見出し画像

風とロックと愛の伝え方

8日まで渋谷パルコで開催されていた風とロック20周年記念展「風とロックでみんな笑ってる」に行ったら、伝わってきたのはとにかく、箭内さんが残すのは本当に好きな人たち、好きなものへの愛でした…というはなし。

箭内さんのクリエイティブが好きだ。タワーレコードの「NO MUSIC,NO LIFE.」も、リクルートゼクシィの「Get Old with Me」も。広告であっても誇張しすぎず等身大で、言ってる感がなくて、物語があって、なにより箭内さんの愛が詰まっている。「ねえ見てみて。なんかいいよね。」って、隣で寄り添ってくれて一緒にそれを手に取っているような気持ちになる。

もう3年前くらいになるけど、ふと聴いていたラジオで箭内道彦さんが話していて忘れられない言葉がある(多少うろ覚え)。

'' 広告って言葉や思いやイメージを扱う仕事なんだ。イメージって誰でも持ち歩けるよね。歌や、絵や、言葉、なんでもそう。誰もがそうやってポケットに入れられるような素敵なものができて、その人がたとえば河原でふと取り出した時に、いいなって思ったり、形にないけど頭の中に描くものが生み出せたら、それってすごくいいよね。 ''

わたしも広告に携わる一人間として、そんな風に誰かがポケットに入れておきたくなるようなものを作っていきたいなと思った。ぼんやりと、あああれすてきだったなあって、あったかくてやさしくて、誰かと過ごした大切な思い出みたいに記憶に残るものを。写真のように。会話のように。

今回の展示は、それこそ箭内さんの大切な思い出のアルバムを一緒に見ているようなかんじだった。歴代の月刊風とロックがずらりと並び、大きな液晶ディスプレイでは芋煮会やライブの写真が切り替わる。

引用:https://www.shibukei.com/headline/17476/

月刊風とロック に掲載されている写真について箭内さんはこう書いていた。

'' 女子を初恋の人のように撮り、男子を中学の同級生のように撮る。会いたい人に会いに行く。好きな人しか載せない。好きと言うかわりにカメラのシャッターを押す。
月刊 風とロックはカルチャーではない。人間です。人に向かって「お前を金で買ったるわ。なんぼやお前」と言えますか。言えませんよね。だから月刊 風とロックは0円なんです。ここに並んでいるのは人間だから。 ''

箭内さんはどこまでも、愛を伝える天才だ。好きだよ、ありがとう。また飲もうよ。写真を撮る時そんなふうに言ってるんじゃないか。声が聴こえるようだった。月刊風とロックのページをめくるたび、あ、これ、おれの友達。本当にいいやつなんだよ。って紹介されているようだった。

そんな風とロックの写真について篠山紀信氏が寄せていたコメントもよかった。

'' 自分が好きだと思う人しか撮ってないでしょ。好きじゃないとこういうふうに撮れないですよ。
なんか無防備でいいよね、みんな。どれも特等席で撮ってるんだよね。警戒しない写真というのはなかなか撮れないな。
どんないい写真でも、ピタッと固まっちゃったりして、風が吹かない写真っていうのはダメだよね。フッと揺れ動いているよね、全部の写真が。愛だねえ。もうひしひしと伝わってきますよ。 ''

たくさんの人に祝福される入り口が全部を物語ってる

特等席という言葉が似合う人っているよね。それも、いろんな人の特等席に座れる人。懐に入るのがうまいというか、もはや才能なんだよな。箭内さんはそういう人なんだなあと納得した。

特等席に座れる人って、居心地がいいというだけじゃなくて、あなたのことを大切に思っているということをちゃんと伝えられる人だと思う。恥ずかしがらずに、好きだよと、真正面から伝えてくれる人のことを、人はなかなか嫌いになれないでしょう。

言葉は愛だし、愛は言葉だ。

気づいたら購入してしまった871569

展示はもう終わってしまったけど、風とロックを手に取る機会があったらぜひみてほしい。
自分の記憶の中にある、大切な人の笑った顔とかふざけた会話がきっと蘇ってくると思う。

▼開催概要

おしまい