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75_「高校野球の7イニング制導入」について考える

まず最初に「野球の素人が何を言う」的なご批判はご勘弁願いたい。さらに言うと、素人だからゆえの無知や浅はかな考えを許していただければありがたい。

「野球は3の倍数のスポーツ」だという話を聞いたことがある。3ストライクでアウト、3アウトでチェンジ。守備のポジションは9つ。イニングは9回で、打者は必ず3度の打席が与えられる。

なるほど3の倍数で成り立っている。これが7イニング制になると、たとえば打席が2回しか回ってこない選手も出てしまう可能性も出てくるし、今までの3イニングずつの前半、中盤、後半という感覚からすれば、野球のリズムみたいなもののイメージが変わってしまう、ということらしい。

ネットでも「回数が減れば逆転しにくく、先行逃げ切りという戦術が多くなる」「7回制では実力差が現れないまま試合が終わる」「番狂わせが増える」「野球が全く変わってしまう」という意見をみると、野球経験者や野球ファンの方が7イニング制には反対なんじゃないかと思ったりする。

「選手の健康は何より優先されるべき」というのがこの議論の大前提なのだろうが、猛暑の中で行われる夏の高校野球「甲子園大会」に限っての「7イニング制」が検討されているという解釈でよいのか?プロ野球は9イニング制堅持ということで良いのか?春の選抜大会は?他のスポーツ、特に屋外競技は高校野球に追従することだって考えられる。

たしかに近年の暑さは昔の暑さに比べて気温だけでなく、湿度や暑さの質みたいなものが違ってきているような気がする。「甲子園はとにかく暑い」というのを聞いたことがある。グランドの選手だけでなく、スタンドでの応援も相当な暑さなのだろう。熱中症が話題になるのもうなずける。水分補給、うちわや手持ちのハンディ扇風機で風を送る、保冷剤や氷で冷やす、だけでは追いつかないということも想像に難くない。

暑さ対策としての「クーリングタイム」「2部制」についての検証はどうだったのだろう。「暑い場所、暑い時間帯の活動を減らせば熱中症のリスクは軽減される」という熱中症対策だけを考えるのであれば、大会の開催時期を変える。ドームとかの空調の完備された球場で野球をすることについては議論されたのだろうか。雨天中止があるんだから、高温中止があってもいいんじゃないのか?

高校球児にとって甲子園は「聖地」なのだろう。「今日の甲子園、どうなってる?」と言えば、誰もが「今日の高校野球(正式名称は全国高等学校野球選手権大会ではあるけど)はどうなってる?」という意味に聞くのだと思う。選手だって、監督だって「甲子園」を目指して戦うのだろう。

日本の夏はすでに「亜熱帯」と言われ、スポーツどころか体を動かす気候ではない。学校での体育の授業は、熱中症警戒アラートが出れば中止になると聞いている。今年の甲子園大会は106回目の開催だったか。100年以上の歴史があるというのは素晴らしいことだが、選手の健康を考えれば、甲子園でなく、ドーム球場で大会を開催しては?と考えるのは検討されないのだろうか?どうしても「甲子園」で、というのなら甲子園をドーム球場にできないのだろうか。

経費の問題というのならば、放映権ビジネスで解決するという手段もあるのではないだろうか。それぐらい思い切ったことを考えてほしいと思うのは、素人考えではあるのだけれど。

海外では高校生年代の野球は7イニング制のところもあると聞いている。日本では中学校までは7イニング制だったか。野球少年からしたら、高校生になって9イニング制の野球ができることはプロ野球やオリンピックと同じ野球ができることは嬉しいことに違いない。でも高校野球が7イニング制になったとしても、熱中症の危険性が大きく減るというわけでもないだろう。

ナイターで実施することにしても1日の試合数が限られてしまうので1日に消化できる試合数が減ってしまう上に大会が長期にわたる。勝ち残ったチームは今よりも長期滞在を余儀なくされてしまうし、引率や役員の先生は授業のある学校に戻らなくて支障はでないのか。実際の大会運営にしても、審判やボランティアの協力は可能なのか?地区大会が行われる夏休み前の授業も大変だったに違いない。甲子園を使う阪神だってプロ野球だって困るだろう。

じゃ、他の時期、例えば秋に開催してはどうか。高校生の本分である勉強はどうする?夏休みが終われば授業が始まる。進路も考えなければならない時期になるだろう。全国大会に参加した高校生が全員プロ野球に進むわけではないだろう。高校野球参加者だけを特別扱いするわけにはいかない。さらに、地区大会は真夏の暑い中で熱中症患者を出しながら行うのか、地区の秋季大会はどうするか、という問題もある。

素人の野球ファンから見ても日本の高校野球が大きな展開期を迎えていることはわかる。多分国民のほとんどが「どうなるんだろう」と注目しているに違いない。気候だけでなく、社会環境から何もかもが絶えず変化している今、高校野球ファン、スポーツファンとして「選手ファースト」の視点に立った変革を今後を見守りたい。