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エッセイ|壺の中は毒


わたしの中には壺があって

苦しいことがあればソレを
理不尽な相手に投げつけたかったけれど飲み込んだ言葉を
悲しいこと
辛いこと
我慢したこと
怒り

そんなソレらを

壺の中にひとつひとつ落としていっては蓋をする

蓋をしてしまえばもう見えない
もう、無かったことと同じだ

と、思うでしょう?

わたしはそう思っていた
だってもう、見えないから

何年も何十年もソレらで満たされた壺はひとつ、またひとつと増えてゆき
わたしの中は壺だらけ

喜びや
幸せや
感動したこと
そういう光のようなものは壺と壺の間を走っている

光で壺を隠すように

長年、壺の中で消えることなく熟成されたソレらは混ざりに混ざって毒になる

蓋を開けたら大変
うっかりこぼしてしまっては大変
もっと光で覆わないと大変なことになる

そう焦るほどに、光のような感情は弱くなっていくのを感じた

そのうち何かのきっかけで壺がひとつ割れてしまったから、毒と光が混じり合ってわたしの中は濁流となった

感情の波が駆け巡り、壺がまた、割れる
どう表現したら良いのか、立っている地面が崩れ去るような激しさ

もうダメかもしれない

けれどしばらく月日が過ぎて波はおさまった

あと幾つあるのか分からないけれど、もう小さな壺がひとつふたつ残っているだけだろう

感情を溜め過ぎると毒になる
だから、自分の中に壺を置いてはいけない。

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