走ってる情熱が あなたをきらめかせる | OWV・佐野文哉さんのオールスター感謝祭赤坂ミニマラソン活躍に寄せて
ランニングを実際にやってみて、気が付いたことがある。
長距離走は、体幹が命だ。
無理のないペースで走っていても、フォームが崩れ、体幹がブレブレだとかなり息が上がる。
反対に、スピードが出ていても、フォームさえ保っていれば、呼吸が楽になり、どこまででも走れてしまいそうに思えるのである。
しかしこの体幹というのはなかなかに曲者で、ただ姿勢よく走っていればキープできるというものではない。
例えば、横を向こうと5mmでも頭を動かそうものなら、たちまち体に通った芯はブレ、体力の消耗に繋がる。
例えば、手の振りを大きくすると、これもまた体幹がブレる一因になる。
もちろん、プロの陸上選手と張り合うほどの文哉さんと、運動音痴の私では、天と地ほどの差があるが、実力の差で長距離走と体幹に全く因果関係がなくなる、ということはないだろう。
何が言いたいかというと、文哉さんは「沿道のファンにファンサした上で好成績を残している」ということだ。
本来、ガチンコの走りでは無駄な動きでしかない、体幹がブレるような動きをしながら、結果を出している。
その姿に、私はいつも同じことを思う。
「手なんて振らなくていいのに」と。
エゴだと知っていながら、そう思わざるを得ない。
私たちは、あなたの力になれたら、と思って沿道にいるのに、その私たちが走りの妨げになってどうする。
もちろん、本人はそんなこと全く思っていないのだろうし、単に感謝の念や、気持ちの高ぶりの現れなのだろう。
しかし、精神的に助かっていても、物理的にはそうはいかない。必ずブレやゆがみが生じる。それをリカバリーするために余計な体力を消耗しているはずだ。
でも彼はやめない。
「余裕を見せ、愛と感謝を示しながら、結果も残したい」
これはプライドだ。
自らの威信と、ファンへの愛をかけたプライド。
そしてその理想を、彼は裏切ったことがない。
大阪マラソン芸能人部門1位、赤坂ミニマラソン初出場で優勝、27時間TV 100kmマラソン2位、二度目の赤坂ミニマラソンは4位だったが、プロアスリート以外ではタイム最速。
私たちが称賛する佐野文哉然とした品位は、途方もない努力の上に成り立っているということを、改めて痛感させられた気がした。
彼が、DJとして出演した際に選曲した、Folder 5『Believe』という曲の一節にはこうある。
「走ってる情熱が あなたをきらめかせる」
まさに。
4位だった今回、文哉さんは、ゴールの直前で手を合わせ「ごめん」と謝るようなポーズをした。
謝ることなんかない。
だって、目の前を駆け抜けて行ったあなたは、あんなにも美しかった。
”走ることは別に好きじゃない。たまたま足が速いから走っているだけだ”とのたまうあなたが、疾走していくその瞬間、恒星のように光り輝いているのを、私たちは、知っている。