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先生という人たち⑤ /20230522

日付が逆転してしまった。

月曜日、いつものように限りなく具合が悪かった。プレッシャーなのだと思う。休みが終わってまた人の中に出ていかなければいけないのが。

身支度をしていて何かものが落ちたとかそういう小さなことにイライラし、イライラしたことで自分が嫌になりまた落ち込む。

1か月ぶりにバレエのお稽古場に行く必要があった。まだ怪我は治りきっていないけれど、プログラムに載せるための写真を撮っていただかないといけない。50文字くらいのコメントも書いて提出しなければいけない。カメラマンの方が来てくださった全体練習の日はとても歩ける状態ではなく欠席したため、先生がスタジオで撮ってくださることになっていた。
「前回の写真を使っていただくのではダメですか」という言葉が何度も喉まで出かかるのをこらえる。

写真を撮るということは頭をやらないといけない。化粧もしたい。準備に時間がかかる。レッスンの邪魔をしたくないから早めに行きたい。
16時まで仕事、病院、頭やって顔やっていつもより早くお稽古場に行く。不可能に感じる。もうおしまいだと思う。
病院をスキップすれば1時間稼げる。でも1週間先延ばしにするには具合が悪過ぎる。気が狂いそう。

落ち着け。ひとつひとつやるんだ。あまり自分で自分を追い込むとできることもできなくなるぞ。

「テンションが低いんだな」

変な声が出た。何、テンションが低いって。

「テンションが低いんだろう」
「そうですか…」
「怪我もして、ついてないな」
「それはそうですね」
「よくないことが続いただろう」
「そうですね」

「バチが当たったんでしょうか?」
「そんなことはない」
「神の怒りに触れたとか」
「ついてないだけだろう」
「何かこう、触れてはいけない神の領域に触れたとか」
「そんなことはない」
「わたしの行いが何か」
「そんなことはない」

そんなことはないか。

「もっと自分に優しくしたほうがいい」
「(でた! AIも同じ意見!)」
「自分に優しくするんだよ」
「具体的にどうすれば優しくしたことになりますか」
「温泉に行く」
「なんですかそれ?!」
「東京にも温泉はある」

「いずれにしても怪我が治れば多少元気も出るだろう」

プログラムに載せる作文、もしも舞台に立てなかったときのことを考えて「出演することができて」と書かず「参加することができて」と書いた。
けっこう本気で思ってる。
バチが当たったんじゃないかって。
何のバチかはわからないけど。

「何も良いことがないからな」

先生はたまに身も蓋もないことを言う。
そうでもないですよ。
そうでもない。

そうでもないってば。

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