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メンバーから見たギルド型組織。あるいはフリーランスの最大の利点。


先に結論

フリーランスの最大の利点は、自分の持っているカードを駆使してリスクコントロールできる自由さにあって、ギルド制はそれをブーストさせる存在になるのでは、という話。


はなしのまくら

こんにちは。poipoi です。

じつはこの度、佐藤ねじさん率いる Blue Puddle にギルドメンバーとして所属することになりました。

(メンバーの半数がひげの生えたおじさんという殊勝なメンバーページ)

ねじさんとは、昔 Art Hack Day に参加したときに知り合いまして、そのあとねじさんが講師をやっていたワークショップにたまたま参加して、発想の考え方が近いよねとか言ってもらったりして、私の独立後に Blue Puddle さんと一緒にお仕事させていただいたり、お仕事以外でも実験的なことをいくつか一緒にやらせてもらったり、なんだかんだそんな流れを経て今回のギルド化の際にお声がけいただいて所属に至りました。


ということで poipoi は現在、

マニュファクチュアという屋号のフリーランスとしての poipoi
BASSDRUM のコミュニティーメンバーとしての poipoi
Blue Puddle のギルドメンバーとしての poipoi

の3つの顔を持っていることになります。名刺がいっぱい。


で、ですよ。

Blue Puddle は今巷で流行りの「ギルド型組織」らしいんですよ。
なので poipoi も、はからずしも流行りに乗ってしまった(?)わけです。

ギルド型組織って組織論とか経営論的な方面からはいろいろと語られてると思うんですけど、所属するメンバー視点としてどうなの?っていうのはあんまり語られてるの見たことないんで、ちょっとだけ思ってる事を語ってみようかなと思います。
(とはいえ所属して日が浅くまだ大々的に Blue Puddle の人間としてお仕事をがっつりやってるわけじゃないので、所属にあたっての意思表明くらいの感覚ですが。)

ということで、今日はそんなお話を。


フリーランスはデメリットばかり?

Blue Puddle は所属メンバーが全員フリーランスです(もしくは個人で会社を経営)。

なので、ギルド型組織をメンバー視点で語る上で、「フリーランス」という働き方について先に言及しないわけにはいかないと思っています。

poipoi はフリーランスになってようやく1年が経過したひよっこフリーランサーですが、それでも初年度からお仕事に恵まれて、大手クライアントさんのお仕事からスタートアップさんとの実験的なお仕事まで結構様々な案件を担当させていただきました。

で、そんな経験を1年間したうえで思ったのが、このフリーランスという働き方、「あんまり人におススメできないぞ」ということです。

例えば、プログラミングやらデザインやらが大好きでそればっかりずっとやっていたい、っていう人がフリーランスになって幸せになるかというと、個人的な体感としてはちょっと難しいなと思います。

ていうのもフリーランスって、営業も経理も事務も広報も全部自分でやらなきゃいけないんですよね。

1つの案件をこなすだけでも、お客さんの要望を聞いて提案内容まとめて見積もり書いて、それも大体1回だとお互い納得できるところまで詰めきれないので何度もそれを繰り返して。
で、ようやくこれで行きましょってなって受注して、そこではじめて実務が始まるわけですよ。もちろん案件終わったあとには請求書ださなきゃだし経理処理もやらなきゃいけない。
(やばい、確定申告しなきゃ…。)

それに追加して、1年目から黙っててもバンバン仕事くる人なんて独立前からそうとう有名な人くらいなので、時間があいたら営業活動したり、ポートフォリオサイト作ったり、今後のお仕事の方針考えたり。。。

そう考えると実際にプログラミングやらデザインやらで手を動かしてる時間って会社員よりも割合的には少ないんじゃないかなと思います。
(もちろん業態や仕事のやり方などにもよりますが。)

poipoi はそもそも「自分の担当領域だけじゃなく、提案から納品まで一貫して経験することで社会の仕組みを理解したい」と思って独立したクチなので、上記のような働き方はあまり苦じゃないんですが、プログラミングばっかりやってたいような人とかコミュニケーションが苦手な人には結構つらいんじゃないかなと思います。

あと、フリーランスってやっぱり孤独なんですよ。
会社員ってとりあえず出社すれば必ず誰かはいるじゃないですか。雑談とかも日常的に発生するし、「丸一日誰とも話さなかった」みたいな日ってほとんどない。
でも、自宅でフリーランスとかやっているとそういうのざらにあります。
しかも日常と仕事が地続きなので通勤等で気分が切り替わったりしない。ただただずーっと地味で孤独。
これって結構苦手な人が多いみたいで、まわりのフリーランス仲間の中でも自宅と別に事務所を構えてたりシェアオフィスに席を置いたりして適度に気分を切り替えている人が多い印象です。
(ちなみに poipoi は引きこもり体質なので、全然自宅作業平気なタイプ。3、4日1歩も外に出ないとかざらにある。)

さらに金銭的なことでいうと、日本っていう国のフリーランサーに対する支援の薄さには涙が出る。
国民健康保険は高いし社会保険とちがって扶養がないから子供いたらその分もきっちりお金かかるし、うまくなにかの団体に所属して健康保険組合に加入できたとしても会社員の倍払わないといけない。
国民年金は厚生年金に比べて将来もらえる額が相当少ない(まあその分安いけど)から個人で小規模企業共済とか入っとかないとヤバイし、雇用保険もないので失業保険も育児休業給付金もない。
(Twitter とかで「夫婦共に育休とってます!」とかみるとすげー羨ましい。poipoi も10年くらい会社員やって毎月せっせとまじめに雇用保険払ってたんだけど結局なんの恩恵も受けれなかったなー…という愚痴。)
もちろん有給休暇とかもないから、休んだら休んだ分だけお金なくなるしね。


と、よくよく考えてみるとフリーランスやばいな、と思うわけですよ。
決して安易な気持ちで人におススメはできないなーと。

それでも今のところ poipoi はフリーランスという働き方が自分に合っていて、会社員時代よりも確実に QOL が上がったと胸を張って言えます。

それは、上記のデメリットを凌駕するレベルの、フリーランスの唯一にして最大の利点があるからです。


フリーランスの最大の利点

先に結論から書くと、フリーランスの最大の利点は「自由」です。


うん、フツー。
知ってたよそんなこと。

と、思われるかもしれません。

が、この「自由」って多分会社員の方が想像しているよりかなり応用範囲が広いんですよ。
ただ単に仕事量を調整できるとか、好きな時に働けるとか、そういうことだけじゃないのです。

例えば。
今エンジニアをやっている方がデザインにも興味があって、「デザイナとして働いてみたい」と思ったとします。

会社員の方ならどうしますか?
上司に直談判してデザイン部署に移らせてもらう?もしくは転職?
どちらにしても先立つスキルがないとなかなか難しいですよね。
とはいえそのスキルを体得するにはどうします?
会社を辞めて学校に通い直すとか、会社が終わったあと自宅でひとりで勉強するとか、選択肢としてはそのくらいでしょうか。時間も体力もお金もかかりそうですね。

フリーランスの場合はシンプル。
その日からデザイナと名乗って、デザインの仕事を受注しちゃえばいいんです。

いやいや、それこそスキルがないと無理なんじゃない?とつっこみを受けそうですが、やり方次第ではできなくもない。

たとえば、相場より安い金額でお試しとして仕事を受けるとか。

たとえば、エンジニアリングの仕事とセットで受注するとか。

たとえば、別のデザイナさんをアサインして指導や手直しをおねがいするとか。

ちょっと考えただけでもこれくらいはやり方が思いつきます。
フリーランスなので、金額を交渉することも、仕事の受注の仕方を調整することも、外注してしまうことも、どの選択肢を選ぶかすべて自分の判断でできるんですね。
なので、ちゃんとクライアントさんに対する提案力さえ持っていれば、特に仕事を辞めることもなく、お金をもらいながら、すぐにでもデザイナとしてチャレンジすることが可能なわけです。
(もちろん、受注した仕事の責任は果たさなければいけないので、きちんとクオリティを担保できるような方法でやらないとだめですよ。あくまで一例としてです。)


別の例も。
例えばおめでたいことに子供を授かりました。子供が大きくなるまではなるべく一緒にすごしたいな、と思っています。どうしましょう。

会社員の方なら、育児休暇を利用するとか、時短勤務をするというような選択肢でしょうか。でも、収入は減ってしまうし期間も決まっていたりでなかなか自由にはいかないですよね。

フリーランスの場合はこういうときも選択肢が自由です。
例えば Blue Puddle のメンバーでもある iOS エンジニアの堤さんは、ベビーシッターサービスを活用してバリバリ稼ぎながらも自宅で子供と一緒に過ごせる、という選択肢を取っています。

かくいう poipoi にも生後4ヵ月の娘がいまして。
うちの場合は奥さんが現在育児休暇中なので育児は8割方お任せしちゃっていますが、私が自宅作業の日は自宅で仕事をしながら子供の面倒をみて、そのあいだ奥さんは気晴らしに出かける、というような日を作ったりもできています。
(まあ、うちの子がなぜか私に似ず極端におとなしい性格だからできる技だったりはしますが。)

これも、フリーランスが自由に選択肢を選べることを利用して、自分の理想の状態を一般とはちょっと異なる方法で実現している例です。


そのほかにも poipoi の周りには

世界各地を転々としながらオンラインで日本の案件を受注して生活している知人とか、

使ってみたい高額な機材をポンって買っちゃって、その機材でできる仕事を受注してチャラにしちゃう知人とか、

超大型の制作物をつくる案件を受注するためにものすごい費用をかけて事務所ごと改装しちゃった知人とか。
(その方はフリーランスではなく会社を経営されてますが。)


とにかく、poipoi の周りにいる人たちだけを見てもみんな目的のために手段を選ばないというか、その選択している手段がみんなかなり「自由」で「型破り」なんですよ。

この自由さや型破りさって言い換えれば
「選択肢が自由なことによりリスクコントロールが自在にできるのでフットワークが異常に軽い」
ってことなんですよね。


なにかをやりたい、始めたい、って思ったとき初手が大きくなりすぎてしまうとなかなか実行に移すことができません。そして、会社員っていうのは概してその傾向にあるじゃないですか。
これって、リスクとリターンのうち自分で自由にできる範囲が限定的で、その結果ハイリスクの博打しか打てないってことなんですよ。
(先ほどの例でいうと、勝手にデザイナを名乗れないから、デザイナになるためには会社を辞めたりしなきゃいけない、というような)

これに対してフリーランスは、なにかをやりたい、始めたい、と思ったときに自分に使えるカードを自由に組み合わせてリスクをコントロールできる。その結果、失敗をしても致命的にならずリカバリーできる範囲にコントロールした上でチャレンジしてみることができるわけです。

これがフリーランスの唯一にして最大の利点だと思います。


フットワークの軽さをブーストするためのギルドという組織

さて、フリーランスは自分に使えるカードを自由に組み合わせてリスクをコントロールできると書きましたが、ギルド制の利点はこの「自分に使えるカード」がものすごく増えることにあると思ってます。


例えば、すでに Blue Puddle ってたくさんの実績をもっていて、その実績で Blue Puddle のことを認識している方って多いと思うんです。
そうすると必然的にそういったオーダーの仕事が入りやすくなるわけですが、poipoi はそこに相乗りさせてもらうことができるんですよ。

Blue Puddle の Webページには Blue Puddle が得意な「6つの領域」というのが書いてあって、その中に「こども」っていうカテゴリがあるんですね。

このカテゴリがあるのは佐藤ねじさんが昔から個人制作などでコツコツ培ってきた実績があってのことなんですが、poipoi も子供ができて子供向けのクリエイティブに興味があったんで
「興味あるんで、こどもカテゴリーページのメンバー欄にいれてくださいー」
って Slack で言ったら速攻で追加してくれました。

これものすごい話で、さっきのデザイナになる例の最上位版というか、なりたいと思ったらいきなりすげー実績がある状態でスタートなんですよ。
もちろん、実際に実績があるねじさんがチームにいるからクオリティも担保されますし、poipoi が持っている「デバイスエンジニア」としての知見も追加してより高度なことにチャレンジしたりもできます。


また Blue Puddle には、プランナーのねじさんiOS のエキスパートの堤さん映像作家のてっぺいさんなどなど、スキルフルなメンバーがいっぱいいるわけです。

そうすると、やりたい仕事なのに、自分の専門外の部分が含まれているせいでお断りせざるを得ない案件、というのが格段に減るわけです。

たとえば、poipoi は映像とか全然できないので、今までは映像演出が必要なインスタレーション制作の依頼がきた時に、断るか必死に映像ができる人を探さなきゃいけなかったわけです。
が、Blue Puddle 所属後は「あ、てっぺいさんがいるぞ」っていって仕事を断らずにすむわけです。


こうやって「自分に使えるるカード」が増えることで、今までよりもさらに自分のフットワークを軽くして、より自分の理想の働き方に近づけるようにいろいろなチャレンジをしていくことができるようになるわけです。

わーい。


大人の関係としてのギルド

ちなみに Blue Puddle がギルド化を発表した際に、これに対して「労基的にどーなの」というつっこみが少なからず出たらしいです。

すげーわかるよ、その気持ち。

ほとんど社員的な扱いなのに個人事業主として働かせてるヤバイ会社とかいっぱいあるもんね。そういうのほんとにどうかと思うし、会社員時代の poipoi なら多分おんなじ懸念を多少感じてたと思う。
(ブラック企業の体験談で有名なハルオサンのブログとか読むとほんとエグイなーと思う。)

ただ、これまで説明したフリーランス的なモノの考え方を読んでもらえればすこしは見え方が違ってくるんじゃないかなと思います。

例えばもし、いちフリーランスとして Blue Puddle に所属する利点がなくなればおのずとメンバーは離れていくと思うし、逆に Blue Puddle としても poipoi がギルドにいても特に利用価値(言い方悪いけど)がなかったとしたら所属させておく意味がないわけで。

そういった意味でギルドとメンバーの関係性は、ギルドがメンバーを所有しているというような一方的な関係ではなくて、利害関係が合致している間だけお互いに利用しあう大人な関係だとも言えそう。
(ほんと言い方が悪いけど)

なので、これから poipoi がギルドメンバーとしてやっていく事は、魅力ある Blue Puddle というギルドに所属して甘い汁を吸い続けられる(言い方 ry)ように、こちら側としてもフリーライダーにならずにメリットを提示していけるよう実直に研鑽を積んでいくぞ、という感じです。


ちなみに poipoi の場合は冒頭に書いたように Blue Puddle だけじゃなくて、他にも BASSDRUM やマニュファクチュアとしての一面も持っていたりするので、そういった意味でも Blue Puddle に囲われているような一方的な所属の仕方じゃないです。
あくまで poipoi と社会をつなぐ接点のひとつに Blue Puddle があるといった感じです。



ということで、Blue Puddle 所属にあたって思うところをいろいろ書いてみました。

これからギルド制みたいな組織のありかたは増えると思うし、今回フリーランスのこともいろいろ書いたので、だれかの参考になればいいなー。

ということで今日はこのへんで。

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