見出し画像

「何を好むか」より、もっと大事なこと

さんざん悩んできたけれど、結局のところ
「今のわたしに」音楽は必要なかったのだ
と位置づけるのが、一番しっくりくるみたいだ。

音楽のことが好きなはずなのに、2年ほど前に社会情勢の影響で劇場からすっかり足が遠のき、少し状況が落ち着いてもわたしはそこへ戻る気になれず、それが感染症のせいだけじゃないことはとうに気づいていたのに見て見ぬふりをし、なぜわたしは音楽から離れてしまったのだろうと後ろめたく思っていた。

2年も悩んだはずなのに、たったこれだけで説明が終わる。なんてお粗末なことだろう。

このnoteでは「好き」や「愛する」という言葉が登場するけれど、実のところ、どんな言葉をもってすれば今の自分の思いが適切に書き表せるのか、わたしは確信を持てないでいる。
わたしはきっとアセクシャルで、一般的な意味で「愛する」こと、つまり異性に対して愛情を抱くことが、多分ない。だけどわたしの中に何かを愛しく思う気持ちがまったくないのかと言うと、そうではない(と思う)。だから、このnoteでも「愛する」という表現を用いることにした。でも、わたしの思う愛と、それを見た人が感じる愛とが、ちゃんと近しい価値観で結びつくのか、どうにも自信がないのだ。

一個人が発する言葉のためだけに、こんなにくどい前置きは必要ないのかもしれない。でも、だからと言って無防備に言葉を並べ立てるには、インターネットの海は広すぎる。

さて、話を戻そう。

わたしはずっと「音楽が好きだ」と思ってきたけれど、ある意味でそれは間違いだったのだと、最近になって気がついた。

少し想像すればわかることだが、「音楽(というジャンル、音楽そのもの)が好き」なのと、「音楽(を奏でて誰かを楽しませること)が好き」なのは、同じ「音楽が好き」であってもニュアンスが大きく異なる。わたしの思う「音楽が好きだ」は、もともとその二択だった。
そして、わたしが自分の音楽好きに自信を持てなくなってきたのは、自分がそのどちらにも当てはまらないと感じたからだ。

わたしは、「音楽(を奏でている自分)が好き」だった。

ねえ、ちょっとまってよ、それって結局、「自分が好き」じゃん。シンプルなSVOの文章にしたときに、最初の二択は
I like music
I like to play
なのに、最後の選択肢だと
I like me
になってしまう。音楽は一体どこへ行ったの。

わたしは自分に自信がないタイプで、今でもないけど幼いころは今以上になくて、クヨクヨしょぼしょぼしてるのにピアノの発表会みたいな場でだけ堂々としているもんだから、「よっぽど音楽が好きなんだねえ」って言われてきた。自分でもそう思ってた。

でも、好きだから堂々としてる、自信があってにこにこしてる、ってわけでは、なかった。勘は多少よかったみたいだけれど、技術面はそこまでのものを持ち合わせていなかったし。
好きとか自信とかじゃなくて、音楽を奏でていれば安心できたから、そんな自分に開放感を覚えていて、うれしくて生き生きとしてたんだ。いま思えば、どう考えてもその要素が強い。自信が持てずになよなよしている自分を少しでも愛するために、音楽が必要だった。

それが今では、どうだろう。
実家を出て、ひとり暮らしをしてみた。
好きなときに好きなものを作って食べていい。
苦手な家事はサボりながらでも、極限までサボってしまったら最終的にはやるしかないんだし(例えば洗濯だと、次の日に着るものがなくなったら困るわけで、どれだけ溜めてもそうなる手前にはちゃんと片づける)。
いい意味で手を抜くことを知り、
ご機嫌に過ごすための方法をいくつもストックした。
好きな食器でごはんを食べる。
無心になって散歩をする。
部屋に花を飾ることを覚えた。
自分以外のいのちと共生すること。花は愛しい。

そうなったら、音楽がなくても、わたしは十分、わたしを好きになれた。

「音楽が好き」の意味を履き違えていただけで、音楽が嫌いになったわけではないんだよ。だから安心していいよ。1年前のわたしに、そうやって声をかけてあげたい。

悩まなくていいよ。自分の好きなものを、うんと大切にして。

「好き」の対象が変わっても、「なにかを好きでいる」「なにかを大切に思っている」、そういう気持ちのある自分のことが、あなたはちゃんと好きなんだよ。

七志野さんかく△


【ちょっぴりあとがき】この件について、マックス悩んでたときのnoteがこちら。

…いや~、恥ずかしい。でも、これもわたしの一部だから、残しておきます。

つい数日前に、残すことについてネガティブに捉えた投稿をしたばかりなのに、「更新頻度は低いままになりそうですが、また書きます」なんて言った途端にぽんぽん更新し始めて、自分でも意味がわからない。

そう、結局は、書くことも、音楽も、わたしにとっては衝動的に行うものなんだろうな。やりたいとかやりたくないとか、好きとか嫌いとか、そんなんじゃない。やるしかないって思うんです、ある日突然。対象が何であれ、その気持ちに正直に生きるのが、今のところ自分の中での正解なのかな、と思います。

お読みいただきありがとうございました。みなさまからのスキやフォロー、シェアなど、とても嬉しいです! いただいたサポートは、わたしもどなたかに贈って、循環させていきたいと思っています。