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2021年7月9日 14:10
毎夜毎晩同じ夢を見ている。最後に僕に触れた君の手の甘やかな香りは永遠に忘れられないのに、いつしか君の顔を忘れてしまう夢だ。目が覚めて急いで君の顔を思い浮かべる。いつもと同じふわりとした微笑み。まだ忘れていない。そう確認して少し安堵する。こうして毎朝君の顔を思い出していたら忘れずにすむのだろうか。何度も投げ捨てた君の歌も結局拾い集めてしまうし、僕はきっと忘れたくないのだろう。それともい
2021年7月9日 03:40
「おはよう。起きて、エルマ」眠そうに目を擦る君を優しく揺り起こす。「早起きして散歩に出かけようって言ってたのは君だろ」君は大きな欠伸をして、小さく頷いた。◇◇◇◇まだ早朝だからか初夏とはいっても空気はどこかひんやりとしている。木々の青々とした香りも相まって清々しい気分だった。深呼吸をして体内に目一杯空気を取り込む。朝日が朝露に反射して辺りは静かに煌めいていた。隣に立つ君は寝ぼけ眼
2021年7月9日 03:36
桜並木が春一番に煽られて花弁を散らしている。栗色の柔らかな髪の毛をなびかせ、君は道の只中に立っていた。後ろ姿はいつにも増して儚くて、一瞬でも舞う花びらに気を取られたら君は消えてしまいそうだと思った。並木道を君とゆっくりと歩く。できる限りゆっくり、ずっと隣に居られるように。なあ、どうすれば良かったんだと思う?君も僕も何を間違えてしまったのだろう。いくら考えても分からないんだ。
2021年7月9日 02:52
ーーどうでもいいや、あんたのせいだ。間違ってなんかないんだ。そうだろ?間違ってないよな?さよなら。