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人生の堕落

 バンド活動が生活に侵食すればする程、その人間が側から見れば堕落した様な生活になっていくというのは前々から思っていた事ではあるものの、結局のところはその本人が元から堕落しかけた人間であったのを人の目に触れる事の多いバンド活動が暴き、世間に露呈させているのが実際のところなのではないかと最近では思う様になった。私は根っからの寂しがり屋で、人との繋がりを何とかバンドという付け焼き刃で手繰り寄せた結果、今の死にたがりで堕落した人間が出来上がったのだと思う。
しっかりと身を入れたバンド活動をしなくなった私の中身は既に空洞で、そんな人間が誰かを惹きつける事など出来ないのだと絶望している。昔からの相棒であったGibsonのレスポールはとうに弦が錆びついてフレットを傷つけていた。

今社会人バンドサークルに所属しているが、私が作詞作曲した歌で散々な弾き語りをした後からはライブを観るだけに留めている。そのサークルでは私のギターよりも上手い人間しか所属していない為もあり、モチベーションの低下とライブ時の観客の目が本当に怖くなりギターを触る時間もさらに減っていた。

 周囲の冷たい目、無反応、失敗にかかる嘲笑、極度の緊張、身内ノリ、その全てから逃げている。ずっと逃げている。それでもライブに観客としても行かない事は寂しがりな私が許さなかった。どっち付かずな心境の中、1人の女が周囲の目も気にせずに我を通していた。その女はサークルの1番人数が多い派閥の元幹部でライブをバックレてサークルを追放された人だった。コミュケーション不足による行き違いなのにも関わらず、その人はサークルに残ろうともせずに追放を受け入れていた。気になった私は受け入れた理由や本人の性格など、その人となりを知ろうと思って近づいた。もう一つ近づいた理由があるが、それはこの文章を全体的に通してみると分かるので詳細は書かない。

 私の周りには本当に綺麗な人が多い。彼女もまた美貌を備えていた。何なら幹部時代には周りの男性を食い散らかしていた逸話がある程なので、その時にも「やはりバンドマンは…」と思った。そして私も彼女に魅入られ、その後に雑記である【脳内再生】は荒れた。

 寂しさというのは欲望だ。それは相対的な自己確立の為の欲求と、それに追加される一滴の性欲から来るもので、「人肌恋しい」という感情が先走れば自身を少しずつ堕落させていく。果たして自身の欲望が一時的に満たされたところで、その欲望の頻度は上がりながらまた心の寒波が押し寄せるのだ。人は一度上げた生活水準を下げられないというが、それは寂しさにも同じ事が言えるだろう。

自身が起こした証明として、バンドをやる人間が堕落していくのではなくて、元から堕落しかけていた人間をバンド活動が暴くのだと考えている。

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