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中学受験の現役講師が語る集団授業と個別指導の違い(Part1)

自律学習サカセルの講師陣のほとんどは個別指導の教師として活動する前に集団授業形式の塾で教鞭をとっていました。

今回はその経験を踏まえて、講師の視点から見た集団授業を行っている塾と個別指導塾の違いを、自律学習サカセルの講師三宅、増田、夏田の3人に聞いていきたいと思います。

ー皆さんは集団授業から個別指導へと移ってこられたわけですけれども、何か集団授業で大変だったことはありましたか?

増田:添削。

夏田:あー

三宅:しんどいねー

増田:自分でいうのもあれなんですけれど、人気講師(笑)だったので、毎日借金のようにファックスが机の上に置かれていたんですよ。

増田:大体30から40枚くらい、毎日。で俺は毎日送り返してたから、生徒は毎日送ってくる。それが0円なのね。1枚いくらというのはあったし、請求できるんですけど、うちのボスが添削するのに請求しない人で請求するのがだめな雰囲気なんですよ。これがね同調圧力というやつですよ。

増田:だからもう集団の添削はもうやりたくないかな。

増田:授業は楽でしたけどね。

三宅:まあね。集団の授業ははっきり言って楽だと思う。

三宅:分からない生徒がいても先に進めていいから。

増田:分からない人がいたときに全員に発問して、誰か手上げて、その生徒を指して答えられたらそれで授業成立するんですよ。

三宅:1人そういう生徒がいればいいというのは言いすぎだけど、上位〇〇割の生徒が分かるような授業をしろとよく言われる。それが5割だったり、3割だったり。それが7割くらいの生徒が分かるようにゆっくりやっているとコースとしての成績は伸びてこないし。

ーそのスピード感の調整というと、半分くらいの子が分かるようにというのがよくある指標ですか?

増田:いや?

三宅:どうだろう、僕はもう少し少ないと思う。

増田:僕は上位2割が分かるようにとどのクラスでも言われてたかな。

三宅:おー少ないな。

増田:なんでかって聞くと、それで残った8割の子は宿題なりなんなりで対応すればいいでしょということだった。

三宅:そうすると、個別の方が見ている生徒を理解させなきゃいけないから、そういう点ではつらいかな。

増田:集団だとできる生徒に指して「みんなそうだよね」みたいな会話になると授業が成立しちゃうんですよ。

増田:だから逆に分からない子は永久に分からなくなってしまうんですよね。

増田:個別は1対1で逃げられないんで。目の前の子がその内容を全然分かってなかったらいろんな方向性から説明しなきゃならない。

夏田:この影響は科目によって少し違うのかなと思っています。例えば。算数でごりごり進めていくと、質問対応が凄まじいことになるんですよ。どのタイミングでもやってくるようになるので、毎回授業前後で持ってくる。そのための時間が決められている塾もあります。

三宅:うん、質問教室ということで授業後に枠が決められている。

夏田:それがないところだと、無制限に持ってくるということになる。授業を早く進めていくと理解が追い付かなかった生徒の質問が溜まっていくという形ですね。僕はそれで鍛えられたのかもしれないですけれど。

三宅:確かに集団だと質問教室は結構大変。よく生徒側が先生がコロコロ変わって大変だというけど、先生側も大変です。だって知らない生徒が来るからね。

三宅:自分が上のコースを見ていいて、その下のコースの子が来ても、その子たちがどのコースにいて、どういうことを習っていて、そもそも算数がどのくらいできるのかが分からない状態で質問をうける。だから結局その子に最適な答えができるのではなくて、あくまでも一問一答的な考え方を教える形になってしまうのはサービスとしてもったいないなと思う。

ーそうすると結局人気講師のところに質問が集まって、増田先生のように業務過多になってしまいません?

三宅:校舎によるけど、先生を指名できた校舎、できない校舎、できた時期、できない時期があって。まあ、自分がいた時はそれなりに若かったし、しゃべりも立つ方だったから、それなりに仕事はしたよ。

三宅:逆に同じ算数科だったのに質問教室ほぼなくて帰る先生もいたね。

増田:授業前とかに〇〇先生お願いしますといって職員室に来る生徒がいるんですけど、大体呼ばれる先生は決まってる。

三宅:決まってるよなー

増田:宿題忘れましたということを言いに来る生徒とか。言いに来なくていいのに。

増田:〇〇やってきたのでどうしたらいいですかとか。授業中対応するわ!みたいな。結局しゃべりに来ている生徒が多いんですよね。

増田:これでどれだけ、授業前に忙殺されているかというのもポイントだったりするんですけど。でも、これを全部バサッと切っちゃうと多分まずいんですよね。対応が悪いという話になったり、その対応こそが生徒には大事な時もあるから対応しているんですけど、そうするとサービス残業が増えるんですよ。

夏田:日本らしいかもしれないですよね。「やるの当然だよね、タダだけど」という。

三宅:生徒のためという正義。

増田:何回か言ったことがあるかもしれないですけど、集団塾にいて授業を上手くなる意味がないなと思ったのは、そのスタイルなんですよね。

増田:給料は上がんないし、仕事は増えるし、一番勝ち組なのは正社員で特別講座も何もなく、ただまったり土日過ごしてるやつ。超勝ち組じゃん、給料上がんないんだからみたいな。それで集団塾に留まる気が無くなっちゃったんですよね。

夏田:国語では質問は算数よりは減りますよね。

増田:質問が多いのは算数なんですよね。国語は確かにほとんどない。

三宅:出来る出来ないが明確に分かれる科目だからかな。解けないもんは解けない。

夏田:算数、国語持ってましたけど、やっぱり算数の方が質問対応10倍くらい時間かかりますね。

増田:国語は記述の○付けてくださいが一番多いかな。質問が少ない代わりに添削が多いという科目の特徴なのかもしれないけど。

夏田:通常コースの生徒も過去問添削で記述見てくださいって持ってきますね。まあ、増田先生ほど見たわけじゃないですけど。

夏田:たまに自分の持ってるコースじゃない生徒が持ってくることもありましたね。君は誰なの?ってなりますけど。

増田:僕の師匠のコースの生徒とか持ってきてましたね。無下に断れないし、やった方が受かるのは間違えないんでやるんですけど、疲れちゃうんですよね。擦り切れちゃう。添削でしんどいとかがない代わりに授業中や質問教室でしんどいのが三宅先生なんですよね。割に合わねえこれみたいになるはず。

三宅:算数それなりに添削来ますよもちろん。

増田:あー、最上位校はそうか。

三宅:俺は普通部、駒東コースが多かったから、多かったかなそれなりに。

夏田:さっきもありましたけど、国語だろうと、算数だろうと、質問が全く来ない先生もいるんです。すごいですよ。

増田:凪ってこういう状態なんだなってわかる。

夏田:添削してくださいとかも一回も見たことない人もいました。いい先生がやっぱり選ばれてるなという印象ですね。

ー先生同士でも観ても生徒から人気の講師はいい先生が多いのですか?本当はこの人いい先生なのに...みたいなことってないんですか?

夏田:ない。

増田:絶対ない。

夏田:生徒に質は伝わってると思いますよ。

夏田:ひどいのは自分の担当の先生がいるのに他の先生のところに質問に来たりとかありますよ。〇〇先生いないですよねーみたいな感じで。

増田:「相談があるんですけど」ってきて君誰?みたいな何回かあった。

増田:断れないんですよ。

ー結局授業準備の面では大変なことは少なかったのですか?

増田:プリントするのが大変だったくらいかな。僕がいたところはパッケージになっている教材がないんですよ。だから漢字テストとかも自分たちの進度に合わせて準備しないとならないし、読解の教材とか、知識の教材とかも全部自分で用意するから印刷はしんどかった。

三宅:準備はどうかな~。もちろん、僕がいたところは決められた教材はあるから、今の個別よりもやっぱり算数的にも必要だったと思う。個別やったらむしろ、こっちが決めた教材だったり、質問対応だったり、その場での対応が問われるところが多い。それに対して、集団だったら予め授業プランを決めておいて扱う問題とか解答のパターンとかもざっくりとは決めておくしね。

三宅:別にそんなん当たり前のものだと思ってたからあまり、大変だと思ったことはない。集団の方が今の個別に比べたらよりカチッと決めてるかな。毎回の授業内容という点ではね。

ーそれは学期が始まるタイミングで各週でやることが決まっているのですか?

増田:決めている人はできる人です。

三宅:でもまあカリキュラムがあるからね。

夏田:いちおう固定カリキュラムが決まっているのでその通りに進めてくださいみたいな感じですね。

三宅:その回、その回の授業の計画とかは、集団の方がかっちり立てるけど、年間とか月間とかそういう部分は個別の方がしっかりたてるかな。自由度が高い分、そこはちゃんと方向を決めておかないとな。

増田:この週にこれをやるみたいのって中学生の場合だと次の月のテストでこれが出ますって書いてあって終わり。だからどのページを扱ってくださいとかない。でも研修とかでどういう風に進めるかとかは全くない。かっちり決まっている塾は働きやすいかもしれない。その分板書案などを含めて濃密な準備をしなきゃいけないかなという気がする。

三宅:解説する問題は選んでいいけど、あくまでテキストの枠組みの中で選ぶ。

増田:できる校舎は今週はこれをやりましょうみたいなことを校舎ごとに決めたりする。でもしない校舎の方が多い。大規模校の方がその辺が整っている可能性は高いかな。

ーすると同じ塾でも校舎によってでも進度が違ったりするのですか?

増田:そうです。

夏田:たまに発生しますね。今は本社でこれをやれというのが決まっていますが、たまに勝手に違うことをする講師がいます。1回遅れてテスト間に合わないじゃんみたいな。

増田:あとは僕はこの文章を扱いたかったんですって言って12回くらい先の文章をやって、今回説明文の回なのになんで小説文やってるのみたいな話になることがあります。

増田:大体被害が拡大してから判明するんですよね。

増田:組み分け受けたのに4回分くらい教えられてない教材から出たんですけど、みたいな。統率取れているようで取れてないことがあるんですよね。

増田:教室内で週一の会議があるんですけど、発生するんです。客とのコミュニケーションに直結するようなやりとりじゃなくて、「今週は体験生が何人来ました。こういう状況です」みたいな話しかしないんでこういうことが発生するわけですね。

増田:俺は借金のようにFAXが積まれていたんですけど、それとは別で連絡の紙みたいのがあって、〇〇先生、どこどこクラスの何君から連絡がありましたみたいのがやばいほど貼られている人もいました。

ー集団の大変さは先生のタイプによって変わるんですね。

増田:変わります、変わります。

増田:さっきも言ったのが一番楽でしょ。仕事ができないわけじゃないけど、特別講座に呼ばれないくらいの人、なぜか塾講師なのに日曜日の休みを満喫できる人。

増田:無能なふりをしている有能な人が一番賢いかもしれないですね。

増田:だから最大公約数の授業をするというのが集団のベストなんですよね。個別の方がプランニングは緻密に必要だろうなというところですね。

増田:後は大枠が決まっていて、今月はこれをやらなきゃいけないというのが分かっていると準備なんか無くても出来ちゃう人は出来ちゃうんですよ。

増田:去年の教材とかをそのまま使う人もいるでしょうね。

三宅:それは確かにできるな。

ー中学受験は難化していると言われていますが、教材は変わっていないのですか?

増田:変わってないですね。

三宅:もちろん細かな改定はちょくちょく入っているし、大規模改定も数年に一遍くらいは入っているけど、中学受験そのものは変わってないからね。

増田:中学受験でフランス語が必修とかになってないですから、そこらへんは変わらないですよ。

増田:例えば、美化語とかが入ってくるという話になった時に、謙譲語を二種類に分けるみたいなのありましたよね。文科省はそう考えていただろうけど、中学入試で敬語を出題する学校はそれを全部無視して、尊敬語、謙譲語、丁寧語で答えさせるから何も変わらないんですよね。

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集団授業を行っている塾だと、教師に対して成長へのモチベーションを与えることが難しいようですね。もちろん集団授業の講師でも、個別指導の講師でも授業の良し悪しはありますが、集団授業を持っている講師の働き方や授業の進行に関しては改善が必要そうです。

次回はこの続きをお届けします。お楽しみに!

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