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バカロレアの学校見学で理想の教育環境を垣間見る

先週、自分の子供の進路検討のために、国際バカロレア(IB)のプログラムがある中学校の説明会に参加した。国語以外の授業が英語で行われるような本格的なIBの学校だった。今まで同様な中学の説明会を3校で参加してきたが、毎回頼もしい生徒の姿に驚かされてきた。

一般的な中学生って、初めて会う大人に対して、何をどう話して良いのか分からず、もごもごしてしまうと思う。今回のような見学会に来た大人にも同様で、普段通りに話せない方が普通だろう。でもIBの中学校には、とても自然体で見学者の大人と話す生徒が多い。先生と日頃から対等な関係で、良い対話を積み重ねてきているからだと思う。そういう生徒が多いと、それを間近に見た周りの生徒に良い影響が連鎖するような現象が起きていると思う。

今回は特に実際の授業をしている最中に、教室に入って、生徒との触れ合いの時間も多く、今まで以上に感動したのでその内容を整理してみる。

リスクテイカーになれる

一般的な授業参観と同様、我々大人たちが教室の後ろから入った。習熟度別に分かれた英語の授業中で、中級クラスに入ったときのことだ。我々の案内者が「今何をしてるか誰か説明してくれる?」とフラットな感じで聞く。外国人の女性の先生に、丁寧に確認することも無く、自然な感じでサクッと聞いた。すると、数秒後に二人の女子生徒が手を挙げた。それに対して先生はすかさず褒めた。
”Thank you for being risktakers.“
純粋に「かっこいい」と思われるようなことをしたんだという雰囲気を先生がすぐに演出してあげることは、周りの反応に敏感な中学生にとって、とても重要なことだと思う。説明を終えた生徒に対してもう一度リスクテイカーになったことを褒めた。挑戦すること自体が評価に繋がるんだという感覚を浸透させていくのだと思う。

生徒同士で決めることはサクッと決める

上記と同じ場面において、一番先に挙手した生徒が、「説明は英語ですか?日本語ですか?」と案内者に聞いた。「どちらでも、じゃあどっちも」と案内者が答えると、二人のリスクテイカーは「じゃあ私日本語ね」と一人が言い、もう一人が「じゃあ私英語ね」と即座に決めた。このとき役割は先生や案内者に聞くような話ではなく、本人同士で決めればよい。そういう自主性を持って、日頃から行動できている証拠だと思う。何気ない、しかも一瞬の出来事だったけれど、これは見学者の私にとって、とてもとても印象的なシーンだった。中学生だけでなく、日本人はこういう場面において、先生や案内者にいちいち確認したり、楽な日本語の担当をとるか、難易度の高い英語の方をとるかで、少しまごつくと思う。そういうまごつきが一切なく、清々しかった。

どんなときも自分らしく振る舞う

習熟度の上級の教室に移動して見学していたときに、授業の一区切りがついたようで、先生が”break time!"と言った。その瞬間、生徒は喜びの声を挙げ、その表情も一気に緩んだ。見学者の大人がまだ教室にいる中でも、いつも通り振る舞っている感じだ。その後、案内者の「誰か質問を受け付けてくれる?」という依頼に、生徒たちが集まってくる。何個かの質問が飛び交い、誰か生徒が答えてということを繰り返した。声が小さい子がいれば、「もっと大きな声で」と生徒の誰かから声が上がる。我々のような部外者がいようがいまいが、いつも通り振る舞える。普段通りの姿を、誰が輪の中に入ってきても出せるというのは本当に重要なスキルだと思う。

教育環境は先生だけが作るものではない。先生と生徒とのインタラクションの質によって、教室は教科書以外からも多くを学べる学習環境になったり、退屈な時間が過ぎるのをただ待つ待合所になったりもする。今回見学した中学校の教室はまさに前者であり、そういう学校が日本に増えたらよいなと思えた。とても晴れやかな気持ちで、学校を後にした。

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