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国際学会の参加でカナダに行って来ました

はじめに

武蔵野大学データサイエンス学部4年のNitta(@5u_rw)です。
タイトルの通り、カナダに行って国際学会に参加して来たので、学会参加と海外渡航に関して経験したことなどを綴って記録を残そうと思います。
この記事が愛すべき後輩のモチベーションに繋がったり、海外渡航の準備の参考や不安の払拭、学会発表に対するイメージ、大学のブランド向上などに繋がったら幸いです。


発表した研究テーマ

私は学部2 ~ 4年の間で友人と指導教員と一緒に取り組んできた共同研究の成果を"Time-Series Flexible Resampling for Continuous and Real-Time Finger Character Recognition"というタイトルで論文を投稿し、発表しました。
ざっくり言うと、手話を補助する「指文字」を対象とした実用的な翻訳システムの実現についての研究です。

耳が聴こえない人同士や、耳が聴こえない人と耳が聴こえる人との会話においてよく手話が用いられ、重要な役割を果たします。しかし、人名や駅名や専門用語などの固有名詞や世の中的に新しい単語などは手話の語彙に無い場合があり、代わりにあいうえお五十音を手や指の形を用いて1文字ずつ示す「指文字」を使うことがあります。

指文字一覧(https://www.illust-box.jp/sozai/101472/)

手話や指文字の自動翻訳システムが実現できれば、耳が聴こえない人と耳が聴こえる人との会話を支援することができます。
手話や指文字の自動翻訳システムを実現するための研究はこれまで数多く行われてきましたが、社会で普及しているかと言うと全然そんなことはないです。
2021年に電気通信大学とソフトバンクの共同研究の成果としてSureTalkがリリースされて、行政の窓口などで導入される事例が出てきて「ようやく」と言う感じです。

それはそれとして、手話や指文字の「実用的な」自動翻訳システムの実現にあたって学術的・技術的課題が何個かあり、それらを同時に克服することで以下の4つの要素を満たす指文字翻訳システムの実現と「社会実装」を目指して研究を進めてきました。

  • 軽量に構築できること

  • リアルタイムかつ連続で翻訳できること

  • 人々が日常的に使う馴染んだデバイスで使えること

  • 人々にとって簡単に使えること


参加した学会

今回参加したのは通称WIと呼ばれる国際学会で、正式名称は"The 21st IEEE/WIC/ACM International Conference on Web Intelligence and Intelligent Agent Technology"です。
学会ごとに扱う分野や内容の棲み分けがある程度あり、WIはWeb系の技術やデータ活用を人々の生活に応用するための研究が多いです。
以下に示す図は、機械学習やデータマイニング系の国際学会の権威の高さや主に取り扱う内容の分布など、立ち位置を示したマップです。
機械学習やデータマイニング系の国際学会の中でもKDD, NeurIPS, AAAI, ICML, CVPRあたりは特に世界的に権威が高いところです。
それらの学会と比べると、今回私が論文を投稿して査読が通って発表しに行ったWIという学会は少し下のランクに当たります。
今回は世界35ヵ国からレギュラーペーパーとワークショップペーパー合わせて229本の論文投稿があり、レギュラーペーパーの中ではフルペーパーとショートペーパーで合わせて54本が採択されたようです。

機械学習・データマイニング分野の国際学会の立ち位置

学会会場に辿り着くまでの過酷な道のり

もちろん研究そのものも過酷な道のりでしたがそっちは割愛します。
学会はオフラインとオンラインでのハイブリッド開催で、オフラインではカナダのナイアガラフォールズという街で行われました。
学会開催期間のうち、自分の発表日がいつなのかが結局学会の数日前に告知されたのですが、フライトもホテルもそれよりもっと前に予約しないと準備や経費申請の事務手続きが間に合わなかったので、学会が開催される期間丸々滞在できるように余裕を持たせてフライトとホテルを予約しました。その結果旅費が膨れ上がりました。
また、学会会場は学会のサイトに当初カナダ・トロント市内北部にあるヨーク大学の住所が記載されていたのでヨーク大学近くのホテルを予約していたのですが、学会の2週間ほど前に見たらそこから130kmほど離れたナイアガラの滝の目の前にあるマリオットホテルの住所に変わっており、慌てて、否、冷静かつ臨機応変に移動や宿泊について追加で調整しました。130kmと言うと京都 ~ 名古屋間や鎌倉 ~ 筑波間くらいの距離で、トロント ~ ナイアガラフォールズ間で電車もしくはバスで2 ~ 3時間揺られて移動する必要があります。
レンタカーを借りて自分で運転して行こうと思いましたが大学当局の規定でNGなようで、公共交通機関を使うことにしました。
当日のナイアガラ入りは難しいのでナイアガラに追加でホテルを予約することにしました。トロントのホテルはキャンセル料が全額発生する状態だったので基本的にトロントに滞在し、発表日前日だけ1日重複した形でナイアガラに滞在しました。
確かに学会のサイトのトップページには最初からNiagara Fallsの記載がありましたが、Conference Venue(学会会場)のページにヨーク大学の住所の記載があったことから、私と同様にヨーク大学近くのホテルを予約していた発表者が他にもいました。
さらには発表2 ~ 3日前になって「現地での発表が意外と多かったから」という謎の理由で発表時間を15分から10分に減らされ、空港や飛行機やホテルで発表内容を削るべく資料の修正に追われていました。
他の発表者たちと休憩やランチタイムで雑談している中で、発表日や会場や発表時間の直前での告知や変更で振り回されたとの話題は本当によく挙がりました。

トロントまでフライトは成田からモントリオール経由で飛びました。トロントまでの直行便もありますが、往路はモントリオール経由にした方が安かったので乗り継ぐことにしました。しかし、モントリオール行きのフライトが遅延して乗り継ぎ便に間に合わなかったのでトロント行きのフライトを変更したのですが、そのフライトも遅延していて呑気に空港で食事を摂って出発を待っていました。

定番料理のフィッシュ&チップスとビール

食事を終えて搭乗ゲートに向かうと悪天候のためにトロント行きのフライトが欠航になっており、さらにフライトの変更をする羽目になりました。サービスカウンターで私の順番が回ってきた時にはその日のフライトは全て満席になっており、翌朝のフライトに変更しました。
フライト変更を受け付けていたサービスカウンターの列で私の前に並んでいたのが偶然日本人の方で、一緒にモントリオール市内のホテルに向かい、翌朝一緒にトロントに飛ぶことにしました。私から持ちかけて名刺交換し、トロント到着後に別れました。異国の地で同胞に助けてもらった出来事でした。
トロントには予定より12時間遅れて到着し、ホテルに向かってチェックインをしてその日はトロント市内を観光しました。


学会会場にて

色々ありつつもなんとか会場になっているマリオットホテルという高級ホテルに大雪の中辿り着き、会場の受付で名札や景品を受け取ります。
参加にあたって論文投稿料と学会参加費を事前に払っています。

右:学会会場のマリオットホテル
名札と景品

私の発表は午後からで、午前中は聴講のみで、午後からも自分の発表前後は他の発表を聴講していました。
タイムキーパーがおらず、発表が時間超過していたり、質疑応答は満足のいくまで時間を気にせず行われていたり、事前に発表資料の投影手順や機材の扱いに関する説明が無かったために操作に戸惑う発表者が多く、スケジュールのずれが大きくなりました。
ランチタイムでは15分で済ませるように言われましたが15分で済むことはなく、私含めて世界から集まった研究者たちが食卓を囲んでランチと雑談を楽しんでいました。

ランチ

尚、ランチを共にしたフランス人の研究者との雑談で私の英語力不足により会話が通じないことがあり、たまに気まずい雰囲気になっていました。それでもなんとか会話に努めました。
午後になる頃には大幅にスケジュールが遅れており、運営側から状況を説明されていないオンライン参加の発表者からは困惑の声が挙がっていました。
私への影響はと言うと、発表開始が遅れたのは問題ありませんが時短のために質疑応答がカットされたのが少し残念でした。
世界中の研究者たちからの「素人質問」は不安でしたが、学会発表において質疑応答こそ研究のアップデートに繋がる大事なやり取りであるのでそれが無いのは勿体ないことです。
それでもこの日の為に日々研究を進め、論文や学会発表資料をまとめ、10分という短い時間の中で英語で上手く伝えられたのではないかと思っています。やり切りました。

俺のターン

観光

トロント着いてすぐの日と発表翌日は観光していました。
トロントもナイアガラフォールズも良い街でした。写真は一部抜粋。

トロント市役所前の広場
世界三大瀑布の1つ、ナイアガラの滝
トロントの街と五大湖の1つ、オンタリオ湖
ディープな香りがする路地
1番美味しかったスモークサーモンのベーグルとカクテル

海外渡航で必要だったこと

フライト

国内の航空会社だと安心だが、海外の航空会社の方が価格を抑えやすい。
セールで相場より安かったエアカナダを選択。成田空港にちゃんとエアカナダのカウンターがあり、日本人スタッフが常駐している。搭乗口や機内では英語 / フランス語 / 日本語で案内あり。搭乗のチェックインは空港の機械でもスマホアプリでも可能。スーツケースの預け入れもスムーズにできる。荷物紛失(Lost Baggage)が怖くてAirTagを忍ばせておいたが、乗り継ぎ便も含めて最後まで無事に届いた。
機内持ち込みできない物、預け入れ荷物なら持ち込める物などは国や航空会社によって異なるので十分に確認されたし。
各種手続きはアプリで一通り済むので英会話する機会はあまり無いが、空港や飛行機で必要な英会話はその辺のサイトで調べておくと良い。
なお、経由地のモントリオールで悪天候のために欠航になり、フライトの変更手続きでサービスカウンターで多少の英会話が求められた。

ホテル

立地、価格、設備のトレードオフで選んだら良いと思う。
アプリ1つで簡単に世界中のホテルの検索と予約が済むbooking.comやexpediaがおすすめ。
チェックイン時にデポジットで1 ~ 3万円ほど支払って滞在中に何もなければ後で返金というパターンがほとんど。クレカでデポジットを支払った場合はカード会社経由で口座に返金されるがある程度日数を要する。
学会発表での渡航は今回のように直前まで旅程を組みにくい場合があるので、直前まで宿泊日の変更可能でキャンセル料も最小限で抑えられるホテルを選んだ方がいい。
ホテルのチェックインとチェックアウトで英会話が必要だが何も難しいことはない。

現地移動

トロント市内の地下鉄での移動がほとんどで、日本で言うところのSuicaやPASMOのような交通系ICカードのPRESTOカードを駅の自動販売機で購入してチャージして使用していた。
学会の会場の変更でナイアガラの滝のある街に行く必要があり、電車とバスの選択肢があったがバスを選択してWebで事前予約した。
どうしてもアクセスの悪い場所に行く必要があったり、公共交通機関では時間がかかりすぎる場合にUberが便利。電車やバスより値段は上がるが、アプリで乗車地点と目的地を設定してアプリ上で決済するだけで連れて行ってくれるので本当に便利。
基本的に英会話は必要ないが、バス乗車時に予約番号の提示が必要なのと、Uberで降車地点の微妙な調整で会話することはある。

書類

パスポート紛失時に現地大使館での再発行に使用するために戸籍謄本もしくは戸籍抄本に加えて証明写真(5cm x 4cm)を持っておくと良い。
任意だが海外旅行保険の加入と保険加入の証明書類を携帯しておくと安心。クレジットカードの付帯保険でも十分。
現地で車を運転する予定があるなら国際運転免許の取得が必要。完全プライベートの旅行以外で運転することは基本的にない。

入出国審査 / 検疫

出国審査は何も気にすることないが流れくらいは軽く調べておくと良い。
入国審査は国によって異なるので現地入国も帰国のための日本入国も流れなどを十分に調べた方が良い。
カナダ入国には日本出国の前に電子渡航認証(eTA)の登録が必要なので事前に調べて登録必須。また、入国前にArriveCANというアプリで連絡先や渡航情報の登録が必要。
日本入国には2022/11/22現在、Visit Japan WebというWebサイトで連絡先や渡航情報の登録に加えて3回のワクチン接種証明書の登録もしくは入国72時間以内のPCR検査での陰性の結果の登録が必要。また、税関の申告も済ませておくと良い。
これらを事前に済ませておくだけで本当にスムーズに入国できる。特に現地の入国審査で英会話は必要で入国審査官が怖かったりするが、テンプレさえ覚えておけば基本的に問題ない。

税関手続き

渡航先の入国時も日本帰国時も持ち込みできる物の種類と持ち込める量の上限、免税範囲に規定があり、国によって異なるので事前に調べておくと良い。免税範囲を超えた物を持ち込む場合は申告して納税すれば問題ない。
例えばアルコール類の免税範囲が2Lまでのところを3L持ち込むと空港の税関の目の前の事務所で酒税100円を現金で納税するなど。

SIMカード

カナダでの電話番号が求められる場面が多かったのでポケットWi-Fiより電話番号が付与されるSIMカードがある方が良いと思う。6日の滞在で7GB契約で十分だった。
格安SIMを選んで異国の地で繋がり悪くてトラブル時に詰むと怖いので下手に格安SIMを選ばない方が良い。
現地到着後に日本で使用するSIMを取り外した後は絶対に紛失しないように気を付けて管理する。

クレジットカード

クレカ対応でVISA非対応なことはほぼ無いのでVISAが一番安心。カナダは多くでVISA / Master / American Expressが対応しており、JCB対応の店は見なかった。たまにAmex非対応の店もあったのでVISA or Masterは必須。飛行機やバスなど海外のサイトでのWeb予約でVISAで決済する際に、普段海外のサイトでの決済が無い場合は不正利用を疑われて決済が実行できない場合がある。その場合はカード会社に連絡してブロック解除(異常検知の緩和)を依頼する必要がある。VISAが特に厳しい印象。

現金

100カナダドルを空港で両替して現金で持ち歩いていたが、ホテル宿泊最終日に部屋にチップを置いて出る以外では1銭も現金を使うことがなく全てクレカで決済していたので、現金は国によっては少額でいい。

チップの知識

特に北米ではチップを支払う文化があり、これを知る必要がある。
チップの支払いが必要なのは多くの場合で飲食店。飲食店でもファストフード店やテイクアウトの場合は基本的にチップは不要。目安は最低でも15%で実質20%前後と思っておいた方が良い。クレカ払いの場合、店員が持ってくる小型端末で決済方法やチップの金額or割合の選択画面が出てくるので自分で操作して支払う。現金の場合はレシートにチップの選択肢が記載されているのでどれか選んで丸とか付けてその分支払う。
コンビニや土産店といった小売店は基本的にチップは不要。
ホテルはフロントでは不要だが、宿泊最終日に清掃スタッフ向けに部屋に現金でチップを置いておく。
Uberは乗車後にアプリ上でチップ支払い画面が出てくる。
その他の接客業は知らない。

その他

カナダに関しては飲食店では自分の席に担当の店員が付き、注文する際はその店員に声をかけるわけでもなく手を挙げるわけでもなく目線を送る。全然気付いてもらえない場合は控えめに手で合図する。
特に酒類の購入や注文時にはIDの提示が求められるが、身分証のことなのでパスポートを提示したらいい。
特に注文の場面で英語が聴き取れずに聞き返す場合に"One more please."言うと注文の品の追加と思われてしまうため、"Could you say that again?"が無難。


費用

主な出費は以下の通りです。

  • 成田 ~ トロント往復航空券:約18.5万円
    エコノミークラス。エアカナダのセールで少し安め。
    価格優先のため往路のみモントリオールで乗り継ぎあり。

  • ホテル(5泊分):約7万円
    発表日が直前まで判明せず、滞在日数に余裕を持たせたために高額。

  • ホテル(1泊分):約1.5万円
    経由地のモントリオールにて悪天候で乗り継ぎ便が欠航になったため。

  • ホテル(1泊分):約1万円
    会場の直前の変更で130km離れた場所に前泊する必要があったため。

  • 現地交通費(電車 + バス + Uber):約1.2万円
    会場の直前の変更で移動が増えたために本来の予定より倍増。

  • 飲食:約3.2万円
    9食分、チップ含む。
    ファストフード店とテイクアウト以外では基本的にチップ20%前後必須。

  • お土産:約2.5万円

  • カナダ用SIMカード:約0.8万円
    25GB契約したので高額になったが7GBで十分だった。

  • 総額(概算):約35.5万円
    うち最低限必要経費:約28.5万円
    うち学会と悪天候に翻弄されて生じた臨時出費:4万円
    うち個人的な贅沢費用:3万円

上記の出費を賄うための経費が以下の通りです。

  • 大学からの補助金:約10万円(確定)

  • 学会からの補助金:約7万円(未定)


まとめ

これまで2年半の研究の成果を発表すべく、ある程度上位の国際学会に参加してきました。
会場に辿り着くまでに色々と翻弄させられましたが学会では上手く発表できたと思います。
カナダでの発表ということで不慣れながらも1人で航空券やらホテルやらの手配や諸々の手続きをこなしました。
国際学会の現地での発表と海外渡航の味を占めました。

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