後書きと共有
皆さんは、後書きを読みますか?私は読んだり読まなかったり、です。
例えば小説を読み終わった直後、作者の言葉や他者の解釈は「わたし」が読み取った物語の雑音になると思ってしまうのです。正解とか書かれた背景とかは関係なく、自分自身の解釈で作品を楽しみたい。自分なりに物語を噛み砕いて、解釈ができた後に読めば、そういう見方もあるのか〜という姿勢で読める。
こんな面倒臭いことを言っちゃってますが、私の研究は私自身の環世界(私自身と私の周りのものコトとの相互関係)を短歌として詠み、視覚的表現を加えた歌集を人に共有することで「私自身の環世界を、私が知っていく」ことだと考えています。
歌と視覚的表現だけでは、私の生活や環世界をまるっと伝えるのは難しいかも…ということで、人にしっかりと環世界を共有するため、後書きを書くことにしました。
ということで今回は、後書きを書くためのウォーミングアップ的な内容です。新たにつくった歌集について書いていこうと思います。
✴︎ 夏の終わりの歌集「休日」
歌集「休日」、第3弾です。夏の終わり際の自分の心情が顕著に表れている歌集になっています。
こちらは10月7、8日にテレビ塔で開催されるnever mind the booksで販売する予定です!リソグラフで印刷して製本したりなど、いろいろ実験中です…
今まで制作した2冊の歌集は8ページの中に短歌が8首といった内容でしたが、今回はページ数は変わらず歌は4首で、イラストの視覚的表現のページを増やしました。8月はやる気ダウン期で制作など進められなかった代わりにたくさんの歌や言葉に触れていた甲斐あって、今回の歌集はその時々の感情を描けた歌を詠めたというのと、イラストが増えたので歌集を読んだ人が情景を想像しやすいものになっている…と思いたい。
歌集の中身を見ていきましょう。
この歌は、昨晩製氷皿で作った氷を寝起きで割ったら、そのうちの1つが勢いよく飛び出て床に落っこちてしまい、排水溝に投げ入れたときの歌です。
「捨てた」というとネガティブな気持ちになってしまうけど、排水溝に出来立てご飯をあげたと思うと何かいい事をした気分になったので、「餌付け」と言う言葉を用いてちょっといい朝だと思い込む自分の気持ちを詠んでいます。
この日の朝はすごく明るくキラキラしていて、今年の夏最後の輝きかもしれない…と寝起きの頭で思っていた事をスマホにメモしていたので、イラストでは眩しさを表現するよう意識しています。
この日は夏の空気をいっぱい部屋に取り込もう!と思い立ち、窓を全開に開けていました。昼間ぼけっと窓辺に座っていたら、普段は他の住人の声なんて滅多に聞こえないのに、この日だけは何か文句を言っている住人の声がちらちらと聞こえてきて、夏の空気と一緒に住人の声が私の部屋まで入ってきた瞬間が印象的で歌にしました。
ふわふわと穏やかな夏の風と一緒に住民の声が届くイメージで、文字を蛇行させて実際に窓辺に届いた瞬間を描いています。
思い立って夕方ごろに気になっていた喫茶店に訪れます。常連さんが店主さんやママさんと語り合っていて、昔ながらの雰囲気のお店。そこにポツンと私のような新規の若造が居座るのは異物感というか、申し訳なさがあったのですが、なんとなくゆったり時間が流れている店内からなかなか出られずに常連さんとママさんの話を盗み聞きしていると、「最近秋めいてきた」といった旨の話を始め、耳を塞ぎたい気持ちになった。
私の学生最後(多分)の夏は何1つうまく行かず、ほとんど遊びに行くこともなく、ただ暑いだけの夏になってしまったことを8月終盤悔やみ続け、この歌を書いた時期は今まで史上最も夏に縋り付いていました。
ボロボロの状態で、まだ8月中だというのにこの会話を聞いて、本気で心苦しくなっていたという歌です。とはいえとても素敵なお店で、特に印象的だったひらひらしていた紅茶のソーサーを描いています。
歌集最後の歌です。人生初お香に挑戦しようと購入した、アールグレイの香りのお香にどきどきしながら火をつけると、お香が線香の匂いしかしなかったときの歌です。線香の匂いは嫌いではないけれど、アールグレイの匂いが良くて選んだばっかりにちょっと残念、、だけどお香(線香の香り)を焚くことで身を清め、夏とお別れできるのではないかと考え、夏への異様な執着もここで区切りをつけようと心に決めました。今歌を読むと、字余りすぎて短歌どころではない・・・
自分がお香の火が消えるまで煙を見つめていたので、イラストや文字の配置は煙がふっと登っていくイメージで構成しています。
✴︎ 振り返ってみると…
この歌集を振り返って言葉にすると、3首目のママさんと常連さんの会話を聞こえないふりをする歌を除いて、一瞬頭によぎるネガティブ思考をどうにかして明るく楽しいものにしたい自分が確実にいるな…と発見しました。ふりかえりって大事!
✴︎共有の宛先と手段
自分の環世界の理解を深めるために、これらの歌集を誰かに共有しなければなりません。でも誰に、どうやって・・・?短歌研究するぞ〜!と意気込んでから、ずっと考えているけど、全く思い浮かびません。歌集という本の形がありきたりだし、正直現状デザインの活動をしているとはとても言えない…ただの歌人になってきている。
この研究は、「自身の環世界の共有と共に、環世界の理解を深める」だけでなく、根底に「忘れてしまう思い出を忘れないように形にしつつも、忘れる自分も肯定したい」という気持ちがあります(強欲❗️)。忘れることをより自然に楽しめるような仕組みを作れたらいいのかな??
研究が何も進んでおらずお先真っ暗お手上げ〜状態ですが、とりあえず私が今すべきことは、歌集を販売できるレベルの完成度にして製本すること、後書きを追加すること、歌集の中の歌にまつわるようなグッズを制作し出品することかな、と考えています。頑張れ!自分!
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