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「ダニエル・カーネマン 心理と経済を語る」を読んで

2021年10月9日 Sano Chihiro

今回はこちらの本を。

Daniel Kahneman (原著), 友野 典男 (翻訳), 山内 あゆ子 (翻訳)「ダニエル・カーネマン 心理と経済を語る」

行動経済学という学問を始めたダニエル・カーネマンの研究成果を分かりやすく世の中の人に理解してもらいたいという思いで作られた本だそうです。

関連してそうな本は、
FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣」(以下「FACTFULLNESS」と呼称)、

予想どおりに不合理―行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」」(以下「予想通りに不合理」と呼称)
の2冊かなと思います。

そして読んでないのでなんとも言えませんが、おそらく「ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?」、途中まで読んだマーヴィン・ミンスキー著「心の社会」も関連していると思います。

この本の中で紹介されている「ピーク・エンドの法則(peak-end rule)」「限定合理性」などの面白い論理は他の書評にお任せして、これ以降はこの本の印象を私なりに書いていきます。

この本は、ダニエル・カーネマンが人間が意思決定を下す際にどのような仕組みが裏で働いているのかを探求していく過程を一緒に体験できるような作品です。人間の認知の仕組みを探求する本という意味では、「心の社会」と共通していると言えるでしょう。

印象的だったのは、意思決定を下す際に2種類(もしかしたらそれ以上)の方法を用いているらしいというところです。どうやら速い判断と遅い判断とが存在するらしく、「ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?」の題名にもなっている「ファスト」と「スロー」はまさにこの2つの意思決定の働きのことを指しているのではないでしょうか。この2つの働きが「心の社会」で紹介されているパパートの原理にも繋がってきそうな予感がします。

「FACTFULLNESS」は速い判断機能が犯しがちなミスを具体例とともに詳細にわかりやすく紹介している本だと私は思います。また、「予想通りに不合理」もまた速い判断機能のミスの方にフォーカスした本だったように思います。

人間が備えているセンサー入力に近しいところで働く判断と、もっと深く高度な判断との違い、それらを動作させるための条件とはなんなのか?DeepLearningで計算機ができるようになった「判断」は人間の意思決定の機能ではどちらに相当するのだろう?などなど疑問の尽きない楽しい本です。

何度も読みたい本です。考えるほど他の知識と結びついていく良い本だと思います。

ではまた。

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