体 (fuselage)、主翼 (wing)、尾翼 (empennage)、機首 (nose) をぐるっと回り、機器や部品に異状がないかチェックします。AFM/POHに書いてあるチェックリストに従って、ライト類がちゃんとつくか、無線アンテナが取り付けてあるか、燃料の量は適切か、タイダウンロープの固定が外されているか、エレベーター・エルロン・ラダーにゴミなどが挟まってなくちゃんと動くか、ヒンジやボルトなどの取り付けが正常か、車輪やカバー(フェアリング)に異物がからんでないか、タイヤの状態は良好か、エンジンオイルの量や状態は適切か、エンジンカウルの取り付け状態は正常か、排気パイプに異状は無いか、などをチェックしていきます。もちろん異状があれば修理するまでその飛行機には乗ってはならないとされています。

プリフライト・インスペクション(飛行前点検)のウォークアラウンドの順番
1 キャビン→2 左胴体→3 尾翼→4 右胴体→5 右主翼後部→6 右主翼端→7 右主翼前部・右後輪→8 機首右側→9 前輪・プロペラ・スピナー→10 機首左側→11 左主翼前部・左後輪→12 左主翼端→13 左主翼後部

プリフライト・ウォークアラウンドが完了したらコクピットに乗り込み、プロシージャーに従ってエンジンをかけます。イグニッションスイッチは下図の18にあります。

コクピット(再掲)

エンジンをかけるにはセルモーターを電気で回す必要がありますので、バッテリースイッチをONにして機内のバッテリーから給電します。

その前に、上図13にあるサーキットブレーカーパネルを見て、ヒューズが全部正しく入っていることを確認します(ドラマのプロシージャーの中で「サーキットブレーカーズ、オールイン」と言っているシーンがあります)。

サーキットブレーカーパネルの中身

サーキットブレーカーのオールインを確認したら、パーキングブレーキがかかっていることを確認したあと、PFDのすぐ下にあるボルスタースイッチパネル上のバッテリースイッチ(下図の3と4)を2つともONにします。またエンジン始動前に周囲に安全を促すため、ストロボライト(下図の9)もONにします。

ボルスタースイッチパネル
3 バッテリースイッチ2 4 バッテリースイッチ1 5 オルタネータースイッチ1 6 オルタネータースイッチ2 7 アビオニクススイッチ 8 ナビゲーションライトスイッチ 9 ストロボライトスイッチ 10 ランディングライトスイッチ 11 パネル輝度調節つまみ 12 インストルメント輝度調節つまみ

ストロボライトとは、飛行機の両翼の先についていて一定時間間隔でピカッ、ピカッと点滅するライトのことです。

ここから先はSR20のエンジン始動のプロシージャーと少し違う、Cirrus SR22のエンジン始動プロシージャーをドラマでは行っています。実際の航空大学校の訓練機がSR22なのでプロシージャーもSR22に準拠した手順にしているものと思われます。

SR22のフューエルシステムコントロール
1 フューエルポンプスイッチ 2 燃料計 3 フューエルセレクターレバー

SR22では燃料ポンプのプライミングとブーストの機能があります。プライミングとは、飛行機の両翼端にある燃料タンクの燃料を燃料ポンプが飛行機の前にあるエンジンまで引っ張り上げることです。フューエルポンプスイッチの手前側(PRIME)のほうを押すとプライミングされます。PRIME側のスイッチは指を離すと元に戻ります。奥側(BOOST)を押すとブーストされます(BOOST側は指を離しても元には戻りません)。ブーストもプライムも同じようにプライミングする機能ですが、プライムよりも燃料ポンプが低速で動くようになっていて、離着陸時などにブーストにしておくと燃料の気化を防ぐ効果があるようです。POHによると、その日初めてエンジンをかけるような場合にはまずPRIMEを2秒間押し、そのあとBOOSTに切り替えることとされています。

ドラマでは、エンジンをかける前に、パワーレバーの右にあるミクスチャーコントロールレバーをフルリッチ(一番奥のRICH位置)にし、パワーレバーをフルフォワード(一番奥)に動かしてから、フューエルコントロールスイッチの手前のPRIMEを押してプライミングし、そのまま2つ数えてから奥のBOOST位置に倒してブーストさせています。

ミクスチャーコントロールとはエンジンのシリンダーに送る燃料と空気の混合比を変えるもので、フルリッチにすると燃料の割合が最大になります。高度が上がると空気が薄くなり燃料が濃くなりすぎて燃費や効率が悪くなるので、ミクスチャーコントロールレバーを手前に動かして燃料の割合を減らします。燃料が濃いことをリッチ (rich)、薄いことをリーン (lean) といいます。エンジンを切るときにはミクスチャーコントロールレバーをCUTOFFに入れるとエンジンへの燃料供給が完全に絶たれ、エンジンが止まります。

燃料をブーストさせたあとは、パワーレバーを一番手前から4分の1インチだけ奥に動かした位置に戻し、「レフトクリアー、ライトクリアー、バックワードクリアー、センタークリアー」と言いながら左右と後ろと前を目視して飛行機の周りに人がいないことを確認してから、イグニッションキーをSTART位置まで右に回してエンジンをかけ、ブロペラが回ったら手を離します(手を離すとBOTHの位置にきます)。

イグニッションキー
OFFが停止位置、STARTが始動位置。
エンジンのプラグに点火する電気系統(マグネト)は左と右の2系統が独立しており、R位置にすると右系統だけ、L位置にすると左側系統だけ、BOTHにすると両系統が動作します。飛行中はどちらが切れてもいいようにBOTHの位置にしておきますが、飛行前にRとLの位置にして安全確認を行います。BOTHよりもRやLにするとエンジン回転数が下がりますが、もしBOTHと変わらなかった場合には片方しか動作していないということがわかります。

エンジンがかかったら、タコメーターをチェックし、数字が1000RPMを指すようにパワーレバーを手前に動かします。

オルタネータースイッチを2つともONにし、アビオニクススイッチもONにします。そしてエンジンパラメーターと下図2の電流計の値もチェックします。このあたりの手順はプロシージャに従います。

ボルスタースイッチパネルとMFD内の電気系情報表示
1 エッセンシャル&メインバス電圧計 2 オルタネーター&バッテリー電流計 3 バッテリースイッチ2 4 バッテリースイッチ1 5 オルタネータースイッチ1 6 オルタネータースイッチ2 7 アビオニクススイッチ 8 ナビゲーションライトスイッチ 9 ストロボライトスイッチ 10 ランディングライトスイッチ 11 パネル輝度調節つまみ 12 インストルメント輝度調節つまみ

ATCにタキシング (taxiing) のリクエストをして許可を得たら、パーキングブレーキをリリースし、ATCから指示を受けた誘導路 (taxiway) を使って指定された滑走路に向かってタキシングします (taxi)。

動き出しにはパワーが必要なのでパワーレバーをかなり前に動かしますが、いったん動き出したらすぐにパワーレバーを手前に戻さないとどんどん加速して暴走してしまいます。

地上移動時に方向を変えるときはエルロンは使わず、ラダーだけで方向を変えます。左折するときは左のラダーペダル、右折するときは右のラダーペダルを踏みます。減速するときはラダーペダルのつま先の部分を踏むと自動車のブレーキペダルのようにブレーキがかかります。

タキシング中にブレーキのテストをしたり、計器類やジャイロなどが正しく動くかを確認します。

滑走路まで来たら、手前で停止し (hold short)、離陸前のビフォアテイクオフチェックリストに従って確認します。シートベルト・燃料の確認、エアコンの設定、無線やアビオニクス(電子機器)の設定、ナビゲーションライト(両翼の先の点灯。左側が赤、右側が緑)・ランディングライト(着陸灯)のON、操縦桿とエルロン・エレベーター・ラダーが可動域いっぱいまで正しく動くことの確認、エンジンのマグネトの確認、電圧の確認などが含まれます。

コクピットの図の9のフラップ調節レバーを操作して、フラップを下げます。フラップとは、主翼の機体に近いほうについている補助的な羽根で、下げると翼の面積が増えるため、揚力が増します(揚力は翼の面積に比例)。SR20ではフラップは0%(UP)、50%、100%の3段階に設定できますが、離陸時にはフラップ100%にはしません。

管制官からの離陸許可 (clearance for takeoff) をリクエストします。管制官から「Cleared for takeoff」と言われたら、離陸許可が下りたということなので、滑走路に入り、機首を離陸方向に向けます。針路計を見て、離陸しようとする方角がATCに指示された滑走路番号の方角と合っているか確認します。

横風が吹いているときは、離陸滑走中に風にあおられて滑走路からずれることがないように、エルロンを風上方向に倒しておきます。

パワーレバーを奥にいっぱい押し(フルフォワード)、エンジン出力を最大にして飛行機を加速させます。

プロペラ機の場合、離陸滑走中は飛行機が左に曲がり気味になる性質があるので、滑走路からずれないように右のラダーペダルを踏んで直進を保ちます。

対気速度計をチェックして、機種や重量によって決められたエアスピード(VR)まで加速できたら、操縦桿を手前に引いて機首上げ (rotation) をすると、主翼に揚力が生まれ、機体が浮かび上がります。ドラマの訓練機の場合、VRは4人乗っている状態で80ノット(=時速約148km)、1人しか乗っていない状態で73ノット(=時速約135km)のようです。

できるだけすぐにエアスピードがVRに達することができるように、離陸するときは向かい風になる方向を選ぶようにします。

機体が浮かび上がり、加速してエアスピードが90ノットを超えたら、フラップ調節レバーを0%に合わせ、フラップを上げます。飛行機によって最適な上昇速度が決まっているので、その速度を維持するように操縦桿でピッチ姿勢をコントロールします。SR20の場合、外気温15°Cで海抜高度付近の環境であれば最適な上昇速度は97ノットになっています。

プロペラはパイロットから見て右回りに回転しているので、力の作用・反作用の関係で飛行機本体は何もしないと左にロールしていきます。そのため水平を保つよう操縦桿をコントロールしなければなりません。

操縦桿は手でぐっと握るのではなく、親指と他の2本の指でひっかけるようにして扱うのが細かい操作がしやすいので「正しい使い方」とされているようです。また、あまり計器に頼らずに、外の水平線と飛行機のエンジンカウルとの位置関係を見比べて飛行機の姿勢を覚えるようにし、また前だけでなく左右も目視し両翼と水平線との関係から姿勢を認識するようにすべきなのだそうです。

500フィートほど上昇したら、パワーレバーを手前に動かしてメーカー推奨の上昇時のパワーセッティングにします。そしてトリムをとり操縦桿から手を離します。トリム (trim) とは飛行機のピッチ姿勢を固定するもので、トリムをとっておけば操縦桿を引っ張り続けなくてもそのピッチで固定してくれます。

高度がある程度まで上がると、空気が薄くなって燃料が濃くなり、エンジンの効率が低下してくるので、思うように上昇しなくなります。そのときはミクスチャーコントロールレバーを少し手前に動かしてミクスチャーをリーンにします。排気ガス温度計(EGT)を見ながら、排気ガス温度が一番高くなるようにミクスチャーコントロールレバーを合わせます。

巡航

目的の高度まで上昇したら、水平飛行 (level flight) に移ります(これをレベルオフといいます)。操縦桿を押して機首を下げ、昇降計(VSI)を見て上昇が止まるのを確認します。そうすると飛行機の速度が上がってくるので、巡航対気速度になるまでそのままにして加速させます。

巡航対気速度になったら、パワーレバーを手前に動かしてパワーを巡航パワー設定になるまでゆるめます。%パワー計を見て、エンジンのパワーが55~85%になるようにパワーを調節します。SR20のAFM/POHによれば、高度6000フィートで外気温3°Cのとき、巡航対気速度140ノットにするにはパワー62%、巡航対気速度154ノットにするにはパワー78%に合わせます。パワーそしてトリムをとり直して操縦桿から手を離せるようにします。

巡航対気速度は上限(VNO)が決まっていて、SR20の場合は指示対気速度164ノット以上にしてはならないとされています。また操縦桿を使うような操縦(旋回や上昇や降下など)をするときは、指示対気速度133ノットが最大対気速度(VO)となります。

排気ガス温度計(EGT)を見て、温度がピークになるようにミクスチャーコントロールレバーをリーンにします。またフューエルポンプもOFFにします。

着陸

着陸する空港のトラフィックパターン (traffic pattern) に入ります。着陸は自由勝手にしてよいものではなく、滑走路ごとに決められた経路があり、それに沿って飛行しなければなりません。たいてい下図のような長方形型のトラフィックパターンが決められています。

トラフィックパターン

上図の例だと、エントリー (entry) から入り、ダウンウィンド (downwind leg)(着陸方向と平行で逆向きの、風向きに沿ったコース)、ベース (base leg)(着陸方向から90度曲がったコース)を通り、ファイナル (final approach)(最終進入コース)に入って着陸することになります。

トラフィックパターンを飛ぶ高度 (pattern altitude) も決められているので、その高度まで降下します。ふつうは地上高1000フィートです。

降下中にディセントチェックリスト (descent checklist) を行います。ランディングライト (landing light) がついていなければここでつけます。ミクスチャーをフルリッチにします。

ダウンウィンドに入ったらビフォアランディングチェックリストを行います。シートベルトの着用を確認し、フューエルポンプをBOOSTにします。

着陸の速度が速すぎると、着地したときに車輪 (landing gear) が壊れるかもしれません。なので、着地時に安全な対地速度になるように、エアスピードをじゅうぶん落としていきます。目標エアスピードは失速速度の1.4倍が適正とされています。SR20の場合、AFM/POHによるとフラップ50%のときの失速速度は64〜67ノットなので、その1.4倍は89〜94ノットになります。ドラマの訓練機の場合はエアスピード90ノット(=時速約167km)にしています。

エアスピードを遅くしても十分飛行できるように、フラップを降ろして揚力を稼ぐようにします(ドラマでは50%にしているようです)。ダウンウィンドにいる間に減速を始めます。

滑走路端が後ろ45°ぐらいに見えるようになったら、ダウンウィンドから旋回しベースに入ります。ベースにいる間に目標エアスピード(失速速度の1.4倍)まで落とします。

ベースからファイナルに入り着陸進入

ベースからファイナルに入り機軸を滑走路のセンターラインに合わせます。ファイナルに入ったらフラップを100%にし、エアスピードを失速速度の1.3倍まで落とします。

降下角は3°になるようにするのが適正とされているようです。適正な進入経路のことをグライドパス (glide path) あるいはグライドスロープ (glide slope) といいます。

滑走路の進入端(スレッショルド)の横に、PAPI (Precision Approach Path Indicator) という4つのライトがついていて、適正な進入経路(パス)になっているかどうかをみることができます。パイロットから見てライトが白2つ赤2つ見えれば、グライドパスにちょうど乗っていることを示します。白の数のほうが多く見えれば、進入高度が高すぎることを示し、赤の数のほうが多く見えれば、低すぎることを示します。

PAPIとグライドパス(白が多い=高すぎる)
PAPIとグライドパス(赤と白が同数=適正)
PAPIとグライドパス(赤が多い=低すぎる)

パワーとピッチのコントロールでうまくグライドパスに乗せて降下していきます。昇降計(VSI)を見て降下率をチェックします。対地速度の5倍の数字の降下率になればだいたい3°の降下になるといわれています。エアスピード90ノットの場合、向かい風成分が10ノットなら (90-10)×5 = 400 fpmの降下率にすればおおよそ3°の降下になります。

ピッチ姿勢とエアスピードが安定したら、トリムをとって操縦桿への力をゆるめます。

機体がスレッショルドを超えたあたりでパワーレバーをアイドル(IDLE)の位置まで引いてエンジンパワーをアイドリング状態まで落とし、接地するぎりぎりの高度(10〜20フィートぐらい)で、操縦桿を引いて機首を上げてやり、失速速度まで減速させて機体を沈み込ませ、後輪(主輪)から着地するようにします。前輪から着地すると車輪がもげてしまうかもしれません。後輪が着地したらそのままの姿勢でしばらく飛行機を減速させたあと、ゆっくり操縦桿を戻して機首を下げて前輪も着地させます。そしてラダーペダルのつま先ブレーキをかけてさらに減速させます。

着地直前の機首上げのことをフレア (flare) あるいはラウンドアウト (round out) といいます。フレアが早すぎると機体がまた舞い上がり、そのままズドンと落ちてハードランディングになるそうです。

ドラマの舞は着陸が苦手なようで、大河内教官からは、「パスが高すぎる」「エアスピードが速すぎる」「接地前の高い位置で失速しそうになる」と指摘されています。そこから考えられるのは、私は操縦経験がないので想像ですが、エアスピードが速すぎるので少しでも落とそうと機首を上げすぎる、そうすると失速しそうになる、高度がなかなか下がらない、パスが高くなりすぎる、そうすると高度を下げようとして機首を下げる、そしたらエアスピードが落ちない、という悪循環に陥って悩んでいるのかもしれません。知らんけど。

まあ、高度を下げるという行為自体、実際に自分でやろうとすると怖いのかもしれませんね。スキーだって、急な斜面をすべり降りるのは初心者だと怖いですものね。そこのところは実際に操縦経験者に聞かないとなんともいえません。

ゴーアラウンド

ゴーアラウンド (go-around) (復行)とは、着陸を中止して再び上昇することです。何らかの理由で着陸が危険であると判断したときは、ためらわずにゴーアラウンドをすべきとされています。

ファイナルにいるときにゴーアラウンドを決めたら、すぐにパワーレバーをフルフォワードにして飛行機を加速させます。飛行機は着陸用にトリムがとられているので、パワーを急に加えると機首が上がってしまい十分加速できなくなり失速してしまうため、操縦桿を強く押して機首が上がらないようにします。またPファクターにより左へのヨーやロールがかかるので右ラダーペダルを踏みます。

エアスピードが十分に上がってから、機首を上げて上昇姿勢をとります。そして機体が上昇を始めたらフラップを0%にアップします。そしてトリムをとり直し、あとは通常の上昇時と同じ手順を踏みます。

ウェイト&バランス

ドラマでもよく「ウェイト&バランス」とか「岩倉、ウエバラシート取って」とかいう言葉を耳にします。

飛行機は宙に浮かぶ乗り物なので、ちゃんと飛ぶためには、搭載品や搭乗員の重さや位置がバランスをとれていなければなりません。

飛行機の重心は、前すぎても後ろすぎてもいけません。重心が前すぎると機首が下がりぎみになり、着陸時にフレアがうまくできず、機首から着地し前輪やプロペラ、エンジンを破損するおそれがあります。重心が後ろすぎると機首が上がりぎみになり、失速やスピンを起こしたときに回復ができず最悪、墜落するおそれがあります。

なので、重心が適正な範囲におさまるように、搭載する燃料や荷物、搭乗員の重量や乗せる位置を事前に把握し、計画的に配置する必要があります。

SR20のWeighing Form(抜粋)

物や搭乗員が、重さ何ポンドで、基準となる線(reference datum あるいは単に datum)から何インチ後ろに配置するかを把握します。datumの場所は飛行機によって決まっており、SR20の場合はfirewall(エンジンルームとコクピットを隔てる壁)から100インチ前の場所となっています。

物や搭乗員の、datumからの距離をアーム (arm) といいます。単位はインチです。

そして、重さとアームを掛けたものをその重量物のモーメント (moment) といい、単位はインチポンドです。

機体、搭乗員、燃料などすべてについて、それぞれ重さとモーメントを求めます。それをもとに以下のようなウェイト&バランスシート(ウエバラシート)を作成します。

ウェイト&バランスシート(青字部分を記入)

上のシートは11月29日放映回の、山下教官、矢野学生、中澤学生、吉田学生のチームの訓練機のウェイト&バランスシートです。上記の例では、燃料を入れていない飛行機そのものの重さ (Basic Empty Weight) が2334.2ポンド、モーメントが324450インチポンドです。搭乗員各員と後部荷物 (Aft Baggage) の重量と、アーム(前席は143.5インチ、後席は180.0インチ。機体によって決まっています)から、それぞれモーメントを計算します。

※上記のアームの長さは、SR22の機体のデータをもとにしているようです。航空大学校で配備されている訓練機がSR22なので、ドラマでもそれにならったのかもしれません。

すべての重量とモーメントを足した結果 (Subtotal) がそれぞれ2918.2ポンドと420100インチポンドとなり、モーメントの合計を重量の合計で割った420100÷2918.2=144.0インチがその飛行機全体のアームの長さ、つまり飛行機の重心 (center of gravity: CG) となります。

燃料を90ガロン入れることにすると、燃料の重さは普通1ガロンあたり6ポンドで計算するので、この機体に給油する燃料の重さは540ポンドとなります。燃料タンクのアームが154.9インチなので、燃料のモーメントは540×154.9=83650インチポンドとなります。

燃料の重さとモーメントを足して、Subtotal Ramp Weight行を埋めます。これが出発前の駐機場にいる状態の飛行機全体の重さとモーメントです。

駐機場を出て滑走路に向かうまでに燃料を消費します (Less Fuel for Start, Taxi, and Takeoff)。ここでは9ポンド消費するとしています。消費燃料のモーメントは9×154.9=1390インチポンドとなります。

それを差し引いたものがSubtotal Takeoff Weightで、離陸直前の飛行機全体の重さとモーメントとなります。これらから離陸直前の重心を求めると、502350÷3449.2=145.6インチとなります。

飛行中に燃料を45ガロン(=270ポンド)消費すると見込んでいます (Less Fuel for Flight)。消費燃料のモーメントを求めると270×154.9=41820インチポンドとなります。

着陸時の飛行機全体の重さ (Landing Weight) とモーメントを求め、そこから着陸時の飛行機の重心を計算します。

CGエンベロープ(SR22)

重量と重心を交差した点が上のグラフの包絡線 (envelope) の枠の中におさまっていれば、重心が適正位置内にあるということがわかるようになっています。上記のウェイト&バランスシートでいえば、離陸時・着陸時とも包絡線の枠内に入っていることになります。

訓練空域

帯広空港、釧路空港周辺の空域の図です。

帯広空港・釧路空港周辺空域

ここの

帯広空港周辺空域(拡大)

「RJT-HK 2 ○○」などと書かれているエリアが航空学校の訓練空域になっているようです(「HK2-○○」などと呼ばれています)。

日本の空域については以下をごらんください。
https://www.mlit.go.jp/koku/content/001423395.pdf

情報を得る

飛行する前には、気象情報やその他の情報をあらかじめ収集することが安全な飛行のために重要です。これをウェザーブリーフィング (weather briefing) といいます。特にドラマの訓練生たちは有視界飛行 (visual flight rules: VFR) でしか飛ぶ資格がないので、雲の中を突っ切って飛ぶことは違法です(飛行試験では一発フェイルだそうです)。ですからVFRが推奨されない気象条件では、飛行を断念するという判断をすることになります。そういう条件下で飛行するには、計器飛行 (instrument flight rules: IFR) の資格が必要になります(航空学校の場合、最終の仙台フライト課程での訓練となります)。

METAR/TAF

気象情報で有名なのが、METAR (METeorological Aerodrome Reports) とTAF (Terminal Aerodrome Forecasts) があります。前者は現在の気象情報、後者は未来の気象予報です。

Flight Service などのサイトで一般人でも簡単にMETAR/TAF情報を得ることができます。METAR情報だけならFlightrader24からでも取得可能です。

以下が Flight Service で帯広空港のMETAR/TAF情報を表示させた画面です。

帯広空港のMETAR/TAF

この画面ではMETARは以下のように表示されています。

RJCB 091100Z 14005KT 9999 FEW040 SCT060 M03/M08 Q1015 =

これは、「帯広空港(ICAO空港コード:RJCB)、9日11:00 (Zulu time) 発表、140度から5ノットの風、卓越視程10km以上、few clouds(1/8~2/8程度の雲)が4000フィート上空に、scattered clouds (3/8~4/8程度の雲)が6000フィート上空にあり、気温マイナス3度、露点マイナス8度、気圧1015ヘクトパスカル」という意味です。Zulu timeとは、UTC(協定標準時)のことで、日本時間よりも9時間遅れています。ですのでZulu time 11:00は日本時間20:00となります。

TAFは以下のように表示されています。

TAF RJCB 091105Z 0912/1018 16006KT 9999 FEW030
BECMG 0914/0916 32005KT
BECMG 1006/1009 18005KT
BECMG 1012/1015 36005KT =

これは、1行目は「帯広空港、9日11:05 (Zulu time) 発表、9日12時から10日18時まで有効、160度方向から6ノットの風、卓越視程10km以上、few clouds(1/8~2/8程度の雲)が3000フィート上空に出る」という意味です。

2行目以降の「BECMG」は、BECOMINGの略で、この後どうなるかを表しています。2行目は「9日14時〜9日16時、320度方向から5ノットの風」、3行目は「10日6時〜10日9時、180度方向から5ノットの風」、4行目は「10日12時〜10日15時、360度方向から5ノットの風」と読みます。

METAR/TAFの読み方については以下に詳しく載っています。

ノータム

ノータム (Notice To AirMen: NOTAM) は、パイロット向けの空港のお知らせのことです。滑走路や誘導路の閉鎖情報や、一時的な規制、制限などの情報が出ます。ドラマでも舞が「ノータム情報をメモしてきました」と言っていました。

ノータムも一般人が簡単に知ることができます。たとえば以下のような米国連邦航空局(FAA)のサイトで、空港を検索すると出てきます。

以下は帯広空港のノータム情報です。

帯広空港のNOTAM

M1386/22 NOTAMN
Q) RJJJ/QOBCE/IV/M/A/000/006/4244N14313E005
A) RJCB B) 2209221219 C) 2212220929 EST
E) OBST(TREES) EXIST ABV TRANSITIONAL SFC
1.PSN : BOUNDED BY FLW POINT
424441.16N1431254.94E 424439.74N1431255.67E
424439.60N1431255.17E 424441.02N1431254.44E
(26.59M TO 73.47M BEYOND RWY 17 THR AND
261.06M TO 273.27M LEFT RCL)
(OBIHIRO-SHI IN HOKKAIDO)
2.NUMBER : NUMEROUSNESS
3.RMK : WX MNM,INSTRUMENT APCH PROC,DEP PROC NO CHANGE
F) SFC G) 533FT AMSL

上から順に見ていくと、
M1386/22 NOTAMN
は、ノータム番号(M1386/22)と新規・変更・取消の別(新規ならNOTAMN、変更ならNOTAMR、取消ならNOTAMC)を示します。

Q) RJJJ/QOBCE/IV/M/A/000/006/4244N14313E005
は、
RJJJ:日本の飛行情報区のコード(RJJJ)
QOBCE:QのうしろのOBは「Obstacle(障害物)」そのうしろのCEは「Erected(直立している)」文字の意味の一覧はこちら
IV:計器飛行方式(IFR)および有視界飛行方式(VFR)ともに関係あり
M:その他(Nは航空機運航者が直ちに注意すべきもの、Bは飛行前ブリテン、Oなら運航に関するもの)
A:飛行場(Eならエンルート、Wならナビゲーションウォーニング)
000/006:0〜600フィート
4244N14313E005:北緯42度44分東経143度13分、半径5nm
をそれぞれスラッシュで区切っています。

A) RJCB
は、帯広空港のコード(RJCB)を示しています。

B) 2209221219 C) 2212220929 EST
は、ノータムの有効期限の開始(米国東部時間2022年9月22日12時19分)と終了(同2022年12月22日9時29分)を示しています。

E) OBST(TREES) EXIST ABV TRANSITIONAL SFC
は、ノータムの内容で、
Obstacles (trees) exist above transitional surface
(転移表面上に障害物(木)あり)
と読めます。転移表面とは滑走路の両横の部分をいいます(正確な意味は以下のリンクをごらんください)。

その次の行からは

1.PSN : BOUNDED BY FLW POINT
424441.16N1431254.94E 424439.74N1431255.67E
424439.60N1431255.17E 424441.02N1431254.44E
(26.59M TO 73.47M BEYOND RWY 17 THR AND
261.06M TO 273.27M LEFT RCL)


1. Position: bounded by the following points
424441.16N1431254.94E 424439.74N1431255.67E
424439.60N1431255.17E 424441.02N1431254.44E
(26.59 meters to 73.47 meters beyond runway 17 threshold and 261.06 meters to 273.27 meters left of the runway center line)
(1. 位置:以下の4点で囲まれた範囲
北緯42度44分41.16秒東経143度12分54.94秒、北緯42度44分39.74秒東経143度12分55.67秒、北緯42度44分39.60秒東経143度12分55.17秒、北緯42度44分41.02秒東経143度12分54.44秒
(滑走路17進入端の先26.59メートル〜73.47メートル、滑走路中心線から左261.06メートル〜273.27メートル))
と読めるでしょう。

2.NUMBER : NUMEROUSNESS
は、障害物の数が書かれています。木々なので、数えきれないほど多いということなのでしょう。

3.RMK : WX MNM,INSTRUMENT APCH PROC,DEP PROC NO CHANGE

3. Remarks: as for weather minimums, instrument approach procedures, and departure procedures, there are no changes
(3. 備考:最低視程や計器進入・離陸のプロシージャーに変更なし)
という意味かと思われます。

F) SFC G) 533FT AMSL
は、ノータムの対象となる高さの範囲(FからGまで)です。
この例だと、SFCはsurface(地表)の略、533FT AMSLとは533 feet above mean sea levelの略で、障害物があるのは地表から海抜533フィート(162メートル)までの高さということになります。

略語が多く読み方が難しいので筆者もすべては解析できませんが、滑走路の左側に木がいっぱいあって障害物になっているので注意、みたいな情報かと思います。

以下にノータムの読み方を解説した動画を紹介します。

まとめ

いかがでしたか?

飛行機は奥が深いので、まだまだ書ききれていないことが山ほどありますが、「舞いあがれ!」のドラマのパイロット訓練生が何のために何をやっているのか、少しでも見えてくれば何よりです。

ここに書けたのはまだまだほんの一部ですが、これ以外にもたくさん勉強しなければならないパイロットって、大変な職業なのですね。

ドラマの本編のほうは飛行機のテーマから離れていってしまいましたが、航空学校編はずっと期待していたのでもう少し訓練シーンが見られるとよかったのかなと思いました。

※続編をアップしました。ドラマの航空学校の宮崎座学課程で出てきた空中航法を中心に解説しています。

参考

Cirrus SR20 AFM/POH
https://www.se.edu/aviation/wp-content/uploads/sites/4/2020/11/SR20-G6-POH-1.pdf

Cirrus SR22 AFM/POH
https://jasonblair.net/wp-content/uploads/2015/06/Cirrus-SR22-POH.pdf

AIM-JAPAN編纂協会「Aeronautical Information Manual-JAPAN」第76号、日本航空機操縦士協会、2022年6月。

Instrument Flying Handbook | Federal Aviation Administration
https://www.faa.gov/sites/faa.gov/files/regulations_policies/handbooks_manuals/aviation/FAA-H-8083-15B.pdf


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