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パフェに感動した話

 こんばんは、1970年代生まれ、都内一人暮らし、ゲイのしおたです。甘い食べ物全般とカフェイン系の飲み物全般が好きです。ただしエナジードリンクを除く。

 SNSで知ったお店に足を運んでみるということは誰もがやっているかと思います。今年に入ってからだったでしょうか、とても綺麗なパフェを出すお店があるらしく、行ってみたいなと思っていたところへ先日実際に行ってきました。目白駅から少し歩いたところにある「カフェ クーポラ」。季節の希少な果物を使ったものなど、数量限定どころか予約必須なパフェもあるらしいのですが、今回は初めてだし飛び入りで。

 イタリアンバールというのでしょうか、とてもコンパクトなお店で全てに目が行き届くような設計なのでしょう。カウンタ席とテーブル席、どちらも背もたれのない椅子でダラダラ長居する雰囲気のお店ではありません。
 後で気づいたのですが、逆に客席からも内部の様子がかなり見えていて、カウンタ席に一人でいたらきっとずっと眺めてしまいそうです。きびきびした作業の様子も目に入りつつ、冷蔵庫にマグネットでちょこちょこメモが貼られていたりとちょっと雑多でゆるい印象もあり、だけどゴミや洗い物は絶対に隠す。そんな計算し尽くされた構造なのかもしれません。

 私が訪れた日は2種類のパフェから選択。「プリンセスほおずきのパフェ」と「レモンとゴールドキウイのパフェ」。とても迷いましたが同行者が「ほおずきって食べたことない」ということでそちらを、私もたぶんほおずき食べたことないけどレモンの方を注文。柑橘系大好きですし。
 入店時に「(食事ではなく)パフェを食べに来ました」と言ったからなのか、オーダーする前に2種類のパフェの解説というか紹介がありました。どちらも10種類以上のパーツから構成されるもので、一度聞いただけではとても覚えられないけれど「解説書」をお借りできます。記録に残しやすいし文字でも味わえるので、コース料理とかのお品書き、私は大好きです。
 パフェはセットドリンク込みの料金になっていますが、プラスおいくらかでおすすめの飲み物のマリアージュも楽しめるのがまたお洒落。スペシャルティコーヒーや、パフェにも使っているフレーバーティーなど。

 ランチタイムというべき時間帯に別々のものを注文したのに、ほとんど待たされた感無く私たちのテーブルに2つのパフェがやってきました。オーダー前の解説をおさらいしつつおすすめの食べ方などもさらりと伝えられます。
 具体的な味はトップ画像をご参照いただきたいのですが、様々な風味や食感が次々に展開される幸福な数分間でした。カリカリ、ふわふわ、プルプル、もっちり、サクサク、ぬるぬる。多種多様で差し色あり変化球あり、それでいてきちんと軸があるというか表現したいものが定まっているというか。

 フランス語で「完全な、完璧な」を意味するパフェまたはパルフェ。私はパフェには大きく分けて2種類あると思っていて、ひとつはフルーツパーラー系の果物が主役のパフェ。もうひとつはパティスリィ系の様々な素材を使うパフェ。カフェクーポラさんは明らかに後者で、ちなみに前者のタイプなら「果実園リーベル」さんが好きです。
 果物に自信があるならあとはアイスクリーム、ソルベ、ホイップクリームだけで十分ですし、そうでなければ素材をたくさん使って複雑で見映えのするパフェを作ればいい、私はその程度に考えていましたがそれは浅はか過ぎました。
 例えるなら、何皿も続くコース料理をひとつのグラスに詰め込んだような、味から味への展開とストーリィ。香水のように、華やかで印象的なトップノートからミドルノートを経てラストノートの余韻に至る複雑な混ざり合いと経時変化。冬服のレイヤードのような、色と素材の遊びや振れ幅、統一感のバランス。
 ただの一食のデザート、そのグラスを下に掘り進め、一口ごとの具体的な美味しさを味わいながら、そんな抽象的なことを考えさせる強さ(のようなもの)がありました。

 何かを賞賛する時に「芸術的な」という言葉を選ぶのは陳腐に聞こえがちなものですが、大抵の芸術作品はそれに見合う知識や経験やセンスがあるとより良く深く理解できるのだろうと思います。ここまで書いておきながら私も大して食通でもないし繊細な味覚を持つわけでもないので、あのパフェの何割を理解できたのかわかりません。もちろん、美味しーい!だけで平らげてしまってもよいのですが、ちょっと背伸びしたくなるような、もっと知りたいと思わせるような、次は季節の果物を予習していこうかな、リキュールについて調べてみようかな、そんなことを思わせる意味においても芸術的なパフェでありました。

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