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大好きだった貴方へ

わたしには初恋の人がいた。
いつもかっこよくて、優しくて、小さい頃遊びに行くとよく頭を撫でてくれた。
彼が働いてる時はモテていたらしく、毎年バレンタインには消費出来ないくらいのチョコレートが家に並んでいた。「食べきれないから好きなの持って行っていいよ」と言ってくれたので一番高そうなチョコを持って行ってちょっと呆れられたりもした。そんな彼が、本当に本当に大好きだった。

そんな彼にも、もう会えない。

訃報を聞いたのは2年前の11月。サークルの発表が終わってすぐだった。珍しく早い時間に家族から連絡があり、何があったのかと思い折り返すと、息を引き取ったと言われた。
正直、何が起こったのか分からなかった。そもそも亡くなるくらい大きな病気をしているなんて知らなかった。混乱しながらも次の日には地元に帰っていた。

地元に戻っても混乱の中だった。彼の家に行くとたくさんの人がそこにいて、みんな悲しい顔を浮かべていた。まだ現実を受け入れられなかったが、横たわって目を瞑る彼を目の当たりにした時一気に現実が押し寄せてきた。触っても冷たい。声を掛けても目を覚まさない。もう笑顔も見れないし話せない。あの優しさもかっこよさもこの先一生見ることが出来ないんだと思ったら涙が溢れて止まらなかった。

告別式には本当に沢山の人が来た。地元の友人、彼の恋人、親戚一同、お世話になった人たち、遠方からやって来た人たち。こんなにたくさんの人に愛されていたのに、こんなにたくさんの人に想われていたのに、彼はひとりになってしまった。

彼には弟がいた。小さい頃からずっと仲良しだったが、思わぬことで帰らぬ人になったらしい。彼が子供の頃、彼の目の前で。そのことを大人になってもどうしても忘れられなくて、ずっとずっと苦しんでいたみたいだった。わたしはそのことを人伝てにしか聞いていないし彼の苦しみが全て分かるはずなんてないが、その話を聞いた時胸が苦しくて仕方がなかった。やっとその呪いから解かれた彼は幸せなんだろうか?


彼には恋人がいた。相手から直接彼の恋人だと聞いたわけではないが、葬儀が終わるまでずっとそこにいたから何となくそうなんだろうと悟っていた。きっと言いにくかったと思う。地元では偏見に塗れてるし、ただでさえマイノリティが生きにくいこの現代なのに更に生きにくかったと思う。それでも死ぬまで彼を愛してくれてありがとう。ずっとずっと寂しかった彼の隣にいてくれてありがとう。


彼の死はこの先一生忘れることなんて出来ないし忘れたくなんかない。とりあえず彼の歳まで生きてみようと思う。

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