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灰色の

灰色の遺影に手を伸ばそうとも
届かないと悟るだけ

あなたの笑った顔を見た覚えがないまま
あなたはいなくなって、私は大人になった

生まれてから数年は同じ家にいた、
なんて呆れるね
ただの同居人みたいな表現がぴったりなんて。

言葉を交わしたことすら覚えていない
交わしたとしても
数年の中の1桁数回だけだ


私も大人になるよ
まだまだ全然子どもだけど、
振袖だって身に纏った
まだまだあなたに届かない年齢だけど、
お酒だって飲めるようになったよ
「全然弱いだろ」とあなたはいうかな

あいたくなったなんて、都合よくてごめんなさい
知りたくなったあなたのことを。



あの頃はなにも知らなくて
無関心とか興味ないとかそんな言葉が似合う人だと思っていた。
いつか知りたくなった
あなたのパートナーだった人のこと

その人のよすがは見当たらなかったけれど
パパの昔の証書や賞状がでてきた
ところどころくしゃくしゃで、
まっさらのままではなかったけれど。

"もっと喋ればよかった" なんて
「遅いよ」とすら言ってくれないかな
ごめんなさい


振り返った記憶は灰色
何も知ろうとしないまま、喋らないまま

灰色の記憶に想いを寄せて
あなたを知りたくなったんだ。


私も大人になるよ
まだまだ全然子どもだけど、
振袖だって身に纏った
まだまだあなたに届かない年齢だけど、
お酒だって飲めるようになったよ
「全然弱いだろ」とあなたはいうかな

あなたがいなくなってから数年
あなたの遺影が綺麗な笑顔だと知った。