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マヨネーズ・コンプレックス

学生時代、習い事や授業などを通して「得意なことを見つけさせられる」という経験をしてきた。結局没頭できるものや特技は見つからず、私の場合は苦手なことが浮き彫りになったのみだった。

例えば、水泳。プールの授業でみんなが難なく泳げる15mが、犬かきでも泳げなかった。水泳帽につけられた階級ワッペンがいつまでも私だけ変わらず、悔し恥ずかし、複雑な感情で常にうつむいてやり過ごしていたことが懐かしい。

そんな私も大人になり、やり過ごすくらいならやらないでいい選択肢をとるようになった。ただ、つい先日唐突にある苦手なことを自認するようになった。それは、「居酒屋でいい感じのメニューを注文すること」である。

彼と仕事終わりに居酒屋で待ち合わせ。ちょっと遅くなるから先に頼んどいて、と言われて店内へ。メニュー片手に横の卓を盗み見ると、どうやらお通しが枝豆であることが判明。これで緑の野菜が摂取できることは確定した。ならば、と冷やしトマトに惹かれつつもトマトが苦手な彼を気遣い、無難にポテトサラダを。お腹が空いているので酒が進みそうなチキン南蛮も。あとはこの店名物とでかでかと書かれたアジフライを頼んどいて待つか、と。

続々と運ばれてきて見渡すと、私はマヨネーズフェスに来たのか…?と錯覚する光景が。

マヨに次ぐマヨ


おいおい、なんか全部同じ味がするぞ。到着した彼も一言、「腹減ってるけど、さすがにこれはきつい」と。

うん、私も思った。思ったけど認めたくなかった。だってめちゃめちゃ身に覚えがあるから。いつかの会社の飲み会で下っ端の私が注文担当となった際、ポテトサラダとタルタルを一堂に会させてしまったことがフラッシュバックした。

普段は心配性で後先を考えないと動けない質だが、なぜか居酒屋で料理を注文する時はハイになってしまい客観性と推察力が欠落する(まだ酔ってないのに)。大学生の時ろくに飲み会に顔を出していた訳ではないのに、なんでか「みんなモリモリ食べるよね?!」というマインドが抜けてないからなのだろうか。抜けてないというよりか、コロナ禍の影響で時間が止まってるのかもしれない。

水泳や物理や英語、あの頃見つけた得意でないことは言ってみれば人に迷惑はかけなかった。飲みの場における同席するメンバーへの気遣いやメニューのチョイスは、悲しいことにその人自身のセンスに帰着する。

というか、ヘビーかつマストマヨメニューであるチキン南蛮を避ければ事なきを得るのでは??

帰宅後2人して胃もたれの中就寝。情けない。次から梅水晶ときゅうり…と呟きながら入店するこもを忘れない。そして私が1人で注文しようとしていたら、どうか店員さんに肩を持って「お前は!アラサーだ!」と訴えかけてほしい。

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