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7月18日生まれのあなたへ

2021年の誕生日はどんなふうに過ごしましたか?
穏やかに過ごせましたか。
悲しい思いはしていませんか。 

過去2年、自分の力とは全く違う、外的要因で悲しい思いをした人も多かったと思います。書いているからには、もちろん私もその一人です。
「今年こそ、誰も死なないで」
暖かくなり、梅雨になり、夏の気配を肌で知り、誕生日が近づいてくることをひしひしと感じる頃から私はずっとそう思っていました。

最初に誤解がないように言っておくと、これは事象に関係する人や、その周りの方々を否定したり非難するために書くものではありません。
それだけは、決してありません。

過去二年

・2019年7月18日 京都アニメーション放火事件
・2020年7月18日 三浦春馬さん自殺

いくらそれぞれに興味のない人でも、覚えている出来事だと思います。
1日中、その後もしばらくそのニュースで持ちきりでしたね。
あなたはこのニュースを観て、どう感じて過ごしていましたか?


わたしの場合

2019年7月18日 京都アニメーション放火事件

私はその映像を見たとき声も出せませんでした。

その日私は朝から映画館で「トイ・ストーリー4」を観て、誕生日を自分のために過ごす “なんてことないけどちょっとだけ良い一日” のスタートを気持ちよく切っていました。
その後お気に入りの喫茶店で珈琲を飲んで、特別に甘いものも頼んで、気分良く帰って、家の居間のテレビを点けたら、どこかの建物が燃えていた。

ニュースキャスターが発する
「きょうとあにめーしょん」が「京都アニメーション」であること。
「ほうか」が「放火」であること。
理解が追いつかなくて、私はただ、口を手で抑え、肩を小さく震わせていました。

とても不謹慎な言い方をすると、これが全く知らない建物であったなら、私はもっと冷静にそのニュースを観ていたと思います。
でも、私にとっては京アニは特別な制作会社でした。
「けいおん!」「氷菓」「涼宮ハルヒ」「境界の彼方」「Free!」「ユーフォニアム」「たまこま」「ヴァイオレット」… などなど、他にも語りだしたらきりがないほど、大好きな作品を数多く生み出してくれた場所。
”アニヲタ”と自称できるほどアニメを観るわけではないけれど、京アニ作品だけは、原作がどうとか、あらすじとか、声優が誰とか、そういうことを全く気にしないで、「京アニなら観よう」と心から信頼できる場所。
そういう、夢を与えてくれる場所で、いわゆる”聖地”と呼べる場所での凄惨な事件は、その場を愛する人間にはあまにも強い絶望を与えます。
どれだけ無事を祈っても、次々に耳に入るニュースは悲しいものばかりで、私の誕生日をお祝いしてくれる周りの人のために笑顔でいたとしても、意識はずっと京アニの事件にあって、ずっと仄かに心に影を落としていました。

この先、私の誕生日には毎年「あれから何年」と言われるんだろうなと、そのたびに悲しい気持ちを思い出すんだな、と、ぼんやり思ったことを覚えています。

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2020年7月18日 三浦春馬さん自殺

去年がそんな1日だったから、今年こそは良い一日にしたい、そう思っていたんですけどね。
そんな思いどおりには行かないんだな、と肩を落としました。

このこととは関係ないのですが、私この日、つまり誕生日当日に、車で接触事故を起こしまして、しかもしれが大好きなケーキを買いに行く途中で、1日をえいや!と、正直京アニ事件のことを思い出してはぐぐぐ…と悲しい気持ちに引っ張られていく自分をぐいっと起こして、家を出て、それで、ガシャン。

初めての事故だったのでパニックにもなったのですが、同乗者が冷静にいろいろ判断とアドバイスをくれたのと、お相手の方が優しい人だったのと、軽い接触で誰も怪我をしなかった、という私以外の人達のおかげでそれ自体はなんとかなったのですが、まあ、ね、精神的にめちゃくちゃダメージをくらいますよね。

自分が悪いとはいえ、なんで、なんで、なんで。
よりによって誕生日に、なんで、なんで、なんで。
あのとき家を出なければ、あのときあの道を通らなければ。
考えても仕方がないことばかりが、頭に浮かんでは胸を締め付けて消えていく。
べっこりとへこんだ気持ちの中、家で小さくなっていたら、携帯が鳴って、ニュース速報が入って、そこに書いてあったんです。

「三浦春馬さん 自殺」

いろんな気持ちがあちらこちらに散乱して、手に負えなくて、ぐちゃぐちゃになって、涙が出ました。
もう、悲しいことはもう、勘弁してくれ。頼むから誰も、死なないでくれ。

三浦春馬さんに関して、正直めちゃくちゃファンだったかと言われたら、そうではないです。でも、彼も私にとって、少しだけ特別な人でした。

彼が出ていた朝ドラ「ファイト!」は当時リアルタイムで観ていて、その頃の彼の幼さやあどけなさが残る可愛らしくも美しい顔に夢中になりました。
その頃まだ周りで彼を知る人は多くありませんでしたが、そこからあっという間に認知されたけれど、私は特別追うようなことはしませんでした。
でも、ときどきテレビで観る彼は、私の心を掴んだ「ファイト!」の頃と変わらない、クシャッとした笑顔のままでした。
”子供の頃好きだった人” みたいな感覚で、彼が活躍をしていると心が温かくなる。彼が笑っていると、良かったなと思う。
私にとって三浦春馬という人は、そういう人でした。

そんな人が、私の特別な日に死ぬのです。
私の誕生日は、彼の命日なのです。
私はこの先死ぬまで、きっと自分の誕生日に、亡くなった人たちを想って悲しくなるのです。

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誕生日

誕生日、ということに、これまではあまり興味がありませんでした。
友人や恋人や家族がお祝いしていくれるのも嬉しいけれど、一人で過ごしても本当に平気で、歳を重ねるということも自然なことだと思って特別な感慨もない。
むしろ、正直に言うと、プレゼントとかもらうとお返し考えないといけないから面倒くさいなとか、祝ってもらったら相手の誕生日もなにかしないとなとか、そもそも人の誕生日覚えるの苦手なんだよなとか、ちょっと厄介な日でもありました。
贅沢な悩みですね、でも、本音です。
だから別に、2019年7月17日までは、本当にどうってことない日だったんです。

でも、その次の日から、今日までずっと特別な日です。
誕生日が来るのが怖くてたまらない。
他人からしたら「そんなの君のせいじゃない」と言われるかもしれないけれど、2年連続こんなふうに、自分にとって特別な人や場所をきっかけに悲しみに染まるって、それがどれだけメンタルを削ることか。
今年もきっと悲しいことが起きるに違いない、きっと誰かがいなくなってしまうに違いない。
そう思いながら、戦々恐々としながら、誕生日を迎えたことがありますか?
「誰も死なないで」そう思いながらその日を怯えながら待つしかないのです。

2021年7月18日

ここまでは、誕生日前日までに書いたものです。
ここからは、今年の話。

何かが起きることが怖かったので、私はとにかく家でじっとしていました。笑
出かければ事故るような気がしたし、テレビを点ければ誰かが亡くなったニュースが飛び込んできそうで、息を潜めて部屋にこもりました。
部屋でずっと「テレビ千鳥」と「相席食堂」の録画を観て、編み物をしていました。

私には運良く "誕生日を恐れる私" を理解してくれる家族がいたので、彼らがケーキを用意してくれたり、可愛くて仕方のない甥・姪が会いに来てくれて一緒に笑ったり。
いい誕生日だったと思います。平凡で、穏やかで、日常と変わらない。
でも、それは何もしなかったから何も起きなかっただけで、何かしたら何かが起きていたかもしれないという恐怖心は心に根付いたままです。
この気持を克服するためには、いっそのこと何かしたほうが良いのかもしれないとも思ったのですが、でも、やっぱりまだ怖くて。
Twitterではトレンドに「三浦春馬」と「京都アニメーション」が入る7月18日。
リハビリは来年からにして、今年は泣かずに過ごしたかったのです。
え、誕生日ってこんな何かと闘う日でしたっけ???


7月18日生まれのあなたへ

どんなふうに過ごしましたか?心穏やかに今日を終えられそうですか?
私たちの誕生日は、日本のあちらこちらで誰かが思い出しては心を痛める日になってしまったけれど、それでも、私たちは笑顔で過ごす権利があります。
大切な人と笑って過ごしたり、一人でのんびり過ごしたり、全て自由です。
もちろん、亡くなった人たちに思いを馳せることも。
私も決して忘れません。夢をたくさん見せてくれたクリエイターの方々と、とびきりの笑顔を見せてくれた彼のことを。

「私の誕生日はもう勘弁してくれ!」というのも本音だけど、別の日も必ず誰かの誕生日なんですよね。その日だったら良かったなんてことは決してありません。
だからもう、誰かが不条理に傷つけられたり命を落としたりすることがありませんように。誰かが自分の命を捨ててしまうことがなくなりますように。
それはあまりにも遠く、叶いそうもない、偽善のような願いでしかないのかもしれないけれど、そう思わずにはいられない、それがこの2年で得たことです。
だからこそ、その不条理を与えたり、捨てるきっかけを作る側には決してならない。ならないように心して生きる。
それしか私にはできることはないのかもしれません。

あなたはどうでしたか?
日本のどこかの7月18日生まれのあなたへ。
私と同じように怯えていた人もいるかもしれないと思って書きました。
なんの慰めにもならないけれど、歯の浮いたようなセリフかもしれないけれど、「あなただけじゃない」と伝えたい。
だから、誕生日おめでとう!私もあなたも。
あなたも私も、来年も再来年も、この先ずっと、笑顔で誕生日を過ごせますように。

ちなみに

私の2021年誕生日の最初の不幸は、お風呂で使っているお気に入りの洗顔ネットが壊れました。
あまりに小さいけれどやはり何も起きないわけじゃない、という、不運と生きることを強いられる私の、ある意味引きの強さに思わず笑いました。
どんな不幸も、いつか笑い飛ばせたら良いし、誕生日に事故ることよりしんどいことはそうそうないだろうというマインドで生きていきたいものですね。
無理なポジティブもしんどいな。笑


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