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webカメラ2(pixiv_2015年11月28日投稿)

責任を取るから、と交際を求められて数週間。
距離を置くでもない、普通に週末会って飲みと夕飯を兼ねて色々歩きまわる。
あの時の話をするでもない。
前と何ら変わらぬまま友人関係が続いている。
まぁいちいちまた頑固なまでに『責任を取る』と言われても邪魔なだけなのでそれはそれで助かってはいるが、いまいち思考がわからない。

三河 富司 さんが ふじ。
変わった名前だなーと声を掛けたのが始まり。
人によっては気を悪くしそうなそんな第一声に「よく言われる」と笑われたのが第一声。
真面目風だけど当然サボることもする。
人がいい。
頼まれたら何だかんだで最後には引き受けちゃうタイプ。
なので女に泣き落としされて付き合ったのも何度か見ている。
だからと言って蔑ろにするでもないし、でも彼女優先というわけでもないし、先に入れた予定はちゃんとそっちを優先する。
頼まれたからといって手を抜く事はしないし、結果期待以上のものが出来上がって株が更に上がるという人間。
そんな奴がAV見て俺の部屋に似てるからと言って来るのも意外だったが、押し切られて俺とセックスするのも意外だった。
流れで〜、などこいつの人生にはありえない筋書きだったのだろう。
だからこそあの日あれだけ粘って『責任取る』と繰り返したんだと思う。
てかね、責任て何だろうね。
病院送りになったわけでも、病気移されたわけでも、社会的に追放されたわけでもない。
何をどう責任を取るんだろうかと思うけれど、めんどくさそうなので聞くのもやめた。

「山田」
「ん?」
仕切りも何もない広い居酒屋で何を話すでもなくぼんやりとしていると少し酔いの回った声が聞こえて視線を上げる。
「まだ飲むか?」
「あー…まぁ時間も時間か。お開き?」
「そうだな」
時計を見れば程々にいい時間。
週末だから別に明日何時に起きようと関係ないという気の緩みもあり、帰るのも正直めんどくさい。
ちなみに俺の名前は山田一。
やまだ、はじめ。
画数の少ない、至って普通の名前。
「んじゃ俺の分。ちょっとトイレ行って来るわ、」
「おー、外に居るぞ」
「おう、」
少しふらつく足取りでトイレに向かう。
そこそこ大きなチェーン店なのでトイレも広め。
用を足して手を洗っていると目の前の鏡に映る人と目が合う。
年は少し上ぐらい。
酔っているのか笑顔のまま俺に近付いて来た。
「これから一緒に遊ばない?」
耳元でそう囁かれて少し不機嫌に顔を向け、適当にあしらってトイレを出ようとすると腕を掴まれた。
「遊びたいならそういう店行けよ」
「だって君そういう人でしょ?」
そう下卑た笑いが見えた瞬間、気分の悪さが先行してぞっとする。
が、すぐににやけていた顔がスパーンといういい音と共に勢いよく左に傾く。
後ろから男の頭が勢いよく叩かれたんだと気付く前に、見慣れた背中に腕を掴まれて店を出た。
じっとその背中を見上げる。
三河は大股で歩き、俺は引き摺られるように歩く。
暫くして腕が解かれ、ようやく足が止まった。

誰も居ない道路。
遠くでクラクションの音は響くが、眼の前を流れる車もない。
ようやく離れた手をぼんやり見下ろしながら、「いつ俺がナンパされてんの気付いた?」と山田がへらりと笑った。
その言葉に三河が振り返り、掴んでいた手を外した。
「気付いたというか、あの男ずーっとお前のこと見てたぞ」
「…へー、」
それはそれは、とまた山田がへらりと笑うと、三河は足を止めて山田と向き合う。
「お前の右後ろぐらいにいて。ずっと見てたから店出ようかと思ったんだけど」
会計してる時にこれ幸いとトイレに行ったのが見えたからと溜息をつかれた。
そこまで話を聞いていて山田は微かに首を傾げる。
「…お前そういうのよく気付くな」
「高校の時からそうなんだって」
「は?」
「行き帰りの電車とか、そこら辺歩いてる時とか、知らない先輩とか、今みたいにどっかの店入ったりした時も」
「…へー、」
「知らなかっただろ」
「知ってるわけねぇだろ」
初めて聞く自分の周りの話に驚きを覚えつつも未だ呆れたままの顔を見上げる。
「だからこれから気を付けろよ」
「これからもお前が守ってくれんじゃねえの?」
とふざけて言ってみたら、「そうだよ」と何でもないかのように言われて山田が驚いた。
「ていうか、男だけじゃなく女もだからな」
「へー」
「お前のその王子様風なのが惹き寄せるのかね」
「好きじゃない奴引き寄せてもなぁ」
「まあな」
嘆きのような呟きを吐き出すと、歩き慣れた道をまた歩き出す。
ふらつく体を支えるかのように伸ばされた手は、当然のようにまた山田の腕を掴んだ。

「今日は上がって行かないのか?」
山田のマンションの下に着くと、にやりともへらりとも取れるような笑顔で向き直るその顔を呆れたように見下ろす。
「今日はしないの?」
「…お前な」
「さっき助けてもらったしー? お礼を兼ねて?」
と、ふざけて言ったら、先程の男のように山田の頭が全力で叩かれた。
「…痛ってぇ!!」
「軽はずみにそういうこと言うな」
「…だからって叩くなよ」
「じゃあな」
そのまま振り返りもせずに歩いて行く背中をただ見送る。
こんなことが数週間。
何かが起こる気配など何もない。
そこそこ付き合いのある筈の友人の心境が、ホントによくわからないと思った。

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