重力モデルを検証したら世界が見えた。その一

国際経済学の有名な貿易モデルとして、「重力モデル」というものがあり、以下の数式で表される。

$$
{T_{ij} = A*\frac{G_i*G_j}{r_{ij}}}
$$


$${T_{ij}は二国間の貿易総額, G_i,G_jはその国のGDP、r_{ij}は二国間の距離}$$
$${Aは定数}$$

 「二国間の距離が近いほど、経済規模が大きいほど、貿易額も大きくなる。」という、単純なモデルで直感的に理解しやすいと思います。 この式の形が、ニュートンの万有引力の公式に似ていることから、「重力モデル」と呼ばれるんですね。では、実際のデータを見て、このモデルを当てはめてみて、日本と世界がどうつながっているのか見ていきましょう。
今回の検証に当たり、以下のデータを参照しました。
貿易額 財務省貿易統計 国別総計表 2022年 

日本との首都間距離は  りに帳 日本の東京から世界各国の首都までの距離一覧

GDPは世界銀行(2022)から、米ドル/日本円レートは三菱UFJリサーチ&コンサルティング。

以上のデータから、定数Aを求めて、散布図を作成すると下図のようになりました。

って、なんか一つだけめちゃめちゃ飛び出てる~~~~~~~

 「何だこの国?!」と思って確認すると、

「リベリア」


はぁぁ?なんで、世界最貧国の一つといわれる国がこんなに日本と関係性強いねん!

よく見てみると、リベリアへの輸出額が大きいことが、こんなに定数が大きくなっている原因のようです。そして、その輸出額の大半は「船舶」。


あーーーーー「便宜置籍船」か!


 リベリアは世界のおよそ11%を占めるほどの船舶を保有しているのだが、これは、税金などが安いからだ。
 同様の理由で、パナマもかなり高い。(なお、定数Aの値はリベリアの11分の1、単純にリベリアのGDPが低すぎることもAが大きくなった要因だろう。)

 とりあえず、リベリアを消去したのが下の図です。


リベリア削除したときのAの値

ちなみに箱ひげ図はこんな感じ。ほとんど50以下だね。

箱ひげ図(リベリア削除)

 中身を見たところ、定数Aの値にかかわっている要素として次があげられます。

  • 内陸国か海洋国か(海洋国が高めになっている)

  • 輸出品の内訳(鉱物資源、水産資源など)

  • 政治的つながり(現代だとウクライナ戦争など)

次回からはこれらについてそれぞれ詳しく見ていき、定量的に考察したいと思います。できれば、陸と海とで距離の補正値とか出したい…..

参考文献 クルーグマン国際経済学上第十版


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