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全人類よ鳥羽水族館へ行け

 こんばんは、1970年代生まれ、都内一人暮らし、ゲイのしおたです。パグとラッコとPerfumeが好きです。今日はその「ラッコ」のお話。金カムことゴールデンカムイについては触れませんのであらかじめご了承ください。

推しは推せるうちに推せ

 三重県にあります鳥羽水族館に行ってきました。今回は旅の記録を綴るよりも、伝えたいことを思い切り書こうと思います。テンションが高まっているので口調も若干強めです。

 鳥羽水族館は飼育数日本一(約1200種!)とのことで、館全体としても非常に見応えがあり、日本でジュゴンを飼育しているのはここだけだそうですよ。とは言え私の目的はラッコです。鳥羽でも圧倒的な人気を誇る「メイちゃん(メス)」と、2021年3月に和歌山アドベンチャーワールドからお引越ししてきた「キラちゃん(メス)」、その2頭が同時に見られるというファビュラスな施設「トバスイ」はラッコ飼育歴も長く、日本におけるラッコの聖地と言って間違いありません。
 ちなみに海の中道マリンワールド(福岡)にはキラちゃんの実兄である「リロくん(オス)」、須磨水族館(兵庫)には「明日花ちゃん(メス)」がいますが、須磨水族館は現在一部改装中のため明日花ちゃんには会えません。一説には鴨川シーワールド(千葉)にいるという噂ですが、2024年の改装完了が待ち遠しいですね。

 整理すると、現在日本にいるラッコは4頭、展示中なのが3頭、そのうち2頭が鳥羽にいることになります。その鳥羽水族館が2022年5月9日まで開催しているのが「キラ☆メイて!トバスイ春のラッコ祭り」なのです。水族館が期間限定プロモーションを行うこと自体珍しく感じますが、キラちゃんが2008年4月21日生まれ、メイちゃんが2004年5月9日生まれであることが理由らしく、誕生日当日にはバースデイイベントも実施されるそうです。アイドルじゃん。

 間接的に年齢にふれましたが、ラッコの寿命は野生で10〜20年らしいです。日本における長寿記録は公式で23歳、推定を含むと25歳。リロくんは15歳、明日香ちゃんは23歳(長寿記録更新中)。いろいろな状況が変わらない限りラッコが「輸入」されることはなく、国内繁殖の見込みもなさそう、ということは(あまり言いたくはありませんが)日本で彼らラッコを見られるのはあと数年だけです。
 鉄は熱いうちに打てみたいなことを言いましたが、推しは推せるうちに推せ。ぜひラッコに会えるうちに会いに行ってください。

タイム・プレイス・オケージョン

 少しでも「見に行ってみようかな」と思った方に、まことに僭越ながら指南させていただきますね。
 日にちに関してはすでに書いたとおり、2022年5月9日までがイベント期間なのでおすすめではあるのですが、ゴールデンウィークに入り、入館制限が実施される日もあるようです。空き具合優先でイベント終了後の平日を狙うか、メイちゃんバースデイの5月9日(月)で一緒にお祝いするか。実際のところラッコは365日いつもかわいいので、行けるときに行けばいいです。でも、できるだけ、早く。
 お日取りより大事なのは時間です。公式HPでは現在ラッコのお食事タイムが9:40〜、13:00〜(貝のみ)、16:20〜の3回となっていますが、必ずこの「お食事タイム」が見られるように行って下さい。入館制限が実施されそうなイベント中の週末は朝一番で入館してしまうのが安全確実でしょう。そしてお食事は(私の体感ですが)25〜40分ほどかけてじっくり見せてくれますので、他の動物さんのお食事などとうまく調整してください。
 ちなみに水槽の最前列は(場合によりますが)お食事開始前30分前には埋まります。どうしても目の前で見たい方は場所取りが必要ですが、大人として、小さな子どもさんがいたら譲ってあげて欲しいですね。将来彼らの中から海洋生物学者とか遺伝子工学の研究者とかが出てくるかもしれませんし、単純に「ラッコ見れなかった、つまんない」というよりも「ラッコ見れた、かわいかった、また見たい」という感想を持って帰って欲しいですから。
 運良く最前列で見ることができる方は、お洋服にも注意。大きめの帽子など、後ろの方に対するほんの少しの気配りをお願いします。映画館や劇場と同じです。また全ての方に共通しますが、ラッコは北海道以北のアラスカ辺りに生息していますので水槽前は寒いです。お食事シーンをゆっくり楽しむなら真夏でも一枚羽織れる衣類は必須。
 トバスイにおけるラッコ水槽は、向かって左側がサブプール、右側がメインプールになっていて、お食事はメイン側でサーブされます。これは大きく掲示されていましたので、間違えることはないと思います。
 水槽前は床のスペースをアリーナとするなら、2階席にあたるスロープ、3階席にあたるフロアがあります。各スペースとも最前なら見やすいですが、スロープ部分の本当に坂になっている場所は左足が異様に疲れますので注意してください。ベビーカーや車椅子の方も避けた方が無難です。

 ラッコ水槽は「極地の海」コーナーにありますが、それ以外の場所について。
 「極地の海」コーナー前の通路にトバスイ歴代ラッコたちの写真が展示されています。両手を広げて「次はこのくらいのホタテをください」とかめちゃくちゃかわいいです。イカミミジャンプの実際の高さも等身大で知れますので、見るだけでなく写真を撮る場所としてもおすすめ。
 3階の企画展示室は「ラッコ学習コーナー」。もし私が小学生なら、この1室で自由研究は完成です。個人的に興味深かったのが骨格標本。前肢の長さや肩甲骨と実際の動きのイメージを比較したり、骨盤は狭くて深いんだなとか、尻尾の先まで骨がしっかり入ってるんだなとかがわかります。
 レストラン「花さんご」ではイベント期間中、数量限定で「メイちゃんとキラちゃんのカレー」を提供中ですが、これがほんとに数の少ない限定品なので11時のランチ開始に合わせて入店してください。間に合わなかったら定番メニューの「メイちゃんのカレー」を。もうひとつのレストラン「ベイサイド」にはラッコメニューは無さそうでしたが、ソフトクリームが美味しかったです。
 ラッコグッズもたくさんありますのでショップも必見です。2店ありますが微妙に品揃えが違うようなので、両方とも覗いてみましょう。


どっちがどっち?

 2頭いて髪型が違うわけでも衣装が違うわけでもないので見分けるのはちょっと難しかったです。いちばんわかりやすいのは顔周りの毛の色かな。ちょっと黄色っぽいのがキラちゃん、全体的に白っぽいのがメイちゃん。メイちゃんの方がほんの少し体が大きいように見えました。
 動きでいうと、ジャンプの高さやリアクションの幅広さなど全体的に身体能力高めなのがメイちゃん。水槽のガラスキワキワ(私たちの目の前)を、私たちと目を合わせるように泳ぐファンサの塊なのもメイちゃん。メイちゃんのコーンを抱えたスピンは(かわいさ)レベル4確実。キラちゃんは密かに飼育員さんに甘えたりする仕草がかわいいです。私は未確認なのですが、キラちゃんが飼育員さんにごはんをおねだりする鳴き声の動画が流出してるとか…声聞きたい…。

 お食事タイム以外の自由時間はメインプールとサブプールを隔てるドアは開放されていて、たまに行き来するのですが、私が見ていた限り必ずキラちゃんが先に移動してメイちゃんがそれについていっているようでした。メイちゃんがキラちゃんにラブラブ、なのかもしれません。
 自由時間は時々じゃれ合っている様子も見られます。犬歯剥き出しでなかなか迫力があります。お互いにグルーミングをし合ったりするのを期待していたのですが(笑)。

 やはり2頭同時に見られるというのは、1頭だけを見る時の2倍以上の喜びがあります。かわいいの相乗効果。お食事シーンなどは2頭同時進行でかわいいので、どちらを見るか悩みながらキラちゃん見てメイちゃん見てキラちゃん見てメイちゃん見て、の繰り返しでした。目があと2つ欲しい。

ここだけは見て!

 ラッコのいちばんかわいいところはどこでしょうか。全身の毛が8億本とも言われるもふもふ感か、くりくりのつぶらな瞳か(意外とかなり遠くまで見えているらしい)、時に行方を見失ってしまう小さな耳か、三角にも菱形にも見える黒い鼻か(意外と嗅覚は鋭いらしい)、新鮮な魚介を豪快に噛み砕く口か、おもちゃや貝をしまっておける「ポケット」と呼ばれる脇のたるみか、意外と素早い泳ぎを生み出すヒレ状の後ろ足&オールのような平たいしっぽか…。

 実際のところラッコは1ミリの隙もなく全身かわいいのでどこを見てもいいのですが、私は「手」がいちばん好きです。前脚でも前肢でもなく、おててと呼びたくなるような、手。形状は犬の前脚に似ていますが関節や骨を感じさせない柔らかさは赤ちゃんみたいな印象。肉球は犬のように小4個+大1個にはっきり分かれてはいないようです。爪は猫のように出し入れ自在らしく、普段は全く見えません。

 この短い両手(きにしてたらごめんね!)をいつも同時に使うところが、もう本当にむちゃくちゃかわいいのです。飼育員さんからごはんをもらう時は両手で挟むように受け取り、飼育員さんにおもちゃを返す時も両手で渡します。カラーコーンもホースも両手で持ちます。飼育員さんの腕に捕まるのも両手。さすがにイカミミジャンプだけは最高到達点が問題になるので片手ですが。
 人間が両手で物を扱う時の丁寧さと、子どもが食器をそっと持ち運ぶような拙さがないまぜになった行為を、飼育員さんの指示に応える知性を持った毛むくじゃらの獣がやっているというミスマッチ感。このかわいさ、伝わるでしょうか。百聞は一見にしかず、ですよ。

ラッコはアイドルである

 海の様々な生物を展示する水族館、その一角にいる2頭の哺乳類に対して、まるでアイドルのライブに行くような熱狂的な気持ちで会いに行ってきました。LIFE = LIVE とでも言いましょうか、今ここに生きている命というのは全てに限りがあり、だからこそ輝きを放てるのだと思います。技術の進歩により過去の映像を見ることや世界の様子をリアルタイムで知ることも簡単になりましたが、今ここにあることのかけがえの無さは変わりません。
 だからそれを儚いものだと嘆かず、今日の輝きを、かわいさを存分に心に刻んでおきたい。そんな気持ちでラッコ水槽の前での数時間を過ごしました。

 とある方が趣味について言っていました。消費する趣味だけでなく、創造や表現をする趣味を持った方がいい、と。
 トバスイのラッコたちのかわいさを全身に浴び、ラッコカレーを食べ、ラッコグッズを買い、幸せ〜と感じている時に先ほどの趣味についての言葉を思い出しました。今の私って消費してるだけでは?ラッコにもらった大きな幸福を自分一人で味わってそれで終わりなのか?と。
 創造や表現なんて一朝一夕にできそうにないけど、でも誰かに小さなきっかけを与えたり、この幸せな気持ちを共有することならできるかもしれない。ラッコに興味を持つ人が一人増えるかもしれない。鳥羽水族館に足を運んでくれる人が少しでも増えますように。そう願って止みません。

 以上、しおたでした。※ラッコは英語でsea otter(シーオッター、海のカワウソ)と言います。

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