窓を同じくした者達よ④

また年月が流れ、同窓会をすることになった。過ぎ去った時間で、みんなは移動し、だれかと繋がり、同窓会に出席する人の数は1度目の同窓会には程遠い。それでも、1度目の同窓会で辛酸を舐めたにも関わらず、わたしはまた同窓会に出席することにした。幹事の役だって、わたしがいなければだれかがやる程度のことだ。わたしが出席するのはただ、自分がいま立っているその下に蓄積されたものをきちんと受け止めたかったからだ。
あのふたりは相変わらずいっしょだったし立食パーティー中もしばしばなにか言い合っているのをみた。かわいかった子は相変わらずかわいい。みんなはあいかわらず自分を顕示することに夢中で、めかした格好で自分自身ではなく自分のステータスを話し、そして合理的な情報の交換をしている。
わたし自身も、それなりの堅実さで就職し、家族がいるけれど、そんなことはあえて言うことでもない。変わらないあのひとが、わたしのことを訊ねて答えた程度だ。「ふうん、いいなあ」と言っていた。

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ほかのものでもありえたけれども、すでにそれと決まってしまった過去。変えられない過去。
そうしたものの蓄積のうえに、いまのわたしが確固として立たされている。
そして過去は時々、わたしが確かにそのうえでのみ存在しうることを無理やりにでも感じさせてくる。過去からは逃れられない。
過去をのぞき込み、それから逃れる気持ちと受け入れる気持ち、その合力でわたしは過去を乗り越え未来へと心を投げ進めてゆく。
つぎの同窓会ではどれほどのひとがくるのだろう。本当は仕事で行き詰まっているのに虚飾していた彼はきっと来ない。病気をわずらうあの子も厳しいのかもしれない。
ひとは減り、会も質素になってゆく。
現在と未来は変化するが、過去は変わり様もない。
紛れもなく窓を同じくした者達よ、みんながそれぞれの場所でそれぞれの仕方でしあわせであるように。祈りを込めて。

終or続

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