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夜光虫だったころ


あれもまた
ちょうど2月
寒空の下

薄い膜が張られたみたいな
静かな期待と高揚がその夜を導いていた


歩く


受け入れるでもつきはなすでもなく

上書き保存だけで

生き永らえさせてくれる静かな街


夜風が心地よく通過した



むかう


そこは混沌のパワースポット

つぎはぎだらけの精神に射す一縷の感情
そこに見えた 唯一のこたえを信じた




5年後、夜

同じ場所

当たりまえに若すぎた五感は
少しずつずれてあかの他人だった

さびてしまったこの身には
その小さな箱はすでに異質だと知った

浅い呼吸が
めまいがさとす

眼前の無数な熱気と多幸感をはね返し立っていた
あの頃となにひとつ変わらないのに


夜はこれから冷えます


何者でもなかった

やはりあの日みたいに蘇らせる


泣いている人がいる

見知らぬコンビニに客として吸い寄せられる


歩く


たしかにこの身を形成した断片

追ってくる響き

外付けHDから引っ張り出すみたいに


あの夜の答えが
今日だったとして
わらえるくらい残酷で滑稽だ

意識の洪水から這いでて
澄んだ空気を吸う瞬間

もう踏み入れることはない世界に別れを告げる


そこがありふれた非日常だった頃

言葉と薄い感情のすきまをうめた
小さなあこがれがうずまく場所

わたしにとってのライブハウス