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キュビスム展-美の革命(国立西洋美術館)レポ【きまま日記27】

今週、国立西洋美術館で開催中の企画展『パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展―美の革命』、小企画展『もうひとつの19 世紀―ブーグロー、ミレイとアカデミーの画家たち』、そして常設展を見てきました。
パリのポンピドゥーセンターの所蔵品が多数来日(そのうち50点以上が日本初出品)、展示物は資料含めて約140点!と見応えある内容でとっても楽しかったです。

展覧会の感想、会期中にアップしたいなあ…と思いつついつもズルズルと月日が経ってしまい出し時を逃しがちなので、今回は(自分の中では)早めに感想書いてみました。
興味のある方はどうぞ〜。


企画展『パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展―美の革命』

今回のキュビスム展は日本では50年ぶりとなるキュビスムの大型展覧会。
パリのポンピドゥーセンター国立西洋美術館の共同企画で112点の作品を通して、キュビスムの始まりから過程、それ以後までの流れを見ることができます。
会場内は一部の作品、エリア以外は撮影自由。

展示冒頭はキュビスム以前、その誕生に大きな影響を与えたセザンヌから始まり、ピカソブラック、フェルナン・レジェとファン・グリス、ロベール・ドローネーとソニア・ドローネー…とキュビスムの誕生からその変化を観ていくことができます。

会場内の様子

上の写真の中央にあるのは展覧会のメインビジュアルにもなっているロベール・ドローネーの《パリ市》 (1910-1912年)。
思っていたよりも大きな絵でびっくり。

ロベール・ドローネー(左二枚)とソニア・ドローネー(右二枚)の作品

上の写真の一番右端に展示されているソニア・ドローネーの《シベリア横断鉄道とフランスの小さなジャンヌのための散文詩》という、同名の本の挿画として描かれた作品が素敵でした。

ソニア・ドローネー
《シベリア横断鉄道とフランスの小さなジャンヌのための散文詩》1913

絵の下の部分のアップ。小さく描かれたエッフェル塔から空へ向けてカラフルな抽象的イメージが広がっています。

《シベリア横断鉄道とフランスの小さなジャンヌのための散文詩》部分


私的に面白かったのはフランスの彫刻家レイモン・デュシャン=ヴィヨン(マルセル・デュシャンの兄)による1912年の建築インスタレーション《メゾン・キュビスト》
キュビスムを建築のデザインに取り込もうとした試みですが、作られたのはデザイン画と模型、展示用として石膏で作られた一階部分のみで実際に家が建てられることはありませんでした。

レイモン・デュシャン=ヴィヨン《メゾン・キュビスト》模型写真 1912年
レイモン・デュシャン=ヴィヨン《メゾン・キュビスト》 1912年
石膏で作られた《メゾン・キュビスト》の一階部分の写真。
壁にはメッツァンジェやレジェ、ローランサンのキュビスム絵画がかけられていた。

ですが、パリで始まったキュビスム運動に影響を受けて、同じ時期にチェコでは実際にキュビスムを建築に組み込んだキュビズム建築の建物が1911-1925年にかけていくつも建てられていました。

チェコのキュビズム建築《コヴァジョヴィッチ邸》 (1912-1913)
※にしうらが旅先で撮ったものなので、キュビスム展とは関係ありません。
チェコのキュビズム建築《ネクラノヴァ通りの集合住宅》 (1913-1914)
※にしうらが旅先で撮ったものなので、キュビスム展とは関係ありません。

2ヶ月前のチェコ旅行で訪れた首都・プラハでキュビズム建築の建物廻りをしてきた所だったので、実現はしなかったもののフランスのキュビズム建築である《メゾン・キュビスト》の写真とデザイン画が観れたのは嬉しかったです。


展示のラストはキュビスムの後のピュリスムへ
ル・コルビュジエやフェルナン・レジェ、ジャック・リプシッツの作品が並ぶ。

キャプションの解説もわかりやすかったし、当時の書籍や風刺画などの資料展示で世間からキュビスムがどう捉えられていたかなども作品と合わせて知ることができ、20世紀の美術にそこまで詳しくない自分でもとても楽しく観れました。勉強にもなってよかったです。
《エッティンゲン男爵夫人》のレオポルドシュルヴァージュという画家、初めて知ったけど好み。あとナターリヤ・ゴンチャローワが好きなので、2枚だけど展示されてて良かった。

『キュビスム展』は国立西洋美術館にて2024年1月28日(日)まで開催中。キュビスムってよくわからないけど気になる…という方も是非。


小企画展『もうひとつの19世紀―ブーグロー、ミレイとアカデミーの画家たち』

常設展内の展示入り口

こちらは国立西洋美術館の常設展内にある版画素描展示室にて開催されている小企画展。

19世紀後半のフランスおよびイギリス美術において、当時の画壇の主流を占め、美術における規範を体現していた王立のアカデミー所属の画家たち。現代においては写実主義や印象派、ラファエル前派や唯美主義の陰に隠れてしまっているが、彼らもまた19世紀の時代の変化を感じとり、伝統を守りつつも需要に応じて主題や様式、媒体を変容し様々な作品を製作していた…そんな彼らの作品に注目した企画です。

展示室の様子

丁寧に仕上げられたアカデミー画家の絵画、絵画の新しい可能性を開いたキュビスム展の後に見るとギャップが大きくて楽しい。

ウィリアム・アドルフ・ブーグロー 《ガブリエル・コットの肖像》 1890年
ジョン・エヴァレット・ミレイ《あひるの子》 1889年

正直この辺の画家の絵、好きか嫌いかで言えばそんなに好みではないんですけど、細部の書き込み、肌や髪、服の質感の描写はやっぱり素晴らしい。シンプルに絵が上手い。いやもう「絵が上手い」とかの範疇じゃない。「なんだこれ?人間が描いているのか?」という気持ちが味わえて楽しい。

ブーグローの《ガブリエル・コットの肖像》で描かれた、少し歯を見せた自然な笑顔の捉え具合は「すごいな…」と思わずため息が漏れました。

あとこの展示会場の深い青色の壁がすごくいいと思いました。茶色ベースの絵と額がめちゃくちゃ映える。

『もうひとつの19世紀―ブーグロー、ミレイとアカデミーの画家たち』展は国立西洋美術館にて2024年2月12日(月・休)まで開催中です。


常設展

国立西洋美術館のコレクションが展示されている常設展は、企画展のチケットで入れます。常設展だけなら小企画展も含めて観覧料500円。安い!

本館2階 14-18世紀絵画のコーナー

西美の常設展はいつ何度行っても楽しい。

本館2階 モネの展示室

そして何度行ってもその度に初展示や新収蔵作品があるのがすごい。

初展示作品のポール・セザンヌ《散歩》1871年
新収蔵のホアキン・ソローリャ《水飲み壺》1904年
初展示作品のパブロ・ピカソ《小さな丸帽子を被って座る女性》1942年

15時くらいに美術館入ったので、最後は閉館17時半ギリギリになってしまいましたが。企画展、小企画展、常設展までしっかり観れて満足度高い1日になりました。

新刊1階 19-20世紀美術のコーナー



おわり

…ということで、今回はキュビスム展の感想でした。ここまでお付き合いありがとうございます。それでは、また次の更新で。

2023.12.07

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