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欅坂46・サイマジョと誰鐘の歌詞考察

ボケボケと生活しているうちに前作からかなり時間が経ってしまった。
ここ最近は上手な文章を書かなければならないというイタイ自意識と泥のようなプライドが邪魔をしてきたが、それらを薙ぎ倒すために今日は筆を執ろうと思う。半ば忘れかけている「言語化する事の重要性」もそれと同時に思い出せたらいいなとも思う。



今日は欅坂46のラストシングル「誰がその鐘を鳴らすのか?」をデビュー曲と比較しながら考察していく。

個人的に気になった箇所しか取り上げず、一個人の勝手な解釈に過ぎないので悪しからず。



【欅坂46とは】


今さら紹介せずともご存じの方が多いと思うが一応記載しておく。

日本の女性アイドルグループ。秋元康氏のプロデュースにより、2015年8月21日に結成。乃木坂46に続く「坂道シリーズ」第2弾グループとして、応募者2万2509名のオーディションを経て2015年8月に誕生。
2020年10月14日より、櫻坂46として活動予定。

今までのアイドル像とは一線を画す凛々しさ、ナイフの如く鋭利な歌詞、その裏にある素朴なキュートさに魅了された人も少なくないのでは。



じゃんじゃん書いていくぜ~



【誰がその鐘を鳴らすのか?】


⇓こちらが本日の曲でござんす⇓



まず気になったのは入りの部分。
「イントロをゆっくり堪能するぜ~」と思ったのも束の間、突然ポエトリーリーディングから始まる。

「耳を澄ますと聴こえて来る 色々な声や物音
人は誰もその喧騒に 大事なものを聴き逃している
Wo oh oh oh oh oh oh…
ねえ ちょっと静かに… ほんの少しでいいから
自分の話じゃなく 他人の話 聴いてみて欲しい
冷静になろうって 合図をくれればいいのに…」

囁くような、そっと話しかけるような美しい声は欅坂46の終幕を意味しているかのようであり、儚さや脆さをも感じる。


ここで気になるのは、「自分の話じゃなく 他人の話 聴いてみて欲しい」という歌詞だ。
「~して欲しい」というのはお願いの時に用いる言葉であり、人の話を聴いてみて欲しいと言うぐらいなので、投げかけた先にいる "相手" はとてもじゃないがコミュニケーション可能な状態ではないのだろう。
対照的にこの曲の主人公は冷静であり、客観的な視点を確保できていると考えられる。



次に気になったのは2番のサビ終わりとCメロ。

(2番のサビ終わり)

鐘を鳴らせる主導権なんか意味はないんだよ
支配したって 幸せになれない 愚かなことだ

統治の権利を握ったとしても、最終的に幸せには繋がらないというやり切れなさや悔しさ、あるいはある種の絶望すら感じる。サビの終わりに諦観の念を漂わせるこの言葉を当てはめるセンスがたまらんぜぇ~。

(Cメロ)

自分の言いたいことを 声高に言い合ってるだけだ
際限のない自己主張は ただのノイズでしかない
一度だけでいいから 一斉に口をつぐんで
みんなで黙ってみよう

過剰な自己主張は騒音との差異はない、独りよがりの発言は慎んでという強いメッセージ。
特に注目したいのは「みんなで黙っていよう」という歌詞。もしこの歌の主人公が感情的になっていたら、「みんな黙って」という力強い言葉に置き換わっていたのではと私は考える。「~してみよう」と提案している姿はどこか協力的かつ冷静なイメージを抱く。

ここでもやはり第三者の目線は決して変わらない。


このように書きだすと、はじめから一貫して物事を俯瞰で見ている主人公像が浮かび上がってくる。



【サイレントマジョリティー】

⇓こちら⇓


お次は社会に大きなインパクトを与え、鮮烈なデビューを飾ったこの曲。従来のアイドルグループへのアンチテーゼがこんなにも見事に成り立ち、こんなにも多くの人に刺さるのかと非常に驚いた。

サビにはモーセの十戒を連想させる振り付けもあり、アイドルとしての一面だけでなく欅坂46のアーティスティックな一面も垣間見える。


それでは歌詞を見てみよう。


まずはAメロのこの部分。

群れの中に紛れるように 歩いてる(疑わずに)
誰かと違うことに 何をためらうのだろう

周りの人間と違う事を恐れるな。むしろ人と違う事を誇れと言わんばかりの歌詞。非常に堂々とした姿が印象的である。


続いてサビ。

君は君らしく生きて行く自由があるんだ
大人たちに支配されるな
初めから そうあきらめてしまったら
僕らは何のために生まれたのか?

見事なパンチライン。
「その他大勢」になるのではなく自分は自分だと証明していけ、何も自分を押し殺す必要なんてないんだよという力強いメッセージ。


たったの2ヵ所しか言及していないが、この歌はそれこそ曲名にもあるように沈黙の多数派に成り下がるぐらいだったら「自分の意見を言え」「声をあげろ」と自己主張の大切さを掲げている事が分かると思う。

「黙っていては始まらない」という強い思いがこの曲の根底には流れている。


この曲からは他者と違う事を恐れず、主張し続ける主人公像が見えてはこないだろうか。



【まとめ】

社会への軽い皮肉を含ませながら自己主張の大切さを説くデビュー曲。
話し合う事を何より大事にし協調性の大切さを説くラストシングル。
比較してみるとこの2曲では趣旨が180度違う事に気付く。

「一貫性がないじゃん」と感じる方ももちろんいらっしゃると思うが、私はむしろ一貫性が無い事こそがポイントだと思う。

誰しも「前はこう思ってたけど、最近はこう思うな」と他者の考えに触れたりして考えが変化した、という経験はあるだろう。皆これを積み重ねて成長し、大人になっていく。


" 最初は自己主張しかせず前しか見えてなかった人間が、時を経て一歩引き周囲を見れるようになった。"


この一連の流れを目の当たりにして「まるで成長していく人間の心情を表しているかのようで素敵だな~~~」と私は感じた。


楽曲の中に「主人公」を宿らせ、さらにはその主人公の成長譚までをも描くその展開の仕方に強く強く惹かれた。


表現者側から明確な答えを提示されない限りはどれだけ個人的な解釈をしてもいい、というところが音楽や映画のいい点だとつくづく感じる。



おわり

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