ホームスクール:アメリカの規制法制
宮口誠矢(2017)「米国ホームスクール規制法制の現状と課題:「子どもの将来の自律性」と「親の教育の自由」の観点から」『東京大学大学院教育学研究科教育行政学論叢』37, pp.55-82
2024年7月26日
ホームスクールは全州(50週+D.C.)の州法で合法とされている
宮口(2017)は全州のホームスクール規制法規を網羅的にまとめている。
ホームスクールオプション
ホームスクールだけに対象が限定された、ホームスクール限定型のオプションと、私立学校や宗教学校で義務教育を提供するためのオプションが併存する
後者のオプションでホームスクールを行うことができる州もあるが、そうでない州もある
前者を設定してるのが33州、うち前者のみを設定しているのは22州
州によって数や名前はまちまちだが、ホームスクール、家庭教師、私立学校、宗教学校、などのオプションである。
通知報告義務
通知義務や報告義務を、開始時、毎年、その他、の形態で課している州がある。通知報告義務がない州もある
37州ですべてのホームスクールオプションで通知報告義務を課し、うち24州では毎年度の通知報告義務がある。開始時のみをすべてのオプションに義務付けて、それ以降に義務のない州が10州
14州では通知することなくホームスクールを行える。うち、すべてのオプションにいかなる通知報告義務もない州は4州
教師要件
教師の能力や資格について、すべてのホームスクールオプションに設けているのが12州。いずれかのオプションに対しては21州
親が教員免許を保有していなければホームスクールを行えないとする州はない。
インプットに関する規制
教えなければいけない科目に関する規定、授業時間に関する規定のふたつ
親が教員免許を有していなければホームスクールを行えない州はない
アウトカムに関する規制
標準化されたテストの受験義務、そのほかの方法で評価を行う義務のふたつ
標準化されたテスト以外の方法のみによって評価を行うよういずれかのオプションに義務付けている州はない
アウトカム評価を義務づけている州において求められるのは、基本的に認知的能力の評価である。
主な知見
ホームスクールにおいて「子どもの将来の自律」が議論されてきた(Reich, Glanzer, Kunzmanほか)が、そのための「異質な他者との関わり」をホームスクール・オプションに義務づけている州はない。読み書き計算能力などの認知能力を直接的・間接的に義務付けている。
子どもの自律性については、基本的に州の関与を通した育成は目指されておらず、その育成の在り方は親の教育の自由に委ねられている。
インプット規制を課す州が30州あるのに対して、アウトカム評価を課す州は16州にとどまっている。アウトカム評価を重視する公立学校政策の動向とは合致しない。
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